株式市場の予測はトランプが苦戦必至の米国大統領選挙が鍵
- 2019.07.03
- 海外情勢
いよいよ2020年の米国大統領選挙が、まずは民主党の候補者選びから火蓋が切って落とされました。この大統領選挙は、現時点の日本の報道では、現職のトランプ大統領有利と言われていますが、米国の実態はそれほど甘いものではなく、各州の選挙人投票では民主党が有利な状況に変わりはありません。
となると、現状打破のためにトランプ大統領は、今後次々に政策を打ち出してゆかざるを得ないのです。
予測不可能と言われるトランプ大統領ですが、実は「大統領選挙」を考えると、トランプの政策は合理的に理解できるのです。
なので、米国市場と連動する日本市場を予測するためには、「トランプ大統領の選挙対策」という視点で考えるべきですね。
習近平は大統領選挙まで耐える覚悟!?
G20での米中首脳会談で米国は3500億ドル相当の中国製品に対する関税を保留しました。その条件として米国の農産物の大量購入を要求し、習近平に飲ませています。
「大統領選挙」という視点で考えれば、米国中西部の農業従事者に対するテコ入れをしないわけにはいかないと言うことですね。
今回の米中会談は単純に大統領選挙対策をトランプ大統領がやったということ。
中国経済の危機的な状況、習近平の窮地に全く変化はないわで、習近平は2020年の大統領選挙までは耐える覚悟をしていると思います。
対中制裁はより激しくなる
しかし、米国の対中政策は、共和党よりも民主党のほうがむしろ過激な言動が目立ちます。従って民主党が多数派の下院では、対中制裁に関する法案は無条件です。
そこで問題なのは共和党多数の上院で、さらに過激な法案が次々に可決されていること。米国では議会で成立した法案は大統領の署名で発効しますが、そのことは、米国全体が中国に対して制裁を加えることを支持していることを表します。
共和党の支持層であるネオコンも、さらにいうとユダヤ系の巨大資本も矛先は中国に向いているわけで、トランプ大統領はその流れに逆らうことはできないわけですね。
すでに対中制裁は共和党も民主党も、大統領選挙を戦う条件となってます。
イランとは軍事衝突する気はなし?
7月1日、イランは20%濃縮ウランの生産量が、核合意の制限を超過しました。5月以来2度にわたるタンカー攻撃や、パレスチナ・ガザ地区へのミサイル無差別攻撃、そして米国無人機撃墜と米国の経済制裁に反発してきました。
トランプ大統領は無人機撃墜の報復作戦を発動し、10分前に人道敵見地から中止を命令したと言われていますが、実際には(大統領選挙に対する)メリットが得られないと判断したのだと思われます。
従って現時点では、イランが過激な行動に出ない限り、米国は軍事衝突をしたくないというのが本音ですね。
米朝会談は選挙対策?
G20終了後韓国へ向かったトランプ大統領は、いかにも「突然の行動」という演出で板門店の軍事境界地域へ出向き、金正恩と会談をしました。
この時期に会談することに意味はないと思われますが、これは運よく北朝鮮から核開発停止に関する正式なコメントを引き出せれば、軍事境界線を越えたこととあいまって「ノーベル平和賞」の可能性が高まる、という計算ですね。
共和党と安倍首相が推薦人になっていますから、受賞できれば大統領選挙に貢献することは確実です。
対日政策
現在進行している日米通商交渉も、すべては大統領選挙対策と見るべきです。巻頭画像にあるように、大統領選挙での接戦州対策が、2期目の最大のポイントになります。
日米安保改正を要求?
工業地帯は同時に共和党の支持基盤の一つであるネオコンの御膝元でもあります。従って、日米安保に言及し、日本に対して防衛力を強化することを要求すると言うのは、完全に選挙対策でもあります。
しかし、基本的に米国民の支持を得るには、日米安保の矛盾点を指摘すること、つまり日本を守るために米国兵士は命を賭けて戦い、自衛隊はそれを傍観する、という人道上の矛盾点を表面化させることが効果的ということですね。
もちろん、このトランプ大統領の発言に反証の余地はありませんね。
自動車規制
五大湖周辺の工業地帯は、ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルバニアが接戦州となっていて、ここを制するためには日本車の輸出規制を要求するか、さらなる現地生産の確約をとるかがポイントになっています。
なので、米国の自動車企業に対する要求に妥協の余地はない、と考えておくべきでしょう。
農産物(牛肉・小麦)
都市部は圧倒的に民主党の基盤であって、共和党は内陸部の保守層を基盤とするわけです。そうなれば、農産物交渉はどうしても強硬にならざるを得ません。
だからこそ、中国に大量購入を確約させたわけですが、日本も苦戦することは必至です。
来年はベネズエラに侵攻?
米国の軍事介入を地政学リスクとするならば、最も可能性が高いのは現在内戦状態となっているベネズエラです。恐らくトランプ大統領はベネズエラで現政権を打倒するための軍事行動は躊躇わないと思われます。
その場合は大統領選挙の運命を握るとされているフロリダを有利に展開できる可能性が強くなるからです。そもそも米国にとって他国に対する軍事介入は、時の大統領の集票の手段です。
米国の世論は軍事介入でまとまり易いからですね。
その意味ではトランプ大統領の国境の壁政策も、明らかにメキシコからの越境移民に苦しむアリゾナに対する対策です。アリゾナも接戦州ですね。
最も難しいのは経済運営?
トランプ大統領にとって最も難しいのは、言うまでもなく経済運営です。現在の米国経済がトランプ減税によって好調に推移しているからこそ、米中対立と対中政策ができるわけですが、すでに米国経済は天井を打ち衰退の傾向が否定できなくなっています。
その中で、FRBが明確に政策転換を行って利下げ基調となれば、大統領選挙まで景気は十分に持つと判断しているようです。
しかし、現実の経済や株式市場は、以上のような政策の積み重ねの結果ですから、トランプ大統領にとっても、共和党にとっても、難題であることに変わりはないですね。
政治家は票が命
米国でも日本でも、政治家は票が命。つまりは集票できることをやるというのがすべてのような気がします。
従って日本市場と言えども、海外プレイヤーが7割を占め、米国市場に極めて連動性が高いという特殊事情から、今後の米国大統領選挙が日本株に及ぼす影響は決して小さくはないはずです。
-
前の記事
世界経済の状況を受け入れられない投資家:7月2日(火)後場 2019.07.02
-
次の記事
ETF分配金の換金売り観測も:7月3日(水)前場 2019.07.03