文春・木原スクープに見る政治権力の乱用とメディアの崩壊

文春・木原スクープに見る政治権力の乱用とメディアの崩壊

文春がスクープした木原官房副長官のスキャンダルの本質は、現在の木原夫人が(当時)夫の不審死に関する重要参考人だったという事ではない。個人的にはそんなことはどうでもいいし、この事件がたとえ殺人事件であって木幡夫人が関わっているとしてもそれはそれでよくある一つの事件に過ぎない。この事件は2006年の出来事。ところがこの件を警視庁が本格的に再捜査を始めたのが2018年10月。あるベテランの女性刑事が警視庁の未解決事件を調べて、疑問に感じたのが発端だと言われているけれど、12年前の事件を改めて掘り起こして事前調査を行い決定的な確証を掴んだからこそ大規模な捜査班が立ち上げられたのじゃないのか?この件を彼女が上申したとき、上司は少なくともそれを納得したからこそ捜査チームが立ち上げられたわけで、「よく分からないけれど着手してみるか」程度の動機のはずがない。

捜査チームが立ち上げられたのが2018年10月。けれども実際にはその再捜査は2016年から水面下で行われていた。なぜならば当時木原夫人の浮気相手で、亡くなったご主人の友人である方が薬物違反で有罪となって宮崎刑務所に収監されている最中に、何度も(30回近く)複数人の刑事が接見に出向いているという事実があるからです。なので事前に再調査をして確証を掴んだから上申して捜査チームが立ち上がっているに違いないのだが・・・。

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ところが、同年同月(2018年10月)に木原議員は「自民党・情報調査局長」に就任した。このポストは自民党幹事長の直轄であって幹事長が直属の上司となり、内閣官房の内閣情報調査室(内調)と情報を共有する非常に重要な部署と言われていてる。片や官邸の内調の多くは警察庁からの出向組であってそのトップである内閣情報官は事務次官級の処遇で警察官僚がその大半を占める。つまり木原議員は日本の諜報の最高権力と同等の地位につき、もっと言えば日本の警察権力のトップと同等の地位を手に入れたということになる。

捜査チームは十分な確証をもとに大々的な調査を開始して直後、木原夫人の実家に家宅捜索に入る。捜査令状が取れたということは裁判所が認めるほどの十分な確証があったことを意味し、同時に木原議員と夫人は任意の事情聴取を受けることになった。その直後木原議員は自民党の情報調査局長に当時就任1年目だった城内実議員に代わって就任することになる。政権(安倍政権)も自民党幹事長(二階俊博)もそのままで、就任したての城内議員は二階氏の一声で環境副大臣に抜擢され、代わりに当時政調会長であった岸田の懐刀と言われた木原議員が登用された・・・。

そしてなんと2018年11月には、警視庁の捜査チームは解散同然に追い込まれ、捜査は打ち切り同然になった。立ち上げから僅かに1ヵ月の時点だった。

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これが木原氏の指示だったか否かは不明だが、少なくともこの突然の人事に関する情報は、二階議員(当時幹事長)、城内議員(当時情報局長)、岸田議員(当時政務調査会長)は心得ているはずである。実際に理由がなければ、突然にこのような人事は行われないし、行う必要性もないのだから。そして仮に木原議員が警察庁に何らかの圧力をかけたと仮定すれば、当時官邸の内閣情報官で警察庁長官から2011年に就任した北村滋氏も当然事情を知っているとみられ、現場に振ってきた天の声の主ではないかと思われる。

文春砲が放たれ、降って涌いた突然のスキャンダルに対して木原官房副長官は、永田クラブ(官邸記者クラブ)を中心した会員メディアに対し弁護団を通じて「(文春を)刑事告訴する」と言う内容のメッセージを送りつけた。そのことが主要な要因であることは明らかだが、大手メディアは木原スキャンダルに対し全くの沈黙を保っている。しかし素人目に見ても一体何を刑事告訴するのかが全く分からないし、どのような意図でそうしたのかも不明だが、そういうことを考えると目的は報道規制にあると思わざるを得ない。官房副長官という権力ある地位を利して実質的な報道規制をすることによって、木原夫人の事件および木原官房副長官の圧力という疑惑を、権力を利して封じ込めてしまおうというのが目的である考えることが自然だと思う。これは権力の許されない乱用である。

