ここから先の日米株式市場を考える 1

ここから先の日米株式市場を考える 1

昨夜の米国市場は日本市場に続いて反発と言うことになったけれど、これは昨日も書いた通り、地合いが落ち着いたことによるポジションの見直しという側面が強かったと思う。特にショートしている筋は、一旦この局面で利食いをして様子を見ないといけないし、逆にロング側もこれ以上の毀損を食い止めるために新たなポジションを加えるとか、そういう作業を地合いが落ち着いたときにやっておかないといけないという事情があっただろう。

米国株式市場の行方

今回の株式市場の下落で米国では約1600兆円の時価総額が失われたと言われる。この数字は株式市場が約20%下落した時としては当然過去最大となるわけで、もちろん小さな金額ではない。そしてこの下落によってロングはすべてに渡って莫大な損失をだしているのは明らかで、恐らくこの▲20%という下落率は、彼らにとってのボーダーとなる。これは過去の経験が生きる下落率のギリギリの線が▲20%だからだけどね。

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けれども、昨年のアルケゴス問題の教訓は、この市場でやんちゃしている資金もまた、爆損状態にあるということ。ロングーショートの中堅ファンドくらいなら、ほとんど傷がついていないこともあるだろうし、ショート主体ならば結構な利益も出しているかもしれない。けれど、基本的にやんちゃな資金はロングだから、ボロボロに近い状態と言える。

SBGを見ればわかる

日本にいてもそうしたことが推測できるのは、9984 SBGのお陰かもしれないけれど、SBGは2020年度に日本企業として最高益を叩き出した翌年(前期決算)で自身として過去最大(日本企業では過去2番目)の赤字に転落した。それでも、ファンドの経営に際立った問題が出ないのは、2020年度の爆益を相殺したに過ぎないからだと言う解釈をされているからです。

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そして昨日SBGは、12%というショートカバー主体による「悪材料出尽くし」の爆上げになったけれど、そうした短期筋は米国を中心とした海外市場が、結構な戻りになる、と踏んだからだろうし、そのきっかけになったのは前日のFRBパウエル議長や地区連銀総裁達の「利上げは0.500p」という発言だった。インフレの進行で6月0.750pを予想していたのだから、それを打ち消せば、当然織り込んでいた株式市場はリバウンドするよね。そうなるとSBGの業績も「悪材料は出尽くした」となる。

けれども通常株式市場が暴落して底値付近で、こうした安心感がでたならば、米国三市場はもっと急激に戻るはず・・・しかし、米国三市場は言うほどには戻り切れていない。なぜなら11日、12日の4月CPI、PPIがインフレの続伸を示していたからだね。そして5月以降は前年のインフレ率の上昇があっての前年同月比であるから、このままの水準でCPIが出てきたら、それこそ大変な事態になると米国投資家は身構えているだろうから。仮に2年越しとは言え物価が12%とか15%上昇と言うことになったら・・・米国市場はさらにとんでもないインフレを織り込まなくてはならない。

なので先行きが極めて不安な状況という中での株価の戻りは当然限定的だろう。地合いが安定したことで何日か戻り相場となっても、今のインフレ状況はトレンド転換を許すはずがないわけで、利上げとQTがダブルで来る6月を織り込もうとする動きに回帰すると思う。

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FRB金融政策の過ち

今の米国市場が最悪なのは・・・景気実態とFRBの金融引き締めのタイミングがずれてることだよね。昨年、本来引き締めに入らなくてはいけない時期に、「年末までには収まる」と甘い予想をして、物価上昇を放置した。その結果、インフレが止まらずにウクライナ戦争が勃発、インフレに拍車を掛ける事態となったわけだが、その時点では(2月)米国は金融緩和をしていた・・・。3月になりようやくテーパリングの終了と0.250pの利上げをしたけれど、その時点でのインフレはCPI8.5%(前年同月比)と完全に手遅れ状態だった。

そして月を追うごとにインフレは上伸しているのにも関わらず現時点でまだ、0.750%の利上げにとどまってる・・・。しかし株式市場は、昨年の11月にピークを打って以来、約20%の下落となっているわけで、本来であれば、ここからトレンド転換して戻ってもおかしくはない水準だ。けれども、最も重要なことは、金融引き締めはこれから本番が始まるということ、すなわち利上げの連続とQTが急激に行われるということだろう。

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株式市場をソフトランディングしたいがために、事もあろうにパウエル議長は0.500p以上の利上げはないとほぼ断言するような形でアナウンスした。結局その真意は、これから年単位でインフレを鎮静化するという事なのだろうけど、それはQTにウエイトを置いた引き締めになる、と今の時点で言ってしまったことになる。

いまのFRBの金融政策は、昨年からすべてが後手に回っている。後手に回るからその間にロシアのウクライナ侵攻が起こり、そして今またゼロコロナ政策によって中国経済の急減速を織り込めないでいるし、欧米のロシア産原油全面禁輸やロシアによる天然ガス供給による報復がはじまろうとしている。その最中でのパウエル発言なのだ。

今が米国市場の試金石

米国経済の、特にインフレの現状を考えるに、株式市場の約20%の急落で済むか否かは相当に懐疑的だ。なぜなら、金融引き締めによってインフレがある程度頭打ち感が出てきたとしても、今後は、少なくとも年内はFOMC毎の利上げとQTが行われ、QTは9月には950億ドルに達する見込みである。となると、まずは債券市場が持たないだろうし、企業業績も悪化の一途をたどるのは明白だろうね。

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現時点でそれが確定的に分っている状況で、果たして株式投資に資金が回帰するだろうか?という疑問が拭えない。株価が単なる需給で動くものならば、昨夜のように戻りを演出する局面もあるだろう。けれども、ロングの投資家が株価底打ちといってここから買いを入れると考えるのにはかなり無理がある。インフレを抑制するために、利上げやQTで金融を引き締める。けれどもその間は、経済や企業にとっては同時進行の二重苦なのだ。

とすれば、FRBが曖昧な政策を続ければ続けるほど、株式市場のリスクは大きくなると思う。加えて、今年11月には米国の中間選挙があるが、現状では下院は共和党有利、同数の上院もインフレを克服できなければ共和党が僅差で勝利する可能性が高いと言われていて、バイデン政権はインフレ潰しに相当に神経質だと言われている。なので、FRBに対し相当な圧力も予想される。

そうした諸々の条件を考え合わせると、米国市場の今回の戻りは6月FOMCに備えたポジション調整の意味でも、限定的と言わざるを得ないと思う。

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