年末ラリーはブルトラップ:どう考えても無理筋な株価上昇

年末ラリーはブルトラップ:どう考えても無理筋な株価上昇

昨夜大幅高した米国市場に伴って、日経平均CFDも¥28,300台で返ってきてます。今(10時20分)¥28,371前後で昨日の大引けから約¥250上昇ということで、EPS¥2,181でジャストPER13.0水準です。日経平均PERの今年の最高値はPER13.30レベル、それも瞬間風速だったことを考えると、現時点では¥29,000ジャストが目先の高値ということになる・・・。けれどもPER13.0は十分に天井圏なのだから、明日寄り付きから陰線を引くようならば、嫌~な感じになってくる。

昨夜の米国市場は勢いに任せてサンクス・ギビングからスタートするクリスマス商戦の前哨戦という感じになって、センチメントで買い優勢になっただけ、と。けれども今の時期は、米国経済、いや米国消費崩壊前の最後の仇花、という感じだと思う。毎年収穫を祝う感謝祭は宗教的な意味合いの強い行事でもあって、だからこそ独立した家族が一同に集まってテーブルを囲むという、日本で言うと正月のような感じで、ここからクリスマスまでの一カ月間に年間の6割以上を売り上げるという小売業者にとっては正念場でもあるんだね。

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で、今年の商戦はどうなのか?というと、これが非常に厳しい状況だと言われてる。とにもかくにも現状では、あまりにも個人のファイナンスが悪すぎるということ。貯蓄率は一桁前半まで落ち込み、クレジットカードの使用残高も積み上がっていて、状況はリーマンショック前よりもはるかに悪化している。

けれどもリーマン前と全く違うのは、今は高インフレ下、高金利下であるということ。要するにFRBの利上げによって個人ファイナンスの利払いは鰻登りになっていて、カードローンならば20%近辺という高金利状態に陥っているということ。住宅ローンも固定金利で6%後半を維持していて、変動金利ならば10%に迫る勢いになっている。しかも、家賃の高騰は一向に収まる気配がなくて、個人の可処分所得を圧迫しているわけだ。

個人のファイナンスの合計はなんと2000兆円に迫ると言われていて、それが消費大国アメリカを支えているんだよね。その金利が10%になってしまった今、年間200兆円の利払いがのしかかるわけで、これで消費が崩壊しないなど、あり得ないことだろう。そこにいよいよFRBの利上げ効果が顕著になってくると、どうしても失業率が悪化せざるを得ない。普通ならば、米国の大企業もこの時期に大規模レイオフは遣らない、というか遣れないはずなんだが、今年はそういうことを無視してまでも、リストラをやらざるを得ない状況に直面していると言うことだよ。

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レイオフされて感謝祭~クリスマスを迎える労働者の気持ちを考えると、これ以上借金してプレゼントもないだろう、というのは当然のこと。それでも予想よりも悪くない、なんてニュースが出るようならば、年明けの落ち込みが急激になるばかりだろう。しかもこの時期にレイオフしたくても出来ない小売や飲食などは、年を越せば一斉にレイオフせざるを得ない。なので2月、3月の雇用統計あたりから雇用は急激に悪化し始めると思われる。

株式市場はダウンサイド(ベアマーケット)でのラリーと言う考え方に変わりはないのでは?しかも、来年は下手をすると6月、9月の底値がかわいらしく見えるような、そんな急落トレンドになることも十分に考えられると思う。何せ今の米国経済は、企業も個人も負債が大きすぎる。企業のデータを見ると、借入額はあまり多くはないように言われるけれど、そうではなくて投資額が極めて大きいんだよね。なので、社債その他で調達した資金が莫大だから、償還するために新たな資金調達をしないといけないわけで・・・。その資金調達の環境が悪化しているということだよ。大企業はもちろんグローバルな事業展開しているわけで、米国内のみならず海外の景気動向にも左右され、欧州や中国を考えると非常に厳しい状況であると言わざるを得ない。

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さらに言えば、企業在庫が供給不足ということで急激に積み上がってきていて、例えば新型コロナ流行で半導体不足がクローズアップされ続けているけれど、それ以前と比べて極端に需給が変わることは本来であればないはず・・・。けれども温暖化対策としてEV化の推進ということで、メーカー各社が発注量を倍増させれば、極端に供給がひっ迫する。自動車業界だけでなく半導体がないとなると全メーカーが確保に奔走することになるわけで、好決算の裏には在庫過多という要因が隠れていることになる。

それが半導体だけでなくあらゆる部品に波及したというのが、新型コロナ後の経済であって、消費が落ち込めばすべての企業がキャッシュフローに苦しみ始めることになる。そしてそれは一度に急激に来る、というよりもジリジリと負のサイクルに陥ると考えるべきで、そういう意味でも、いまの株式市場の楽観はまったく滑稽にしか見えないんだけどね。

目先少々株価が上昇したくらいで、この経済情勢が変わるわけでもないし、底打ち完了で買いだ買いだと騒ぐのも、なんだか馬鹿らしく思える。世界は多分、経済運営を間違えた。カネを刷れば万事解決できるという短絡思考が、天から罰せられる番がやってくると思う。早ければその起点は年内かもしれない。