金融・財政政策の限界か!?世界同時株安が来た!

金融・財政政策の限界か!?世界同時株安が来た!

日中に▲¥747、夜間CFDでさらに▲¥719、都合▲¥1,466で週末の取引を終了した日経平均は、懸念された暴落に見舞われた。けれども、オオカミ少年のごとく、このぐログでは11月7日に「株式市場暴落前夜」というタイトルで、今の株式市場は随所にリーマンショック以来の金融緩和ジャブジャブ政策の矛盾が噴出しているという書き方をしたわけだが、週末にその兆候が表れたということかもしれない。

新型コロナ感染急増中の欧州では、ドイツ・DAXが▲4.15%、英国・FTSEが▲3.64%、フランス・CAC40が▲4.74%と厳しい暴落に見舞われたし、感謝祭明けの米国市場は短縮取引ながらダウ▲905(-2.53%)、NASDAQ▲353p(-2.23%)、S&P500▲106p(-2.27)で引けたわけだが、さらに時間外で、ダウCFD▲$261と拍車を掛けた格好になった。

それでもアジア市場は比較的落ち幅が少なく上海▲0.56%、ハンセン▲2.67%、韓国・KOSPI▲1.47%、台湾▲1.61%となったが、言うまでもなくアジア市場は欧州や米国の始まる前の状況なので鵜呑みにはできない。日経平均CFDが日中と同等の下落となっている以上、週明けはさらに下げると考えるべきだ。

まさに世界同時株安となった週末だった。

新型コロナ変異株を原因としているメディア

何度も書いたけれど今、欧州での新型コロナ感染が急増中である。ドイツを筆頭にEU全域でまさに緊急事態に突入しているわけだが、そこに南アの変異種報道(オミクロン株)が重なって警戒感が出た、という解説をされているし、日本市場や米国市場の下落も同じ理由で処理されている。

がしかし、こうした報道が繰り返されることが、実は最も怖いことだと思うんだよね。たしかに南アで変異種が見つかったけれども、これが今回の欧州での感染爆発をもたらしているわけではないし、恐らく欧州全体でみるとワクチン接種率は全体として42%にとどまり、域内で自由に出入国が可能であるならば、ドイツの接種率68.2%はほとんど意味をなさないよね?欧州では移民も多く国ごとの格差の多い状況では実行再生産数を1以下に抑えるのは難しいと思う。日本でさえもデルタ株で感染急増した経緯があるほどだから、拡大プロセスでは手に負えないだろう。

でも欧州の感染拡大を嫌気して日米株式市場が暴落するという説明には少々根拠が薄弱過ぎるんじゃないの?

Advertisement

日本市場の急落要因

2020年、新型コロナが最初に蔓延して世界の株式市場が急落したとき、FRBは金融緩和とワクチンで経済は正常化するというシナリオを立て、多くの投資家がそれを支持して株価は急激に上昇したた。FRBがそうした方向性を打ち出したならば、ECBも日銀も追従せざるを得ないというわけで、事実ECBは大幅な金融緩和と債券購入を行って追従したけれど、日銀はこの最中にテーパリングを行っていた!ETFの買いオペを(事実上)中止して国債購入を減少に転じた。

それ自体、日本株に投資する海外勢は、日銀に対する不信感を募らせていただろう。そして国債買い入れの減額と言うことになり、ますます「?」だったろうね。7-9月のGDPがマイナスに突っ込んでしまっても何の手も打たなかった日銀の一方で、政権交代となって菅首相降板で「これでまともな経済政策が次期総理によって出るかな?」という期待が盛り上がったけれど、ハチ岸田の政策は経済ド素人のとんでもないもので、これで海外勢は完全に日本政治を見切ったんだろうね。

けれども中間決算シーズンで企業業績は好調だったし、新型コロナの感染者は急減するしと言う要因で、岸田底値の¥27,300から¥30,000の手前まで戻したところで、岸田首相の言う大型経済対策がでてきてその内容で万事休すってことだろう。

なので、今回の暴落を新型コロナ感染拡大懸念、オミクロン株懸念で片づけてしまうと、少なくとも日本市場の場合は本質を見失うんじゃないかって思うけどね。もちろん、そうした海外の感染急拡大は日本経済にとっても影響は大きいと思うけど、感染収束のアドバンテージはみな、ハチ岸田の頓珍漢政策にかき消されてしまったね。Oh!クレイジー!

