過熱した株式市場の現状を考える

過熱した株式市場の現状を考える

日経平均株価は¥29.520と大台の¥30,000手前に来た。過熱していると言われる日経平均は、決算前の1月14日引け値で¥28,698(予想EPS¥1,090、PER26.33)であったが、今回の決算で日経225の予想EPSは¥1,214~¥1,220まで改善し、先週末の株価(¥29,520)から算出して予想PERは24.3まで改善している。

実体経済との乖離が激しく現実的でないと言われる株価だが、日経平均¥30,000を想定し、来期の業績改善を加味すれば、予想EPSは恐らく¥1,500程度にはなると思われるため、株価が大台を付けたとしても予想PER20.0程度に低下し、最終的には新型コロナ前のEPS¥1,800は早晩奪還すると思われる。

つまり、来期末を想定して企業業績が新型コロナ感染収束によって、通常モードに回帰するとの想定からは、現在の株価は必ずしも過熱しているとは言えないわけだ(ちなみに株価¥30,000でEPS¥1,800であればPER16.7である)。

株価を支える1600兆円

今回の新型コロナショックにおいて、世界各国が金融緩和や財政出動を通じて市中に投入した資金は、1600兆円を超える膨大なものとなった。その資金が投資に振り向けられ、その結果株価が実体経済と乖離する形で上昇したというのが定説ではあるが、これは正しくはないと思う。

現在の株価上昇の本質は、膨大な量の流動性を提供したことによる貨幣価値の低下という側面が非常に強いと考えるべきだ。しかし、各国中銀は金利上昇、インフレを極端に警戒するあまり、低金利政策を強行に推進している。つまり国債やCPを通じた金利操作によって物価上昇を抑え込むことで、まず世界のコモディティ価格の上昇を防止した。そして、膨大な資金が投入されている債券市場を安定的にコントロールすることで、金融恐慌の芽を摘んでいる。

その結果、1600兆円もの金融出動をしたにも関わらず、世界経済はどうにかこうにかバランスを維持しつつ回復に向かっているというのが実態であるわけだが、しかしすべてがコントロールできるはずもなく、部分的には経済運営の綻びが生じつつあるという状況に見える。

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割高だから下落するという常識は通用しない?

今回の相場は、単純に過熱して株価上昇というものでもないような・・・。背景には、金融緩和による通貨価値の実質的な下落ということがあり、それを無理やり中銀が抑え込んでいるものの、行き場のない資金が株式市場を持ち上げているという背景がある。

FRB等金融当局が、支えている官製相場と言ってもいい側面があり、こうなるとなかなか暴落するという要因が見当たらず、割高な水準に至ってしまっているという様相。なので、中銀が現在の政策を維持し、しかも財政出動が今後も追加的に行われることを考えると、まだまだ上を目指さざるを得ないのでは?と感じている。

その象徴的な出来事が、例のゲームストップ騒動で、ショートでは勝負にならないと言おう事を、市場に知らしめる出来事だったと思う。なので、意外に今の株価の位置は底堅いのではないか、と見ている。

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当然リスクも満載だが・・・

しかし株式相場である以上、常にリスクとは隣り合わせであることも、無視はできない。そしてそのリスクとは、ずばりインフレであると考えている。いままで、各国の中銀は、インフレ誘導とも思える金融政策を都度実行してきたわけだが、結局同時に金利上昇を抑え込んできているために、なかなか物価上昇へは結びつかなかった。

とりわけ日本は、物価上昇どころか、下落に拍車が掛かってしまい、そのタイミングで新型コロナ不況となって、国内の実体経済は過去最悪の水準に向かっているし、デフレ脱却は夢のまた夢とも思える状況だ。

だが米国では、日本とは正反対の政策が今後次々に繰り出されようとしている。昨年の大統領選で民主党が政権を奪還し、未曾有ともいえるリフレ政策を打ち出した。米国議会はトランプ前大統領の弾劾裁判が13日に結審し、いよいよ政策審議に入るわけだが、最初に審議されるのは200兆円の景気対策、コロナ対策予算となる。

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従って少なくともこの法案が可決され、大統領署名となるまでは、株式市場の下落は考え辛いとは思う。しかし、そのことで米国経済はインフレが顕著になる可能性が高いのではないか?と予想している。なぜなら各所にその兆候が見え始めているからだ。

劣悪極まるバイデン政権の政策

今回の株価上昇も言い換えればインフレの兆候と見ることができる。そして今回の超大型予算に関してFRBは支持するものの政策的には現状維持とコメントしている。つまりFRBのスタンスは今後は財政出動でやってもらうというものなのだ。一方、イエレンが財務長官に就任し、株価過熱には目を瞑っても景気回復、雇用回復を優先するというスタンスを打ち出した。

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ならば、従来の金利低下政策を今以上に強化することなく、200兆円予算が実行されることになるわけだ。

さらにバイデンは、インフレ助長政策ばかりを打ち出している。まず連邦の最低賃金を¥1,500以上に引き上げること、そして化石燃料依存を脱却し、再生可能エネルギーを促進するということ。この二つの悪魔の政策が、恐らく将来的には米国経済を不況のどん底に叩き落すことになると確信している。

MMT張りのリフレ政策をこの時期に実行するということで、株価は政策期待で上昇を継続しているのだが、同時に米国債10年物金利(長期金利)は上昇の動きを見せ始めた。そして何よりも安定していた資源価格が、シェール脱却を打ち出したことで上昇を開始している。この不況下で原油が$60に迫ろうとするのは、いかにも不自然極まる動きであるはずで、片や再生可能エネルギーの進捗はほとんどない状況。つまり、政策的に原油価格を吊り上げているのに等しいわけだ。

また、最低賃金の引き上げは、最終的には価格転嫁以外に対応する手段はなく、初期に大量の失業を招くと同時に、大きなインフレ圧力となって米国経済を襲うだろう。

政権内でこうした政策を支えるイエレンにしてみれば、これを肯定するためにはより多くの財政出動以外に選択の余地がないはずである。

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そうした流れから、インフレ転換はかなり急激な波となって米国経済を襲うと予想せざるを得ない。

身構える市場

インフレによってドル価値が下落することに対し、いくつかの兆候がはっきりと見え始めている。その一番手がビットコイン(仮想通貨)の急激な上昇と言える。特にビットコインに対してはテスラをはじめとする企業が取得と発表して急騰モードになっているが、大手銀行やマスターカードも参入を発表し、アップルも検討していると伝えられている。そうなると、ビットコインの天井はかなり上になると思わざるを得ない。

また原油価格も$60に急接近し、長期金利も上昇傾向に入り始めた。また、不況下にも関わらず海運ではコンテナ価格が上昇し続けているが、これは新型コロナの影響というよりも、ドル建てのインフレ懸念が先行した結果だと思われる。

そして恐らく来週以降、金価格は戻り相場に突入すると思われるが、これが始まるといよいよ市場は将来のドル安(インフレ)を織り込む動きに変わる可能性が大である。

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