アメリカの幻想 1:ネオコンと国際金融資本が狙うロシア解体

アメリカの幻想 1:ネオコンと国際金融資本が狙うロシア解体

日本人は何故かアメリカが好きだ。敢えて「何故か」と言う言葉を使ったけれど、それは第二次大戦後の占領政策の結果であることは言うまでもないけれど、それでも「アメリカについて行けば何とかなる」という敗戦で何もかも失くした日本人の屈辱的なまでの生き延びる智恵だったのかも。

アメリカは日本を従順な属国とするためにあらゆる政策を駆使した。かつて強大な影響力を誇ったローマや中国は周辺国に対し冊封政策(称号・任命書・印章などの授受を媒介として、「天子」と近隣の諸国・諸民族の長が取り結ぶ名目的な君臣関係)を取ったけれど、日米の関係はそれと何ら変わることはなく、現在まで続いている。



田中角栄と安倍晋三

そして恐らくこの日米関係を変えようと試みた首相は田中角栄と安倍晋三しかいなかった。しかし田中首相はでっち上げられたロッキード事件で失脚し病に倒れ、安倍首相は昨年7月、山上容疑者によって暗殺された(とされる)。

1972年2月、ニクソン大統領が歴史的な訪中を果たし米中共同声明で将来的な国交正常化を取り決めた半年後の1972年9月に訪中を果たし米国より先に日中国交正常化を実現してしまい、米国が正式に米中国交正常化を果たすのは1979年カーター政権だった。そしてさらに田中首相は翌年(1973年)10月にソ連を電撃訪問しブレジネフ書記長と「第二次大戦の時からの未解決の諸問題を解決して、平和条約を締結する」との日ソ共同声明を取り付け、領土問題に取り組む姿勢を見せた。

これは米国にとって属国の日本が反共の立場を逸脱し、米国を出し抜く形で中国、ソ連と向き合ったことは、絶対に容認できない越権行為とみなした。その結果米国上院のチャーチ委員会(多国籍企業小委員会)でロッキード事件(ロッキード社の航空機売り込みのための国際贈賄。ロッキード社から田中首相にトライスター導入に際し贈賄が行われたとする内容を含む)が突如持ち上がり、金権疑惑で辞職に追い込まれた田中を法務大臣稲葉修は米国の圧力に屈し、指揮権発動と言う形で田中を逮捕・起訴した。

またトランプ大統領と蜜月関係を築いた安倍首相はロシア・プーチン大統領とも27回にわたり会談し、米ロの緊張関係を解そうとし、同時に北朝鮮への圧力を高め拉致問題を解決しようとした。北方領土問題については日米安保がある以上ロシアは妥協しないと諦めていたことが伝わっている。しかし、こうした姿勢が米国のネオコンやグローバル金融資本を抑え込もうとしたトランプ大統領とともに、反感を買っていたことは紛れもない事実であり、トランプ大統領は疑惑に満ちた大統領選挙で再選に失敗し、安倍首相は凶弾に倒れることになった。

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ロシアのウクライナ侵攻

「ロシア・プーチン大統領は国際法を破りウクライナ国内のロシア系住民の保護と自治を確立するためにクリミア半島を占領し、さらに2022年2月ウクライナに武力侵攻を行った」

これが現在続いているウクライナ戦争の説明であり、他国に武力侵攻することは明らかに国際法違反であるとともに一般市民を巻き添えにする戦争犯罪であるとG7各国およびNATO加盟国は一斉に反発した。こうしたロシアの行動は第二次大戦を誘発したナチスのポーランド侵攻を思わせたことも、欧州各国に危機感を募らせた。

かつてベルリンの壁が崩壊し東西ドイツ統一交渉に際し、ソ連のゴルバチョフ書記長に対し、米国のベーカー国務長官や西ドイツのコール首相は「NATOは旧東ヨーロッパ諸国やソ連に対し「1インチも拡大しない」と約束した事実がある。しかしその約束を無視し(国際法的効力はないとし)ワルシャワ条約機構解体後、ポーランド、ハンガリー、チェコと東方拡大し、さらに、ブルガリア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、スロバキア、およびスロベニアを次々と加盟させた。

