今、足元にある二つの強大なリスクについて

今、足元にある二つの強大なリスクについて

イスラエルがイランを攻撃して、イランが報復するという紛争が、今回は大規模だから全面戦争になるんじゃないか?って言う懸念があるけれど、その一方日本株はプラス圏に上昇してるじゃないか!ってね。この動きは米国市場なんかとも異なる動きのように見えるし、良く言われる「遠くの戦争は買い」って言うやつかな。

まぁ、戦火が拡大して、もしかしたら原油が入らなくなるかも、という懸念は出て来ても、大丈夫だろうということで株価は上昇する。それって戦争は需要を生むからだけど、本当にそうなるかどうかは分からない。けど日本市場の場合には資金の逃避先という性格もあるので、今回その傾向が一層強く出たんじゃないかな。

トランプ政権の無茶苦茶な経済政策

トランプの強引な関税政策で揺れに揺れた株式市場だけど、インフレがなかなか収まらないところに持ってきて高関税の影響がやがては物価高として跳ね返ると考えた債券市場は長期・超長期金利が急騰したけどね。そうなると必然的にドル安傾向が強まるという図式。ムーディーズはそのプロセスで米国債(ドル)の格下げをしたけどね。

ドル安は、輸出には有利だけど、輸入するのは困る。そこに高関税を導入しようというのだから、トランプの政策はある意味無茶苦茶なんだよ。そうした出鱈目な政策の推進者がピーター・ナヴァロだったりスコット・ベッセントだったりするから、このブログではこき下ろしてるんだけどね。

またそんな中でトランプ減税をして国民の目を背けるような政策をしようとしてるけど、これから米国民は高関税とドル安のツケを払っていくわけで、恐らく減税ではプラスにならないだろうし、それよりも金利が下がらないと、すでに限界点に達しているからね。

二つの強大なリスク

と言うわけで、今の株式市場にもたらされる情報からして、投資家はリスクをそれほど感じていないのだろうと思われるから日米ともに株価が堅調に戻ってる。遠くの戦争は買い、なんて結構気楽に構えてるし、実際にイスラエルとイラクが全面戦争に突入して原油価格が$100超え、なんてなるとようやく危機感が出て来て株式市場は急落してゆくだろうけど、この程度で収まって原油は大丈夫ってならば、のど元過ぎれば・・・ってやつになる。

でもね、米国市場には二つの大きな落とし穴があるのよ。他にもリスクはいくらでもあるんだろうけど、個人的に非常に心配している二つの落とし穴を言うよ。

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米国不動産バブルの完全崩壊

まず一つは、今となっては全く報道されなくなった米国の商業用不動産の危機的状況だよ。これがもはや回復不可能と断言されるほど酷く、オフィスの入居率は低下する一方で、収益は50%近く落ち込んできてる。米国の不動産査定は商業的価値が重視されるので、そういう意味では商業用不動産の価格下落が止まらなくなってる。NYやLAはもちろんだけど各州の大都市では軒並み価値が半減してるのよ。

そうなると、米国の不動産投資はほぼほぼ全滅したと言ってもいいし、金融機関からの借り入れも高金利状態もあいまってロールオーバー出来なくなり不動産を手放す投資家が激増してるってこと。すでに現時点で好景気の象徴のようだった不動産バブルは崩壊したといってもいいらしいよ。

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理由は簡単で、みんなリモートで仕事しててオフィスに出てこない。だからオフィスは慢性的にガラガラ状態なんだそう。テスラやモルガンなんかはオフィスに出社義務を課してるようだけど、人手不足なので社員はなかなかいうことを聞かない。

なのでオフィス契約を解除する経営者が続出してるわけで、この傾向はもう完全は不可能と言われてる。つまり、華々しく都会のメインストリートを闊歩してたエリート達やタイトスカートにブラウスと言ったキャリアウーマンがもう見られないってことになってきてる。

だからこそブロックストーンやはインズと言った超大手不動産投資家はこぞって日本に大型投資をしてきてるわけ。でもその裏には米国不動産の壊滅的な現実があるんだよ。

なのでこれがさらに悪化すると、米国はまたしても不動産で落ちることになるんだ。不動産って本当にヤバイよね。

莫大なドル建て債の存在

それからもう一つは、ドル建て債務。今まで米国債の大量償還についていろいろ書いてきたけれど、償還やロールオーバーに関する情報が詳細に出てこないので実態が良く把握できないし、とにかくものすごい勢いで短期債の回転が行われているのは事実で、実態はその回転で何とか繋いでいると考えるのが正解かもしれないけれど・・・。2ヵ月、3ヵ月、6カ月、1年と言った短期国債の回転で凌いでいるわけで、だからこそトランプ大統領は執拗にFRBに利下げを迫ってるんだよ。今の金利水準では債務が膨らむばかりなのでね。

でも、こうした金融調達の動きは有る程度公表されていて、ある程度は金利の影響を計算することも出来るんだけど、これとは比較にならない膨大な債務が世界中に存在する。それがドル建て債と言うわけだよ。

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米国連邦債務は約5600兆円と言われていて、これはもう制御不能とまで評されているけれど、ドル建て債に目をやれば、もちろんはるかに比較にならないほどの天文学的な金額になる。そんなのは推定でしか分からないんだろうけど、OECDでは1京5000兆円と発表しているけれど実際は2京円は存在すると言われてる・・・。

はっきり言って通常景気後退局面になれば、中銀は利下げをするけれど、今回の米国のように、トランプ政権が高関税やら減税をやらかして、なおかつ中東有事でエネ価格が急騰となると、長期金利上昇の要因満載と言うことに成り、FRBは利下げなど金輪際できなくなってしまう。

その莫大なドル建て債のベンチマークとなる金利こそが、米国債10年金利と言うことになるわけで、これがこのブログで常々書いている米国債10年金利の重要性なんだよね。

はっきり言うとこれが5.000pを超えるようなことになったら、明確な基準なんか分からないけれど、恐らく5.000pがボーダーなのは明らか。なぜならば今米国政府もFRBも10年債金利の上限を4.500p辺りで設定していて、それを越えてくると買い支えて押し戻してるから。

けれども今回のようにイスラエルがイランを大規模攻撃してイランが報復し、これが全面戦争に発展してその結果エネ価格が暴騰してしまったらどうなるか・・・。

考えただけでも恐ろしいよ。

遠くの戦争は買いなのか!?

ただ単純に遠くの戦争は買い、などと言ってる場合じゃないと思うんだよ。もっと真剣に今のリスクを考えるべきじゃないかって気がしてるけどね。

また不動産バブルの崩壊が危機の連鎖のトリガーになる可能性もあるし、8月の債務上限問題はいつもと事情が全く異なるし・・・。株高祭りに踊ってる場合じゃないと思うけど。