Advertisement

欧米市場の急落要因

欧米市場の急落要因は日本市場のそれと大きく事情が異なると思う。とにかく米国もEUも徹底的な金融緩和と財政出動で何とか新型コロナ禍を乗り切ろうと考えていたし、ワクチンにも大いに期待していたことは、日本と変わりはないだろうけど、国家運営、国家統制という意味では、(自由と個人主義を愛する?)欧米人気質がことごとく障壁になる。そして医療制度の違いという観点でも、十分な治療が行われていないという厳然とした事実もある。(日本と欧米の医療を比較して日本を批判する馬鹿も多いけどね)

(詳細は省くが)誰でもが手厚い治療を受けられるという制度ではないので、感染者が的確に隔離させるということもかなり不十分なのだからね。なので、感染していながら常に動き回る人々が一定数以上存在して、それが実行再生産数の低下を妨げてしまう。

経済もまた欧米各国は、今までの財政出動や金融緩和によって、厳しいインフレに見舞われていて、そのことがこれ以上の財政出動や金融緩和的処置によって新型コロナを封じ込めることが出来ないというのが市場のコンセンサスになりつつある。

Advertisement

これが厄介で、恐らく市場の懸念は正しいから、今回の感染拡大を封じ込めるのは容易でないし、経済への影響も避けられないと見ている。そこに南ア発のオミクロン株の報道で、株式市場が過剰反応した結果といえるだろうね。

米国はまだしも、欧州では各国首脳が感染拡大にもかかわらず、ロックダウンや行動制限という規制を導入出来ないでいるし、切り札だったワクチンパスポートも不発に終わっていることから、窮地に立たされていることはまず間違いない。

そもそも感染を無視するかのように企業活動を継続して経済最優先してきた欧米は、すでにインフレという難敵と向かい合わなくてはならず、仮に規制強化することはインフレを助長してしまうという悪魔のようなスパイラルにはまり込んでいる。

Advertisement

今後の株式市場は?

とにかく世界同時株安的に、暴落した週末となったけれど、インフレの要因である給与の上昇、並びに労働力不足、そして不動産の歴史的な高騰が続く限り、原油価格を抑え込んでもインフレ抑制効果は限定的なのではないか?と思う。

欧米や日本、アジア諸国がかつてリーマンショックで窮地に陥ったとき、中国が大規模な財政出動を行って需要を喚起し、かろうじて世界経済は流動性を確保することが出来た。結局それは人民元をユーロやドル、円といった主要通貨が(談合によって)十分な兌換規模を確保したからに過ぎないわけだが、いまやその中国経済そのものが、破綻寸前に追い込まれているということも、金融市場にとっては重石となっているだろう。

Advertisement

その上FRBは、どうしてもインフレ抑制のためにテーパリングを加速し利上げ時期をやはめる必要があるし、ECBも再度の金融緩和に踏み切るのは選択肢にないと言われている。そうした状況を考えると、今回の世界同時株安はオミクロン株報道という一過性の要因ではなく、単なる過熱した市場の下落トリガーに過ぎないということになる。

実際、今の世界の金融状況を考えるとき、個別の市場が個別の要因で急落しているうちは問題とはならないと思うが、世界同時株安になったという事が大問題なのだと思う。このまま、新型コロナが収束しなければ、さらなる財政負担と金融支援を実行せざるを得ない状況になる。その時インフレが止まらなくなると、残るものは国家、企業、個人を問わず膨大な債務であり、ジャブジャブ資金で運用されている天文学的なデリバティブであるという状況は、過去の金融危機とは比較にならないほどの規模なのだ。

そうした懸念が払しょくできるような政策、または可能性が見えるまで、株式市場は残念ながらトレンド転換したままになると思う。そして日本のバブル崩壊後の例を見るまでもなく、そうした後処理と言うのは想像を絶する時間がかかるもの。

というわけで今回の世界同時暴落は、株式売りだけでなく債券売りに発展したならば、暗黒の時代の入り口になる可能性があると見る。多少のリバウンドはあっても、今までの感覚でロングすることは、自殺行為であると感じるが・・・。