米国経済を通常モードに戻すには？

長らくバブル状態だった米国株が、調整するということ程自然なことはないとは考えないんだね。アイキャッチ画像の米国ダウ長期チャートを見ても、普通だったらこれはそろそろ、と思って当然のはずなんだけど、そう思えない。リーマンショックの後、2008，2009年頃から強烈な金融緩和時代が始まって、この15年間は上昇の傾きが急になるばかり。新型コロナのパンデミックになろうが、どんな事態になろうが、その都度大量の通貨供給によって、バブル相場に回帰してしまう。

これが正しい金融政策、財政政策と言えるのだろうか。この間、ほとんどすべてのアセットクラスがとんでもない上昇となって、米国の投資家は夢の中にいた。じゃ日本はどうなってたか？というと1990年頃はバブル崩壊が始まった頃。丁度この米国株のチャートとは対照的な形をしているわけだけど、その日本株でさえ黒田バズーカによる金融緩和で盛り上がり、バブル高値を更新したのだから。

いつでも株価が上昇する、不動産が上昇するという時は政策的に金融ジャブジャブになってるとき。でもそれは名目値の上昇が莫大な通貨発行によって起こってるだけのこと。あくまでも名目値なのであって、いつかはマーケットは通貨価値が大きく減少しているという事実に向き合わないといけなくなるもの。

不穏な話題だけど、いま水面下では「米国に本当にゴールドの備蓄はあるのか？」という絶対タブーに触れるような話題が出始めた。別に金本位制じゃないのだから意味がない、と思うかもしれないけれど、そうした話題になるということは、一体今の通貨価値の裏付けは何なんだ？と考えて見ると、はっきり言ってそれが見当たらないという結論になってしまうんだ。

それは単純に通貨システムの問題であって、$100出せば$100の商品が買えるという事実そのものが通貨価値なんだ、と言ってやり過ごしているのがなんとなく通貨価値の裏付けに見えているだけ。ある人は国家のもつインフラだ、とか強大な軍事力だ、とかいろいろな意見を言うけれど、インフラも軍事力も過去の投資は毎年焼却されるんだよ。なので、インフラや軍備の蓄積を額面通りの資産とは受け取れないはず。にもかかわらずそれに逆行するかのように通貨の発行量は爆増し続けた。正直インフラ整備も軍備も、今では手の負えないくらい名目上は高額になってしまったんだよ。

だから、米国でも世界中でもインフラ整備は満足に出来ないでいるし、軍拡なんかやってられないという財政状況になっている。もう今の水準では手が出ないんだね。

米国の歴代政権が戦争ばかりやってきたのは、他でもない、軍事力の更新を止められないから。これを止めたら老朽化してゆくばかりの社会インフラと同じように通貨の価値、所謂ドルの価値を担保出来なくなってしまうからかもしれない。

米国民の自動車ローン延滞率がとんでもないことになってる。延滞率にカウントされるのは米国では一般的に60日以上の延滞を指す。これがサブプライム向けで6.1％になり、1994年以来もっとも高い水準になった。同様にクレジットカードの30日以上の延滞率が3.5％（2024年4Q）、住宅ローンは30日以上の延滞が3.74％（2024年11月）となって、現時点ではさらに悪化してるのは間違いないわけで、そうした消費への影響が月曜（17日）の小売売上高で見えるのかどうか、に今後の株価の行方はかかってるわけだ。

さらに言うと、この現状がトランプ関税を受け入れることが出来るのか否か、そのことに株式市場は身構えることになる。

株価の下落が一時的なのか、それとも逆回転してますます需給が悪化し、莫大なシコリとともに下がり続けるのか、それによって今後の展開は全く違うものになる。今の株価の下落が一時的なものになるためには、どこかで今まで以上の金融緩和を導入しないと無理で、それは従来と同じことを繰り返すだけ。トランプ政権が民主党政権と同じようにまたしても金融バブルにするのか否か、それは分からないけれど、もしもそれをしたら、米国はそれこそ亡国への道をひた走ることになる。なぜならその裏付けは連邦債務の増大だからだ。

歴史上、文明が滅ぶ、国家や政権が崩壊する、というのは常に債務の増大が要因でほぼほぼ例外はない。あるとすれば戦勝国になって多額の賠償金や権益を手に入れた場合に限られる。だからこそ一旦始めた戦争は絶対に負けられないのだ。

いずれにしても米国経済には大きな調整が必要だと思う。ドルに適正な？価値水準と判断されるまでは、ドル安になるだろうし、そうならない限り米国経済は維持できなくなってしまうということを、トランプ大統領は誰よりも分かっているのかもしれないね。けれどもこれは相当な劇薬には違いないと思うけど。