世界は、株式市場は、新型コロナに楽観しすぎた!?
- 2020.12.26
- 世界情勢
いま、世界の約40か国が英国に対し例外を除いて出入国禁止措置を取っている。それはつまり、今回英国で感染が急増している新型コロナ変異種に対する、各国の(警戒感の)本音であると言えるかもしれない。
とにかく今回発見された変異種は、従来の新型コロナウイルスから23か所の変異が確認されていて、そのうち17か所が一気に起こったという前代未聞の出来事が起こっている。通常コロナウイルスの変異は年単位、場合によっては数千年、数万年という時系列で起こるものだが、今回は僅か1年で17の突然変異が一度に起こっていることが、非常に奇異なのだ。
英国はいち早くロックダウン実施
英国のボリス・ジョンソン首相は今回の変異種は、従来よりも最大で70%感染力が強まっていて、重症化率、死亡率も高いと発表している。
英国では感染第二波の後、一旦はピークを越えたか?と思われた矢先に、12月に入り再度感染急増に見舞われた。そしてその原因が新型コロナウイルスの変異型によるもの、と発表した(赤丸部分)。そのためジョンソン首相はロンドンを含めた南東部の大部分でロックダウンに踏み切った。
日本も新型コロナ変異種の流行が確認されている、イギリス、南アフリカ、オーストラリアからの入国禁止(日本国籍取得者は除外)を27日より実施するとしている。しかし早くも25日には空港検疫で新型コロナ変異種感染者が5名確認されていることを考えると、少なくとも国内流入は始まっていると考えるべきだ。
懸念される2つの変異
今回発見された新型ウイルスの変異では現在のところウイルスのスパイクたんぱく質に生じた2つの懸念すべき特徴があるとされる。一つは「N501Y」という変異で、これはヒト細胞の受容体「ACE2」に対する侵入度が高まっているということ。そしてもう一つは「69-70del」と言われスパイクたんぱく質の2つのアミノ酸が失われたために、ヒトの免疫反応が弱まるかまたは回避されるような現象が発生してしまうということだ。
前者が感染力が高まってしまった要因であるとされ、その詳細なメカニズムは分っていないが、少なくとも統計的に見て従来型よりも50%~70%感染力が強まっているということが分かっている。
そして最も重要な問題は、後者の(スパイクたんぱく質の)アミノ酸が失われたということで、これは従来型の新型コロナに対して開発されたワクチンでは、免疫効果が望めない可能性があるということになる。
現在世界各国で新型コロナワクチンの接種が開始されているが、仮にワクチンが変異種に対して効果がないということになれば、とんでもない大惨事になりかねない。
検証に最低1か月はかかる
各社で開発された新型コロナワクチンは、従来のワクチンとは根本的に製法が異なる。従来の、例えばインフルエンザワクチンは不活性ワクチン、そしてBCGなどは弱毒化した生ワクチンであるから、原料は「新型コロナウイルス」そのものを培養して作られる。これをヒトの体内に注入することで新たな抗体を作り出す。弱毒化されているために発症することはないが、同種のウイルスに対する免疫を持つことで感染を防止するというもの。
しかし、今回の新型コロナワクチンは、コロナの遺伝子を解析しmRNA(メッセンジャー・RNA)を人工合成する。そしてそのmRNA自体が新型コロナのたんぱく質を作り出すようにして、それを人の体内に注入することで、新型コロナにたいする抗体を人の体内に作り出す。
従って今回のRNA型ワクチンとは、弱毒化した新型コロナウイルス自体を用いずに、遺伝子操作によって作り出したmRNAを大量に培養することで大量生産が可能になったということなのだ。保存零下20度~70度と言われるのは、このmRNAが繊細で壊れやすいからである。
しかし新型コロナワクチンでmRNAが新型コロナウイルスの「たんぱく質」を作り出すことによって、ヒトに抗体を持たせるという点なのだ。これは非常に重要で、今回の変異によって「スパイクたんぱく質の2つのアミノ酸が失われている」という状況でワクチンのmRNAが生成した従来型のたんぱく質が作った抗体が、変異ウイルスを認識できるのか?という問題がある。
このことは、世界中のメディアも政府も全くコメントを発していないわけだが、変異種に対し(新型コロナワクチンによって生成された)抗体が反応しない可能性は決して低くはないということなのだ。
現にインフルエンザは、変異の仕方によってほとんど効果がなく、その都度新たなワクチンを培養する必要があり、現在のワクチンは流行する可能性の高い数種のウイルスに対するワクチンを合成して作られている。しかし、それでさえも人類はインフルエンザを収束できないでいるのだ。
従って現時点で接種が開始されたワクチンが変異ウイルスに対して有効か否かは未知数である。そしてその検証には最低でも一カ月は必要なために世界は英国の発表を注目している。
新たなワクチン開発の必要?
仮に来年1月にも検証結果が公表されると思われる、ワクチンの変異種に対する有効性において、ネガティブな結果となってしまった場合、新たなワクチン開発にはさらなる時間が必要になる。そして二種類の新型コロナウイルスに対応可能な混合ワクチンを開発し接種しない限り、今回の新型コロナウイルス禍は回避できないことになる。
もしもそうなれば、世界はまたロックダウンの嵐の中に逆戻りとなり、今度は世界経済の急回復は望めない最悪の状況に陥る可能性が否定できない。
すでに各国の金融緩和は限界点を迎えていて、これ以上の緩和は副作用があまりにも強すぎて、安易な政策は難しい状況になっている。そして再度のロックダウン、入出国の封鎖ともなると、世界中がデフォルトの嵐に陥るのはほぼ間違いないと思われる。
その悪影響は想像を超えると思う。
そして1年後、新たな混合ワクチンが開発されたとして、それが果たして世界経済を押し上げる力があるか否かは非常に微妙である。これはインフルエンザとほぼ同じ結果になることを示唆しているからである。
さて、広くワクチン事業を手掛けているとされるビル・ゲイツは「今回のワクチン接種では沈静化できない可能性」に言及した。そのコメントでは米国人のワクチン接種希望者が6割前後であるということに懸念を示していたが、実際にはすでに新型コロナの変異種の情報も多く取得しているはずで、その懸念の方が大きかったのではないか?と思われる。
2021年1月は大波乱の可能性
現時点では来年の1月20日に米国の新大統領が憲法上決まることになるが、今回の選挙不正を指摘し、納得していないトランプ大統領は当然のことながら敗北を認めずに、可能な限りの手段を講じてくるだろう。そしてそのことが波乱を引き起こす可能性は決して低くはない。
しかしほぼ同時に、今回のワクチンが変異種に効果的か否かの検証結果も、英国から公表されると思われ、これがネガティブであれば世界中は再度今年3月の状況に追い込まれることになる。
これはマーケットだけの問題ではなく、全世界的な経済の問題であり医療崩壊の問題でもある。
今回のワクチンが変異種に対して有効であるという結果を、神に祈る以外に手段はないのだ。
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