SOX指数が大幅下落 半導体・電子部品はECRA要注意
- 2019.05.21
- 国内情勢
ECRA(米国輸出管理改革法)に基づく制裁適用を恐れた欧米半導体企業は、ファーウェイに対する部品供給を停止した。
米国企業のみならず欧州最大級の半導体メーカー、ドイツのインフォニオン・テクノロジー株は供給停止をしていないのにもかかわらず大幅安になったことを考えると、日本メーカーも非常に危うい状況と言える。
対立激化の米中関係
中国は米国との交渉決裂後、イランに対し財政支援を行うことで合意した。このことが米国の神経を逆撫でしたことは言うまでもない。
そしてさらにイランは濃縮ウランの製造を4倍に拡大し、核開発を加速し始めた。
こうしたイランの動きに対し、軍事衝突の危機にある米国はますます神経を尖らせてるに違いない。
そうなってくると、中国の存在は米国議会や強硬派のボルトン補佐官に対して、軍事衝突を焚きつけるような行為に等しい。
EUと米国の関係は悪化する
中国が一帯一路にイタリアを引き摺りこみ、また各国に対し接近を図った結果、EU各国はファーウェイを排除しないと結論づけた。しかし、その欧州でファーウエイ端末(スマホ)のバックドアが次々に発見されている。
ドイツにしてもブレグジットで揺れる英国にしても、米国に同調しない姿勢はすなわち、ECRAの対象になる。ECRA制裁適用となれば、米国内での商業活動は制限され、莫大な制裁金を課される可能性が極めて高くなる。
そうした影響は、Tモバイルースプリントの合併申請にも大きく影響するだろう。米国FCC(連邦通信委員会)は、2018年6月から両社の合併を審査してきたが、ここにきてようやく合併承認の意向を示した。
しかし、米国司法省は難色を示している。独占禁止法の観点から懸念を持っているということだが、ファーウェイやZTE製品の厳格な排除(4G設備)が難しいからだ。
日本企業の楽観は目に余る
こうした状況になって、日本の主力企業の対応がほとんど出てこないというのは、理解しがたい。すでに10連休前から海外勢の警戒した売りは始まっている。
この動きは半導体や電子部品に特化したことではなく、中国に対し売り上げ比率の高い銘柄は総じて売られる方向にある。特に機械セクターや建機などは、影響が大きいと見るべきだろう。
GDP1次速報値は内容が悪い
1-3月GDP1次速報値が実質(年率)2.1%の上昇となって2四半期連続のプラス成長となった。しかし、輸入が大幅に落ち込み、輸出との差額が拡大したことで、GDPを押し上げるというGDP統計特有の罠によるものであることは明白だ。
しかも外需の伸びが0.4%とする数字も米中対立が激化した時期であることを考えると、にわかには信じられない。
実態は中国経済の影響で輸出は2.4%減となったが、輸入は輸入は4.6%減とリーマンショック直後以来の大きさで、差し引き2.2%がGDP拡大に貢献した数字。
日本経済は輸入の大幅な減少を見ても分かる通り、内需が非常に厳しい状況であることは明白だろう。
日本市場のセンチメントは悪化している
というよりも、日本市場に対する海外投資家のセンチメントが悪化しているのだ。数字は正直に経済の状況を伝えるもの。現状からすれば、4-6月期(現状)は、1-3月期の反動もあって、輸出が相当に厳しい状況だろう。そこに10連休が直撃したわけで、相当に悪化していると考えるのが妥当だろう。
そうした状況のなかで、今回のGDP速報値を真に受けて消費税増税を延期できないとなると、いよいよ日本経済は泥沼に嵌る可能性が極めて高いのではないか?
また増税による景気悪化対策として日銀が金融緩和を実施するとなると、いよいよ邦銀はクビが締まってくる。その結果邦銀は対外投資を加速させる方向に動き、財務体質を悪化させるだろうね。
夏までの日本市場は、増税延期がない限りそうした懸念を徐々に織り込む相場になると思う。
個人投資家は身構えるべき地合い
日本市場は日中、根拠のない強さをしばしば見せる。また米国ダウCFDも日中取引とは裏腹の時間外の動きをすることが多くなった。こうした傾向は、米国市場でも短期投資や日計りのデイトレードが横行していることを意味している。
個人投資家もだが、ヘッジファンドや投資銀行のディーリングが、意図的にボラティリティを生み出していると思う。その結果、日中の日本市場もまた、強い動き(買い局面)が現れる。
しかし、それらはみな、根拠がない値動きだろう。
令和相場は厳しい状況からスタートしたが、当面は個人投資家の真価が問われる相場展開になるのではないか。
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