株式市場暴落前夜

株式市場暴落前夜

絶好調の米国三市場は、またしても史上最高値を揃って更新した。特にNASDAQはポイントとされた16,000pを遂に捉えて16,053まであったが、流石に三市場ともにこの株価の位置では利食いが出るわけでいずれも上髭となり、雇用統計で材料出尽くし感満載の天井サイン発現となった(と個人的に見ている)。

株価が上昇している中、FRBは11月からのテーパリングを決定し、それでも米国長期金利が低下したという事実。ここに現在の危うさの大部分が秘められていると思う。米国債10年物金利というのは、10年後の景気を占う指標であると同時に、10年後の経済成長の姿と表現できるわけで、現在の1.460pという金利は、言い換えると今後10年間に米国経済は年率1.460%の利回りしか期待できないという見方になるわけだ。

これは現時点で大きな経済成長に対する懸念があると言うことを意味していて、株価の天井知らずの上昇とはかなり矛盾した動きには違いない。金利が下がれば資金調達コストがさがって企業活動には有利だたから株価が上昇するのは当然、という単純な話であるはずがない。その懸念と言うのはズバリ、地球温暖化と新型コロナであることは明らかで、温暖化はCO2が温暖化をもたらし異常気象の原因でもあるから排出削減しなければならないということではなく、新型コロナはワクチンを接種すれば収束に向かうという楽観的な観測が徐々に通用しないことが分かってきてしまったという先行きの懸念なのだろう。

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矛盾に満ちたCOP26とエネ問題

先日行われた国連気候変動枠組条約第26回締結国会議(COP26)は、まるで矛盾に満ちた会議だった。COPに復帰したバイデン大統領(米国)は、温暖化ガス削減目標達成が遅い中国・ロシアを非難すると同時にOPECプラスに対し原油増産を強く要請していた。原油・LNG価格の急騰に対し供給の安定化を図るためと言い訳をしたが自国のシェールについては言及しなかった。

ロシアはともかくとして、そもそもCO2排出量の削減を本気で取り組むならば、ダントツ1位の中国、そして2位の米国が日本並みは不可能だが欧州主要国並みに削減すればあっという間にCOPの目標を達成できるし、他の国々は必要以上の削減をする必要すらない。

がしかし、現実問題として増え続ける電力需要に対し、太陽光発電や風力発電で賄えるはずもなく、COP26では結局のところ火力発電を減らせばCO2を削減できるという机上の空論のみを論じているに過ぎない。同様に温室効果ガスのもう一方の主役であるメタンも実質3分の2は化石燃料を燃やすことや畜産業に起因するわけで、極論をいうと牛の生産を止めない限り制御するのがかなり困難なのだ。笑い話のようだが牛のげっぷと放屁によって近代においてメタンは急速に増加した。COP26ではメタンも議題に上ったものの、具体策や削減目標は示されなかった。

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そんななか、OPECプラスは12月生産計画において要請された増産を見送った。これによって原油価格のさらなる上昇と冬場の電力懸念は一層強まった。産油国にしてみるとCOP26は脱化石燃料の会議であって将来確実に原油の需要は低下してしまうわけで、ならば今敢えて増産をして安定供給することは、原油価格の下落を招くばかりでメリットは全くないと考えて当然である。

地球温暖化防止、気候変動の回避というのがCOP26の目的ではあるが、将来の電力需要、エネルギー需要の急激な増加に対応するためには、火力発電、原子力発電、風力・太陽光発電を総動員してもまだ明確に不足することは明らかであって、にもかかわらずCOP26の内容を推進すれば、全世界的なエネルギー不足に陥ることは必至である。

COP26は、打開策のないままに化石燃料を全否定するという、まさに矛盾そのものである。このまま地球温暖化防止のために脱炭素を追求すればするほど、電力の安定供給は困難となり拡大するエネルギー需要を賄うためにはどうしても化石燃料を使わざるを得なくなる状況に追い込まれる。再稼働可能な原発をフルに使うにしても高度な政治的判断が必要になる。

このエネルギー問題の解決策が見いだせない限り、原油価格はさらに上昇し、LNGも再度上昇に転じ、これが社会全体のコストを引き上げる可能性が濃厚な以上、株式市場にとっては最大級の懸念となって立ちはだかるのだ。

収束しない新型コロナ感染

いま世界が注目しているのは日本の感染状況と言える。少なくともいまの日本は「ほぼ収束」を宣言してもいいほどに急激に感染者数が減少しているわけで、その理由を世界中が知りたがっている。一方世界に目をやると、収束どころか欧州では再び感染拡大となり、ドイツや英国ではもはや打つ手がないほどに感染者が急増中なのだ。サプライチェーンの要となっているアジア地域も収束には程遠く、米国でも一定水準以下にならず日々多くの感染者が出ている状況なのだ。

