イン ザ ミドル オブ コロナ 1:米中デカップリングと日本企業

イン ザ ミドル オブ コロナ 1:米中デカップリングと日本企業

この週末は情報の中に埋もれてたというか、何がどうなっているのか、これからどうなるのか、という視点で様々な情報を見聞きして、混乱していたよ。何せ新型コロナの最中、やれ経済が大事とか、株価が上昇するとか・・・、米中対立が激しくなる、はたまた中国の水害がとどまることを知らず、と山のような情報の中に埋もれるしかなかった。

そして自分なりにアフターコロナを考えるとき、過去の経験則を当てはめることは無謀としか言いようがなく、価値観を含めた何もかもが新しい次元に突入してゆくのだ、と考えざるを得なかった。しかもアフターコロナという表現を使うけれど、果たしてそんな時代になるのだろうか?それさえも怪しいと考えるべきではないのか?という懸念。そして、今の米国や日本をはじめとする先進国の「コロナ以前への回帰」を目指した政策は、あまり意味がないのではないか?と思うようになった。

もはや世界は、コロナ以前の状況に戻ると考えるべきじゃない。世界中がいまだ新型コロナの只中にあって、効果的な新薬さえできれば、ワクチンさえできれば、すべては元通りになると安易に考えている節があるが、まず、万に一つもその可能性はないと断言せざるを得ない。

いまから数年の間に、世界は想像できないような姿に変わるだろう。もちろん、投資という概念も大きく変わるだろうし、株式市場そのものの在り方も変わると思う。そのうえ気が付けば、社会の在り様も全く新たな形になってる可能性さえある。なので、可能な限り早期に頭を切り替えて、次に何をなすべきか、どのように生きるべきかを模索し始めなくてはならないと思った。もはや、別世界で生きてゆくという覚悟が必要かもしれない。

そこで、「イン ザ ミドル オブ コロナ」というシリーズで、アフターコロナを自分なりに分析し予想してみた。

トランプ(米国)の覚悟

米国は今回の新型コロナに関して、中国の武漢P4研究所から人為的に作り出したウイルスが、何らかの事情によって漏洩したことが原因とほぼ断定しているし、その後の世界中への感染拡大の驚異的なスピードから、中共による作為的な感染拡大と確信している。

中国共産党は、(結果的に)今回の新型コロナが人ー人感染するウイルスであることを知りつつ、作為的に感染者を世界中に送り込んだとみるべきだろう。共産党と人民解放軍は春節の1か月前に人ー人感染の事実を知りながら、敢えて春節の大移動を止めることをしなかった。もちろん、中国人は世界中に旅行にでかけたわけで、瞬く間に世界中が新型コロナに汚染されてしまった。

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これが米国の反中感情を決定づけたのは間違いない。最も反中をあらわにしているのは議会で、上院はもちろん、民主党優勢の下院でも各種の中国に対する制裁法の可決はほぼ全会一致なのだ。

また全米で起こっている人種差別反対デモは、米国民の大半は好意的に思っていないばかりか、批判勢力のほうがはるかに多いとされる。いわゆるサイレント・マジョリティであって、新型コロナ蔓延の原因である中国への反感は一致しているし、トランプ政権の経済優先策を支持している。

そうした米国の反中感情をトランプ大統領は熟知していて、自らが再選を果たす条件は、そうした国民感情を味方につけることが必要と考えているだろう。そのためには、今回ばかりはディールでは済まないと覚悟しているはずだ。

すでに米国は戦時統制下

「新型コロナは戦時下である」として、トランプ政権はいち早く大型の国民支援を打ち出すとともに、FRBはゼロ金利と債券市場に対する無制限の資金供給を打ち出し、経済の落ち込みに楔を打ち込んだ。そして次に、米国企業に対し8月までに、中国から撤退し国内回帰を果たすよう要請をしている。

トランプ大統領は香港に対する優遇処置を解除する法案に署名し、ポンペオ国務長官は国家安全法に賛同した香港のHSBC銀行を名指しで批判、さらにバー司法長官は「中国で事業を展開するために中国政府と「連携している」として、ハリウッドや米テクノロジー企業を非難した。」

ディズニー、アップル、マイクロソフト、グーグル、等は米政権の中国撤退要請を無視しているからだろう。

さらに、ファーウエイ等への締め付けを一段と強化し、経営幹部の米国入国禁止、指定5社(ファーウェイ、ZTE、ハイテラ、ハイクビジョン、ダーファ)への輸出禁止とこれらのハイテク機器を使う企業の米国政府取引の禁止、香港の民主化・チベットウイグルを弾圧する中共幹部への制裁等々矢継ぎ早に打ち出し、さらに続々と追加企業の準備をしている。

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そして現在、約1憶人とされる中国共産党員、そして約3憶人とされるその家族の米国入国禁止、米国退去を検討しているといわれている。

そのうえ、米国海軍は南沙諸島、東シナ海で空母打撃軍3艦隊を終結させ、インド海軍、自衛隊、オーストラリア軍と共同軍事演習に突入する。それに先立ちポンペオ国務長官は、南沙諸島への中国進出を真っ向から批判している。