NATOは明確にロシアを敵国とみなした安全保障同盟であるとともに、集団的自衛権を有しているわけで、ロシアにとっては直接的な軍事脅威の拡大となる。こうした動きを主導しているのは明らかに米英であることはもちろんプーチンも熟知しており、またウクライナでは民主政権の打倒、ロシア系国民に対するロシア語使用禁止、7年間にも及ぶ米国主導の国軍強化等々ロシアにとっては我慢できない状況となりつつあった。その上、ウクライナがNATO加盟希望を表明することで、つまりはモスクワまで十数分で核ミサイルが到達することになるとなれば、プーチンの我慢の限界を超えるのも理解できる。

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そもそもロシアでは・・・ソ連邦解体後の混乱の中で政治的に無能だったエリツィンが大統領に就任すると米国は民主化を画策、政治のみならず経済の民主化を持ち込み、国営財産や権益の搾取をロシア人を使って行い、オルガルヒと言われる新興財閥をいくつも誕生させるとともに、イスラエルを経由したマネーロンダリングを主導して数十兆円の利益を米国に還流させた。これをモデルにして米国はイラク侵攻を行ったわけだが・・・。

共産主義体制崩壊と混乱の中でプーチンは、米国を中心とした西側政府と資本の態度に大きな反感を募らせた。そこに今度はNATO東方拡大となってますます、ロシアの国家体制に危機感を募らせた。そしてロシアにとって最後の砦とも言えるウクライナで、米国は政権を打倒し、軍事力を強化し続け、ウクライナ正規軍を35万人規模に拡大したわけで、プーチンのウクライナ侵攻はつまり、実質的に米ロ間の戦争であることは明らかである。

G7やNATO加盟国はウクライナに軍事支援し、ロシアの体制崩壊を目指している。そのためには一般国民の犠牲など全く厭わない・・・。すべてはプーチン体制の崩壊とロシア権益の奪取のためである。

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米国の究極の目的はロシア解体

第二次大戦以降、ロシア(ソ連)は常に米国を脅かす存在だったし、米国の仕掛ける対外作戦に対しことごとく歯向かったのはロシア(ソ連)だった。そしてそんなロシアを後押しするように振る舞ったのが中国である。つまり米国の覇権にとってロシアと中国は常に障害となっていて、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争、アフガン戦争、そしてイラン、リビア、シリアに対する介入など、すべての計略に対し、中ロが立ちはだかった。

そして今回のウクライナ問題でもまた、米国はロシアと対峙することになった。本来米国が他国で戦争する大義名分は自由主義陣営の防衛であり、共産主義化の拡大の防止と言うものだったわけだが、いつの間にか利権をめぐる争いとなり、ネオコン主導の金儲けに変わり果てる。過去においてその最大の犠牲者がロシアであるという識者もいるが、納得できない話ではない。

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とにかく米国はウクライナ戦争に加担し、ロシアを打ち破るために大量の武器・弾薬を供与し、軍事作戦遂行のための資金援助を行っている。しかし報道とは裏腹に、米軍が要請したウクライナ正規部隊は壊滅し、現時点での軍事行動は即席の民兵と米軍そのものが主戦力として戦っている。ウクライナ兵の死者数はロシア兵と比較し、5:1、または8:1という劣勢ぶりであるとともに、プーチンは絶対にこの戦争を引かないだろう。

いま、一触即発状態にあるイスラエルとイラン、そして中国の台湾侵攻に対しては、まともに対応できる状態ではないといわれ、そのことをブリンケンは訪中して恫喝され、イエレンの米国債引き受け要請中国はやんわりと断った。そして中国を中心にBRICSプラスという新たなドルに依存しない経済圏が8月にスタートする。

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ウクライナ戦争とBRICSプラスの団結は、米国の欺瞞に満ちた対外工作が失敗することを示唆し、ドル基軸通貨体制の弱体化がいよいよ始まる可能性を示している。アメリカの自由主義体制と国際秩序の維持という仮面がいよいよ剥がれるかもしれない。

その中でアメリカの従属国路線をひた走るのが岸田政権であることを考えると・・・、ウクライナに20兆円の資金援助、LGBT法の立法、防衛費の増額で(米軍の代わりに)中国の台湾侵攻に備えること等々。日米安保下で核兵器全廃などという言葉を軽々しく口にする無能・無知・無策の首相では、日本の真の自立・独立は夢物語に終わってしまう。

(アイキャッチ画像はウクライナ戦争の仕掛け人、ビクトリア・ヌーランド国務次官)