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こうした世界の状況は、さらに感染が急増する可能性が否定できず、ワクチン接種の効果にも疑問が持たれる有様なのだ。日本ではワクチン接種率が75%を超えて世界でもトップレベルに躍り出たことで収束状況に至ったと説明されているが、明確なエビデンスは発表されていない。(最近になって国内のデルタ株が日本人特有の酵素によって増殖できなくなり死滅した可能性が指摘されている)

そのワクチンは個人差にもよるが接種後約半年で抗体レベルは半減以下になるわけで、ブースター接種(3回目の接種)が必要とされ始めた。しかし、欧州各国や米国ではそもそもワクチン接種率が頭打ちとなってしまい、ブースター接種の効果すら疑問視されている有様なのだ。

要するにワクチンが出来れば問題は解決し、経済は再びコロナ以前の状況に戻れるという観測は否定されてしまっていて、経口薬や抗体カクテルなどで重症化を防ぎ、新型コロナと共存してゆく方向性を模索せざるを得なくなっている。

つまり新型コロナでさらに未曾有の金融ジャブジャブ、財政ジャブジャブをやらかした結果、どうやら当てが外れたということ。その副作用が次々に出てくるわけで、インフレもまさにその一つなわけだから・・・。株式市場が今後警戒するのは当然と言えば当然だろう。



この冬は最も暗い冬に

原油価格はこれから12月に向かって再度高値を追う展開になるとことが必須だと言えるし、それに伴って世界中のエネルギーコストはさらに上昇する。また農産物、食品、衣料品等々生活必需品の値上げも継続的に行われる。それに拍車を掛けているのが地球温暖化防止、温室効果ガス排出制限なのだ。

これはある意味、世界中が命の危機に晒されるのと同義だ。気候変動による災害も重要な問題には違いないが、もっと広くあらゆる場面で経済的負担が増して、停電やヒーティングオイルの急騰でこの冬に暖が取れないような状況なれば、より多くの人命が危機に晒される。

にもかかわらず、経済状況を無視して学者や国連は、地球温暖化防止を叫び続けているのだ。菅前総理は確たる根拠もなく単なるノリで(世界の風潮だからという理由で)軽率極まりない「2050年までに脱炭素社会を達成する」という目標を掲げてしまった。

日本だけではないにしても、世界中いたるところで風車が回り、太陽光パネルが敷き詰められているという再生可能エネルギーへの過度の依存は、発電効率を無視した愚行であって、こうしたことは政治主導以外にはあり得ない話であると思う。例えば太陽光パネルは設置時を100%とすれば翌年からは95%、90%と発電効率が低下し、5年後には60%を下回るということも頻繁に起こっているわけで、この効率低下分だけ増設しなければ同じ発電は得られないという、とんでもなく非効率な代物である。

COP26の理想を実現するには、世界中を太陽光パネルで埋め尽くさねばならず、そうなると地熱が急速に低下し地球温暖化はとまる。その代わり、太陽光による地表の殺菌作用や、植物の育成に大きな障害が出て、新たな病原体が生まれることは必須である。

地球温暖化対策のために人々が凍え死ぬという何とも矛盾した皮肉な事態が、この冬現実になる可能性が高い。

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株式投資の楽観は通用せず

社会がどのようになっても、未曾有の金融緩和のために企業業績は極めて順調で、その結果株式市場は右肩上がりの鰻登りであって、ここから年末高に向かって突き進む、と多くの投資家は楽観している。実体経済と企業業績の乖離を埋めているのが、新型コロナ後の金融緩和や財政出動であることを、まったく意識していない。

しかし、これから嫌でも、その乖離を意識せざるを得なくなる。人々は嫌でも高額なガソリンを補給し、ストーブの軽油を購入するし、電気もガスも止めるわけには行かないのだ。企業も無暗に値上げをするのではなく、事業継続のためにやむを得ず値上げする。企業だけでなく公共のサービスもすべて値上げせざるを得ない状況になるだろう。

その結果、いつしか需要自体が減少に転じるのだ。

社会構造の転換を無視し理想論だけで突き進む地球温暖化防止と収束の目途が立たぬ新型コロナ感染によって、世界経済はピークアウトする。その後は坂道を転げるようにスタグフレーションに突き進むのかもしれない。その時に有効な処方をもはや世界は持ち合わせていないのかもしれない。

同時に株式市場はいち早くその兆候を察し、下落に転じるだろうと思う。エネルギー価格上昇、インフレ、テーパリング、中国リスク・・・今の株式市場に何一つ楽観できる要素は存在しないのだから。

(この記事は一アマチュア個人投資家の予想に過ぎません。)