今回の急騰は外資の売りたい強気だった!?

今回の急騰は外資の売りたい強気だった!?

今夜2:50am現在、米国ダウは▲$390、NAS▲0.82%、S&P▲0.92%と反落していて、日経平均CFDは引け値から▲¥350ほど下落中。米国債10年物金利は2.304pとリスクを嫌った買い物が出ているけれど、ドル円は¥121.090と逆に上昇中。この辺の値動きがこの相場の分かり辛いところだと思う。

ブルームに「株高はインフレヘッジ」という記事が掲載されていた。確かに・・・平時ならばそういう解釈も出来るかもしれない。けれども、今はそのインフレ退治のために利上げモードに突入していることや、GDP11位の資源大国がデフォルトに瀕しているという状況であることを考えると、あまりに短絡的と思う。

いま、プーチンは自国経済がのっぴきならぬ状況であることを強烈に意識し始めている。ウクライナ侵攻当初は、短期決着を確信していて、西側の経済制裁がある程度来ても、中国との関係で十分に対応が出来ると思っていたと思う。確かに中ロの連携は、世界経済にとって非常にインパクトがあるし、国連安保理の常任理事国2国が組めば、はっきり言って世界秩序は完全に崩壊しかねないけれど、中国、ロシアにとっては、新たな世界支配の序曲となるだろう。世界地図を見ると両国の国土は合わせて18%もの広大な広さに改めて嫌~な感じがする。

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ところが、ウクライナが泥沼化の様相を呈し、しかもネットを通じて世界中にリアルタイムで動画が出ちゃうから、世界世論は一気にロシアを悪者にしちゃうし、中国もまた安易にロシアに加担出来ないという雰囲気で腰が引けた。バイデン大統領は習近平との電話会談できっちりとロシア支援した場合は制裁のセカンダリーサンクションを適用すると伝えたことも大きい。この秋の共産党大会に向けて習近平は危ない橋は渡れないという事かもしれない。なのでプーチンの計画は軍事面ではもとより、経済面でも中国を当てにできなくなってきて、焦りまくっていると思う。

だからこそ、非友好国に対し「天然ガスの支払いをルーブル建てを命じた。これはルーブルの下落を食い止めようという意図と、いよいよ外貨建て国債の利払い・償還をルーブルで行う準備なのではないかと思う。またロシア国内でのプーチンへの反発は日に日に激しさを増している。中銀総裁が辞意を表明して拒否された、とかプーチン大統領の特使チュバイス氏がロシアを捨てたとか、首脳会議でプーチンが軍や諜報機関を叱責している様子なども流れる始末で、独裁者は結局強権で対応するしかない。そうなると権力もいよいよ末期的になってくる。

国会で演説したゼレンスキー大統領は、ロシアが化学兵器を使う情報もあると言っていたが、バイデン大統領も例によってインテリジェンスからの情報を「ロシアが化学兵器を使う可能性は現実的な脅威」とコメントし、プーチンの情報はかなりの確度で米国は把握しているということが見え隠れしている。軍事侵攻に関してもまた経済動向に関しても、ロシアの状況が筒抜けであることに驚かざるを得ないね。

さらに今日(24日)、米国はパートナー国とともにさらなる追加制裁を課す予定で、これでまたコモディティや穀物の価格が跳ね上がる可能性が濃厚になってきた。

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FRBは今のインフレを政治絡みとして、FRBの金融政策で歯止めがかけられるものではない、とズバリ本音を言いたいのだろう。ハト的なパウエル議長でさえ、刻々と入る情報次第でハトからタカに急変するほど、米国のインフレは印刻な状況に突入している。そしていよいよ、利上げ以上に金利上昇が加速しそうになってきて、債券市場が急激に悪化し始めた(アイキャッチ画像は今夜のHYGリアルタイムチャートだ)。

ロシア制裁でますますインフレは加速しそれを止めようと利上げを行えば、膨大な規模の債券市場が崩れる。経済状況が急変するときには債券は株式のような相場にはならず、急激に流動性を失う方向に動く。これがデリバティブと連鎖するから悪影響が連鎖的に広がる。それがサブプライムショックの教訓でもあるわけで、急騰で株式市場が躍っている反面、裏では着々と債券売りが進行しつつあるのだと思う。そこにロシアデフォルトというトリガーが絞られたなら・・・。机上では計算できない影響が出ると思う。

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10%に迫ろうというインフレ下で、金利上昇のプロセスに入り、なおかつQTが待ってるという経済環境で、債券はQT前に売るという動きが顕著になる。同時にFRBが「米国経済は堅調」とするその前提が崩れる可能性は大いにあるし、すでに崩れ始めているのかもしれない。もちろん、企業業績に影響が出ないはずもなく、4月後半から出始める米国企業決算に対する警戒感も大いに高まる。

にもかかわらず、株式だけがイケイケで上値を獲ってゆくというのは・・・利上げ=株高と短絡的な結論を導き出すのは、無謀だと思う。今夜のウクライナリスクでの米国債買い(金利低下)とドル買い(円安進行)は、株式市場がいよいよ本格的にリスクを意識し始めた結果だと思うけどね。「日米金利差拡大=円安」ではなくて「有事のドル買い=円安」が進みつつあるのかもしれない。

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新型コロナ出現から2年半、ロシアがウクライナに侵攻するという戦争が勃発した。ロシアは第二次大戦の戦勝国で国連安保理の常任理事国であり、現在の国連の枠組みでは常任理事国5か国は、ある意味無条件での軍事侵攻権を持つ。現実問題として、加盟国や敵国に対しては国連軍を組織し派兵することも出来るけれど、当事者がロシアや中国と言った常任理事国では、他国の侵略はある意味では自由自在なのだ。

そんな現在の国連の枠組は、もはや現実世界では意味をなさなくなってきた。今回のロシアのウクライナ侵略は、第二次世界大戦の戦勝国主導で作られた世界支配体制の弊害なのだと思う。逆説的に聞こえるかもしれないけれど、国連があるからロシアは戦争が出来る。そして安保理常任理事国としての特権があまりに居心地が良いから国連改革は進まない。

考えてもみれば戦後70年間も常任理事国は特権を享受し続けているというのは・・・。ちなみに日本は敵国(敗戦国)であって国連の枠組みでは何の権限もないし、侵略されても文句は言えない立場、ということになるらしい。

ふぅ・・・日本市場も似たようなものかぁ・・・。