まさに開戦前夜の様相なのである。

米国は中国に必ず報復する

トランプ大統領が「アメリカ・ファースト」を旗印に大統領選を勝ち抜いたこと、そして現在の米国の新型コロナ蔓延による散々な状況を考えれば、トランプ再選の必要条件は「中国に対する報復」となるだろう。

今、世論調査でトランプ大統領は、民主党バイデン候補に大きくリードされている。そして米国内にはトランプ劣勢との見方が広がり始めている。

こうした流れは、まさに開戦前夜の世論であるといえる。米国民の大半が痴呆症気味で親中のバイデン候補がふさわしいとは思っていないだろう。しかし、メディアを中心にトランプ劣勢の雰囲気が作られてしまっている。

こうなると平和主義者のトランプ大統領もディールでは済まなくなる。

この状況はまさに、トランプ大統領に対する報復実行への催促相場のようなもので、新型コロナで15万人以上の死者をだした米国は、必ず中国に対し厳しい報復行動に出るはずだ。

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日本企業も唯では済まない

日本には伝統的に親中とされる政治家、財界人が多く・・・というよりすでに中国によって国家ぐるみで懐柔されてしまっているという状況だと思う。親中政治家は自民党でさえ多数派で、財界は中国利権に血道をあげ、NHKをはじめとするTVメディアや新聞は、親中、自虐の態度を延々と続けている。

米国のファーウェイ、ZTE排除によって、5G基地局関連、システム関連の受注が大幅に増えるとされるNECは、同時に顔認証技術等で中国監視カメラ企業との繋がりが強い。また韓国サムスンとの5G基地局提携で、サムスンの動向次第では大いに影響を受けかねない。

ファーウェイは半導体を台湾TSMCが供給拒否を決めて、サムスンに触手を伸ばしている。いま、米国からサムスンに供給しないよう強力な圧力がかかっているわけで、供給したならば取引企業としてNECも米国制裁対象企業になる。

またITベンダー国内首位の富士通もまた、中国ハイテク企業との関連もあり、電子決済や富岳で取りざたされ、好業績期待が高まっているが・・・。

中国でIoTを推進しているのは日立で、いうまでもなく経団連と中国の親密な関係の恩恵を十分に享受している。またトヨタの燃料電池技術は軍事転用可能なハイテクとして米国が警戒している。そのために幾度となく米国から中国撤退要請を受けていて、その際に安倍政権は国内回帰コストの6割を負担するという方針まで打ち出した。

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SBGはスプリントを切り離し、そしてアームの売却交渉を進めているが、スプリントはファーウェイ製通信機器を大量導入しているし、アームは中国内製半導体のシステム設計を請け負っている。そして、日本でも子会社で取り扱う顔認証システムは中国のセンスタイム製で、すでに官公庁やイオン等に大量導入済みだ。

センスタイムに関しても米国は輸出禁止リスト、米政府取引禁止リストに8月から指定されるわけで、そうなると2年の猶予期間で事業撤退を余儀なくされ、さらには導入顧客との関連も出てくる。

こうした一連の米国の中国企業制裁の影響を受けるのは、国内法人約800社とされていて、嫌でも米中対立に巻き込まれてゆくのだ。にもかかわらず、国内主要企業には、米中デカップリングの危機感が全くないことは、あり得ないしあってはならぬ事なのだ。

すべては11月3日の大統領選挙で決まる?

中国が最も恐れているのは、トランプ大統領の再選であることは言うまでもない。2期目となるトランプ大統領は、再選されたなら容赦なく中国叩きを実行するのは確実だが、現時点で民主党バイデン候補に大きくリードされている状況、そして新型コロナの米国国内感染が止まらない状況を考えると、大統領選挙前に強力な対中制裁を実行に移す可能性が極めて高いだろう。

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米国の民意は、メディアの反トランプキャンペーンによって、トランプ大統領の再選阻止を公然と行っているし、GAFAもまた反トラスト法の適用が検討されて解体の危機に直面していることで、反トランプに大きく加担していることは間違いない。

またウォール街も、中国企業排斥のための上場廃止がいよいよ現実味を帯びてきて、投資機会を失いことに対する反発が根強い。そもそも、米系企業や投資家の対中投資は日本の約8倍といわれ、容易には撤退できないという事情もある。

なので、国民感情としては反中国で一致しているのだが、米国の大企業や銀行、投資家、などはTVメディアの反トランプキャンペーンに加担していると思われる。つまり、自由主義、資本主義で追及すべきは自己利益ということなのだろう。

しかし、その状況が強まれば強まるほど、トランプ政権の中国制裁を一気に加速し、トランプ大統領は民意を味方にするという戦略をとってくるのではないか?そのために大統領選挙前に米国と中国のデカップリングが決定的になるだけでなく、場合によっては軍事衝突もあり得ない話ではないと考える。

米国民にとって、バイデンという選択肢はあり得ないはずだ。それをメディアが反トランプに誘導しているのは明らかで、それは民意(国民感情)と相反するものであることは明らかなのだが・・・。

いずれにしても、世界は米中デカップリングの影響を止めようがないわけで、そうなるとリーマンショック後の中国経済を中心とした世界経済の在り方は大きく変わることは確実だ。そのデカップリングの中央に日本がこのまま居座ることなどできようはずもない。

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