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またテレビ、新聞等のメディがこのことに一切触れないこともまた大問題だと思う。これこそが戦時中の報道管制の敷かれた戦況報道や嘘だと分かり切っていた大本営発表を国威高揚と言う名目でそのまま国民に知らせた、ということと本質は何も変わらない。日本のマスコミは政権から圧力が掛かれば報道しない、と言うことが完全に証明されたわけで、BBCが取り上げるまで一切無視し続けたジャニーズ事件報道も、一方的にプーチンを批判しウクライナの戦況が有利のごとくの報道を流し続けるのも同種のものだということ。

スキャンダル専門のタブロイド的週刊誌に堕ちていたと思われた文春は、木原スキャンダルを大々的にスクープ報道を行ったけれど、他メディアは一斉関わることもしない。文芸春秋社も一介の出版社に過ぎず、出来れば他のメディア同様に大火傷確実な火中の栗は拾いたくないだろう。木原議員は自民党・情報調査局長に就任する際に、当時の二階幹事長から「別れておけ!」と叱責され、「子供も二人いるしそれは出来ません」と拒否したという。そして岸田内閣が誕生した際に二階幹事長はお役御免ということで権力の座を追われた(二階切り)けれど、岸田首相の政策を一手に引き受けているのが木原氏であることを考えると、この人事で木原氏の影響は無視できないだろう。

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このところの岸田首相の独善的な態度は目に余る。LGBT法案のゴリ押しは、頻繁にエマニュエル駐日大使と情報交換をしてるという木原官房副長官の進言に従ったというのが現実だろうし、名ばかりの異次元少子化対策や防衛増税、そして各種のスティルス増税や検討されているサラリーマン増税まで、財務省出身の木原氏を通じて岸田首相に投げられている政策だ。岸田首相は木原氏がいなければ、何も出来ないただの議員なのだ。

支持率がいくら低下しても岸田政権は、党内後継者不足と言う事情で低空飛行を続けていて、何を血迷ったかNATO首脳会議に出席し演説をしている始末。NATO支持を表明しNATO東京事務所を誘致すれば、隣り合わせのロシアが北海道侵攻してもおかしくない。ウクライナ侵攻の理由がNATOの脅威であることを全く理解していないネジの外れた阿呆政治家なのだ。

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しかし岸田ー木原コンビのゴリ押しは党内に意外に敵を作ったとも言える。今は表面化していないけれど、LGBT法案に関しては多くの自民党議員が反対であるというし、学術会議問題で菅降ろしを画策し、岸田政権誕生と同時に二階幹事長に引導を渡した。安倍政権で重用された内調の北村情報官も退任したとはいえ、元警察庁長官であり安倍元首相を全面否定している岸田首相を快く思ってはいないだろう。

警察権力のトップレベルの地位にあった木原官房副長官を相手にスキャンダルを報じた文春は、確固たる確証を掴んでいることは想像できるし、裏には大きな政治的バックがあると考えるのが自然だろう。そうでなければこのアンタッチャブルな案件をスクープ出来るはずがない。そもそも文春は不倫だ薬物だと小物相手のスキャンダルで世間を騒がせ、三浦瑠麗のスキャンダルでさえ満足に報道できず仲良く飯を食っているタブロイド週刊誌なのだから。

その吹けば飛ぶような出版社が官邸に喧嘩を売った。国家権力の乱用を糾弾するという大博打に打って出た。勝てばあの文春が日本のメディアの最上級となるだろう。

権力の長期化は腐敗を生むと言われるが・・・今の日本は政治もメディアも官僚も、腐敗してしまっているらしい。