中東情勢緊迫を改めて織り込もうとする日米マーケット

中東情勢緊迫を改めて織り込もうとする日米マーケット

腰の据わらない株価。こんな1本の何が何だか分からないブルームバーグの記事によって日米欧の株式市場は今夜大きく値を崩している。

日本語版のこの記事の掲載は21:44だけれど、英語版の元記事の掲載は21:36だったから、ほとんどタイムラグなしに日米に掲載されたことになる。

けれども株価は日米市場ともに、数時間前から下落を始めていた。

これで何が起こっているかと言えば、米国債10年金利は4.580p辺りから一気に4.500p割れまで下がり、ドル円は¥153.30辺りからこれまた¥152.650辺りまで来ている。そしてEIAから今年の原油需要予測の下方修正が行われたにもかかわらずWTI原油価格は、日本市場の大引け時の$85.80辺りから$87.20辺りまで上昇している(22:10現在)。

Advertisement

原油には$94~$95辺りに大きなレジストラインが存在していて、とりあえずこのレベルを越えなければレンジ相場の域を出ないけれど、イランの出方によっては紅海のバブエルマンデブ海峡や、ペルシャ湾のホルムズ海峡の完全封鎖という事態や、ヒズボラやフーシ派によるイスラエル直接攻撃も苛烈になる可能性があるわけで、そうなると原油は完全にアウトになりかねない。

そうなってしまうと、レジストラインは呆気なく突破してしまう可能性は十分にあり得る。

日本では、このイスラエルに関する情報は、もっぱらガザ地区の戦闘に終始している。すでにイスラエルはガザ地区のパレスチナ人(民間人)を3万人以上殺害し、なお戦闘は続けているけれど、それ以外にシリア国内のヒズボラやイエメン国内のフーシ派と対峙して戦闘を繰り返しているけれど、それらのイスラム勢力を支援しているのがイランの革命防衛隊だ。

イスラエルがシリアのイラン大使館を爆撃し、イラン革命防衛隊の幹部を7名殺害したということは、イスラエルにしてみればイランとヒズボラの関係を証明したことになるし、少なくともヒズボラはイランの支援で昔も今も活動していることは周知の事実でり、イエメンのフーシ派も同様であって、ヒズボラとフーシ派はイランの代理戦争をしているわけだ。

イランは大使館を攻撃したイスラエルに対し厳しい口調を報復攻撃を宣言しているし、その可能性に言及したのがブルームバーグの今夜の記事ということになる。けれど、この記事の書き方は有力な情報筋による確定的な情報をもとにしているような、そんな書き方、報道の仕方をしているわけで、詳細が書かれていないのが何とも不気味だ。

こうした状況を見ても、ほとんどの人がイランとイスラエルの直接戦争に至ると考える人はまれなのだろう。しかし、今回は今までとは状況が全く違っている。つまりイスラエルのガザ地区攻撃によって、世界の世論は当然イスラエルに批判的であるし、それ以上に現在イスラエル国内ではネタニアフ政権の強硬姿勢を批判する集会やデモが頻発している。ネタニアフ政権は米国政権の一部のユダヤ勢力の支援以外に、世界的にも孤立しつつあるし、国内政情不安を抱えている。いわば追い込まれてると言ってもいい状況であり、そうなるとネタニアフ政権がどんな手段に出るのかが分からなくなってくる。



一方イランは、核開発を継続し現時点では核弾頭の開発が少なくとも試作段階では終わっているだろうと言われていて、実用には起爆装置の実験を残すのみとなっている。が、北朝鮮経由のロシアの核技術、ミサイル技術が導入されていることは間違いなく、軍事的にも極めて強力になっていて、またサウジと国交回復したことでシーア派とスンニ派の垣根を取り除いている。ということはイランの敵対勢力はイスラエルだけとなっていて、周辺国はすでに敵対勢力ではなくなっている。

となるとかつてほどにイスラエルとイランが直接戦禍を交えることへの垣根は高くないと言えるのではないか?

こうなってくると米国の立場は極めて微妙であって、かつてほどに強力にイスラエル支援を打ち出していれば、安易な開戦はないだろうけど、米国のユダヤ系勢力はディープステートの一画を占めるほどに強力であり、バイデン政権内では国務省を筆頭に大きな勢力となっていることを考えると、イスラエルの軍事行動を制御できなくなってくる。

このネガティブなファクターは単純に地政学的リスクと捉えるだけでは済まないはずで、海峡封鎖を懸念する経済的な影響や、分断が進む米国内をますます混乱させる要因になる。まして大統領選挙イヤーの今年に米国がイスラエル支援を明確に打ち出すことなど出来るものではない。

たった数行のこんなブルームバーグの記事で、今夜の米国市場は大幅下落となっていて、リスクオフの債権買いが加速し、ドル円はまるで為替介入が行われたかのような動きになっている。いままで中東情勢を織り込むなどは全くんかった日本株も、日経平均CFDは¥38,930辺りと▲¥600の様相になっている。

予想した通り、この週末は荒れ模様となってきた。マーケットを取り巻くネガティブファクターの一部が鎌首をもたげてきた格好になった。

Advertisement