経済成長を止めた日本は引き籠り増幅国家
- 2019.06.09
- 放言
格差社会が叫ばれて久しい日本だが、元農水省事務次官の事件をきっかけににわかにクローズアップされてきたのが、中高年の引き籠りだ。
現在約61万人の中高年が引き籠り状態にあると内閣府が発表した。その約8割が男性であると言われている。
今朝の某TV番組では、所謂有識者が「この問題は社会問題化して取り組まないと解決しない」とコメントしていた。
「うん?社会保障?地域の取り組み?制度利用?なんだそれ!」
所詮は他人事、自分には無関係。有識者はそんな顔をしてたね。
経済成長を止めた日本は引き籠り増幅国家
日本のGDPはこの30年間でほとんど増加していないという事実に、誰も関心を示さないから、現在の社会問題の大半が経済成長出来ないことに起因していると考えない。
自殺者数にしても引き籠り数にしても、経済成長とは完全に相関関係にある。
経済が先進国並みに成長すれば、どちらも激減するのは明々白々なのだ。
リストラと非正規雇用
いまから約30年前の1990年以降、日本のGDPはドル換算で僅かしか増えていない。その経済成長レベルは先進国では最低で全世界でも最下位水準だ。
バブル崩壊があったら、と理由付けには事欠かないが、全世界的なリーマンショックでも経済は成長しているので単なる言い訳に過ぎない。
日本は経済成長を諦めた世界唯一の国家かもしれない。
経営者はリストラと非正規雇用で利益を出すことに奔走。いまや日本の非正規雇用は40%を超えようとしている。
いまや日本は働く人10人に対し4人が非正規雇用で低賃金労働を強いられている。しかも正規雇用の大半が中小企業であって、大企業や公務員とは比較にならない低賃金ぶりなのだ。
財政再建という戯言
安倍政権になり日銀は金融緩和政策の一環として大幅な国債買い取りに踏み切った。しかし、仮にこの日銀の行動がなかったとしても日本の財政は危機的状況とはいえない。
つまり約1400兆円の政府負債に対し政府資産の合計は950兆円あまりあるわけで、実質債務は450兆円程度なのだ。
それでも財務省は財政再建を越え高に叫び、この20年間消費税増税に血眼になってきた。
しかし企業のBSさながらに「統合政府」という観点で日銀を込み入れた連結BSとすると、日銀の国債買い入れ額は資産計上となり、
450兆円-350兆円=100兆円
が現時点での実質的な政府債務であることは、多くの経済学者、とりわけ高橋洋一氏(政府BSを作った本人)は明言している。
いまの日本はたった100兆円の実質債務であるにも関わらず、消費税増税に邁進している異常国家なのだ。
少子高齢化の呪い
少子化問題の根幹は、養育費、教育費の増大と所得の減少にあることは明白。
つまり所得に占める子育て費用の比率が高水準であることが問題なのだ。
だからこそ、出産数そのものを減らす(少子化)のは、国民の防衛本能で当たり前のこと。
経済成長がとまり、将来設計が出来なくなると、債務や費用を減らすこと以外に有効な手立てはないのです。
また、長寿化に伴う高齢化問題は、高齢化そのものが問題なのではなく、介護人員の不足が致命的なこと。介護人員の不足は低賃金であるからに他ならず、デフレ下では解決の糸口さえない。
つまり、老人医療費や介護保険負担の増大ということも含めて経済成長が止まっていることで、増税以外に手段が見いだせないのだ。
社会コストの上昇
社会が近代化するに従って、あらゆる問題をブラッシュアップする必要が生じる。社会インフラの更新や環境対策、高齢化対策、移民問題等々、社会コストの将来的な増加は、いつの時代でも周知の前提なのだ。
そしてこれらのコストは待ったなしの、所謂固定費となる。
しかし、経済成長出来なければ、年々固定費率が上昇するのは当たり前なのだ。
低所得者を食い物に!
