日本のCPIは信用できない!:日米経済政策の窮地

日本のCPIは信用できない!:日米経済政策の窮地

昨日、日銀の植田総裁は、食料品価格の上昇が人々のインフレ期待に影響を及ぼす可能性があるという何とも気楽なコメントを発表した。これから何度か、日銀が計画している利上げの地ならし的な発言をするだろうし、今回もその一環と見て間違いない。

総務相統計局が発表した12月(最新)のCPIは、全国総合指数が前年同月比で3.6%生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)は前年同月比で3.0%の上昇となった。しかし日本のCPIの算出方法は以前から指摘されているように問題だらけであって、これをもとにCPIを評価する日銀や財務省の金融政策は、ミスして当然の状態なんだよ。

日本のCPIの統計上の問題点

1. バスケットの固定性(遅行性)

CPIの算出には「基準年の消費支出構造」をもとにした固定バスケット方式が用いらる。しかし、消費者の嗜好や購買行動は変化するため、実態と乖離してしまう。基準年の更新は5年ごと(直近では2020年基準)ですが、その間の変化を十分に反映できない。

2. 家計の実感との乖離

CPIは「平均的な消費者の支出」をベースにしているため、個々の家庭の実感と一致しにくい。例えば、CPIに占める持ち家の帰属家賃(持ち家の人が支払うと仮定される家賃)の比率が高いため、実際に家賃を支払っている人の感覚とは異なる場合がある。

3. 品質調整(ヘドニック法)の影響

CPIでは、技術進歩による品質向上を価格に反映するために「ヘドニック法(品質調整)」が用いられる。しかし、これにより実際の値上がりが過小評価されてしまう。例えば、パソコンの性能が向上した場合、単価が上がっても「価格が下がった」と評価されることがある。

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4. サービス価格の過小評価

日本では企業が値上げを抑制する傾向があるため、サービス価格の上昇がCPIに十分に反映されにくいと言われている。特に、飲食や理美容などの分野では、価格転嫁が遅れることが多い。

5. 高齢者世帯の消費構造とのズレ

日本の高齢化が進む中で、高齢者世帯の消費パターン(医療・介護・生活必需品の比率が高い)がCPIに十分反映されていない。現役世代向けの消費構造が基準になっているため、高齢者が感じる物価上昇と差が出る。

6. 生鮮食品・エネルギー価格の変動

CPIには「総合CPI」「生鮮食品を除くCPI(コアCPI)」「生鮮食品・エネルギーを除くCPI(コアコアCPI)」の3種類がある。エネルギーや食料品は価格変動が大きいため、コアCPIやコアコアCPIのほうが安定した指標とされるが、実際の家計にとって重要な「食品やエネルギー」の価格変動が十分に考慮されない。

ChatGPTをちょっと叩くとすぐさま、これだけの指摘があるし、これらの内容はまさに現時点で我々が感じている矛盾そのものじゃないか!

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ここから日銀は、インフレが収まらないとみて、日本の金融政策の正常化という回りくどい言い回しで、ちまちまと利上げをしているわけだが、一方こんな状況にもかかわらず、財務省や政治家は減税は絶対にやらず増税ばかりをやろうとするのだから、許しがたい!物価の上昇で可処分所得が減り続けているにもかかわらず、自民党の税制調査会は毎年12月に翌年度の増税を決めている。こいつら経済がどうなろうとCPIがどれだけ上昇しようと毎年増税なんだよ。

そしてそれは財務省の意向通りだというのだから、呆れかえる。政調会長の宮沢というのが、国民民主の所得控除枠上限引き上げ案に真っ向から反対し、やり玉に挙がったけれど、こんな輩が日本の税制を主導するなどと言うことがあっていいはずがない!

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もしも、金融政策を正常化すると日銀がいうのであれば、財政や税制で日本経済をインフレ経済にスムーズに移行する努力をしなければならないはず・・・。なのに日銀は利上げをする、財務省は増税する、政治家は増税の後押しをする、じゃ国民はそうすりゃいいのよ!ってことだろう。

まず総務相統計局はCPIの統計上の問題点を解消し、現実に即した統計処理に変更する必要がある。その上で、現在のインフレ状況がどのようなものなのかを判断し、日銀は政策を決定する必要があるし、利上げが必要と判断すれば、当然利上げをしなきゃいけないけれど、そのための環境作りを財政と税制でやらないと。金利上昇のマイナス部分を財政や税制で埋めないとね。増税なんかとんでもないわけだ。

片や昨夜の米国CPIはインフレの再燃とも思われる大きな上昇となって、FRBは当面利下げの出来る状態ではなくなってきた。トランプ大統領は利下げしろと強い口調で言っているけれど、パウエル議長は動けないだろう。

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この米国12月CPIの上昇は、トランプ政権になると大幅な関税引き上げが行われることや、労働力不足が顕著になるという予想からCPI上昇圧力となったわけだが、これで法人税や所得税の減税を持ち出せば、さらにインフレは加速してしまうし、とても利下げどころではないし、下手をすると本格的なバブルに突入する可能性もある。

政府機関の構造改革や関税の導入で、政府財政を立て直そうとしているトランプ大統領の意図は十分に分かるとしても、この後減税と労働力不足による賃金上昇と金利高止まりが控えていると考えると、インフレはなかなか止まらないよ。米国は米国で、なかなか苦しい状況に陥ってるね。

 

こうしてみると、日米ともに、経済政策のチグハグさが目立つ。それでも日本の利上げと増税のダブルパンチはちょっとあまりにも酷すぎる。そもそも金融政策の正常化と日本経済の正常化は意味が違うからね。