消費税増税は、ほぼ一般財源だ。だから実際の使途は社会保障のために使われているのは約3割程度にすぎない。それでも財務省や政治家は、社会保障や教育無償化のために消費税を増税します、といって憚らない。
しかし、社会保障を必要とする経済的な弱者に対し、逆進性の極めて高い消費税を増税して所得の再分配をはかるという、狂気の沙汰を考え出す社会。
それが日本です。
理由は徴収のしやすさ。この一語に尽きる。
肥える公務員
公務員給与の指針は人事院勧告だ。しかし、上場大企業の給与水準と比較して安いといってここ数年給与の引き上げが行われている。
そもそも成果主義(業績主義)の民間企業並みの賞与を支給することさえ、大いなる疑問がある。しかも手厚い年金制度は絶対にクローズアップされることはない。
こうして現在の給与格差は驚くべき水準に達している。
日本の国家公務員給与水準は世界でも断トツで驚くことに米国の2倍以上であるという事実。そして民間給与の平均は米国の約2/3である。
これらを考えると、今の日本において公務員は完全に上流階級となる。
その役所で雇用している非正規はすべて最低賃金に近い給与なのだから、笑うに笑えない。
おもいやりと絆の嘘
「おもいやり」と「絆」というのは日本人の特質でもある。他国に類をみないほど助け合う心が根付いている。しかし、本来こうした心情は、控えめなもののはず。
にもかかわらずメディアがいたずらに喧騒するのはいたたまれない。
そんなことをわざわざ強調してもらわずとも、日本人の心のなかに理解と寛容があるはずなのだ。
事あるごとに強調されると嘘くさく感じられる。
おもてなしの嘘
大事なお客様、というより自分にとって大切な存在である人への自己表現が自然にもてなしの心を呼び起こすだろう。
その括りを、たとえば日本政府が外国人観光客を増やす政策を行うために、PRの一環として全面に押す出すことに、いささかの違和感を覚える。
国内経済活性化のために観光客に頼ることが唯一の内需政策とするならば、本当に情けないこと。まるで、発展途上国並みの発想と言わざるを得ない。
「おもいやり」や「絆」、「おもてなし」といった日本人の良心は、政治やメディアが声を上げて強調することではない。また日本人特有とも言える自己犠牲の精神でもあると思う。
しかるに、そうしたデリケートで柔らかな心情を取り上げれば取り上げるほど、数々の経済的な失策を覆い隠し、増税を強いるためのムード作りとしか思えなくなる。
自己犠牲礼賛である。
それでも増税する政治家・官僚
こうした社会状況であるにもかかわらず、政府・財務省は、経済成長を無視して増税を繰り返している。
今回もまた消費税率を10%にするために、様々な言い訳を用意しているのだ。キャッシュレス社会化、ポイント還元、各種補助金など小手先の政策を僅かに、しかも限定的に行うことで景気に対する影響を考慮すると言う。
しかし、そもそも経済成長が眼中にないために、こうした政策を行うのは火を見るよりも明らかだ。
既得権死守と格差拡大が貧困化をもたらす
こうした経済成長を目指すことのない社会は、既得権死守という守りに入る。そしてそのことが、さらなる格差拡大を生み出す結果に今までもなってきたし、これからもますます増長されるだろう。
社会コストが上昇し続ける中、10人に4人が非正規労働を強いられているという事実からして、中高年の引き籠りが僅かに60万人しか存在しないとすれば、それは日本人の胆力だと思う。
しかし、経済成長を目指すことを止めてしまった日本の「引き籠り増幅システム」は、「社会問題」と言うよりも「国家の問題」なのだ。
国家としての活力と未来を失った日本
先進資本主義国としては当然だけれど、発展途上国の加味したすべての国家のなかでも、突出して活力を失ってしまったのが日本だと思う。
たとえどのような国家、民族であれ、昨日より今日、今日より明日という成長モデルの中で社会やこの生き方を模索するものだ。不幸にして政変や弾圧によって阻害されることもあるけれども、初めから発展を諦めた国家など存在するはずがない。
ところが、日本の現在の在り様は、まさに経済成長を前提としない国家運営だ。目先のシステムを維持するために、取れるところから取って穴埋めしてゆくという社会システムが永続的であるはずがない。
経済成長を少子高齢化によって諦めるような国家に、どんな未来がまっていると言うのか?
引き籠りはなお増える
このまま、国家運営の考え方が変わらない限り、社会コストを負担できない階層は増える。社会の所得再分配機能が麻痺し逆進的となるのは、封建社会の典型的な社会制度だ。
日本の政治家や官僚が現状の考え方を改めぬ限り、日本社会が経済成長を目指さない限り、中高年の引き籠りはなお増え続けるだろう。
そうしたプロセスを放置すれば、確実に日本社会は没落する。
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