米国大統領選挙と10月中旬の株式市場動向
- 2020.10.10
- 海外情勢
酷い一夜だった・・・。そしてまたしてもトランプの心変わりに翻弄された。
今、トランプ大統領はまともな精神状態でないのではないか?という観測記事まで出る始末。新たに選任した選対本部長までが新型コロナに感染し、選挙戦はまさに危機的状況。それでなくても大統領選挙も終盤となったところで、自身が新型コロナに感染してしまって、劣勢を跳ね返すどころか、何をやっても支持率は低下するばかり。そしてとうとうリモートの第二回TV討論を拒否してしまった。
現時点で、米国市場の争点となっているのは追加景気対策。当初民主党はなんと350兆円の追加をブチ上げて、できるだけ予算規模を抑えたい政権側の提示する150兆円規模であって、両者の隔たりは尋常ではなかった。
民主党にしてみれば、なんとしても選挙に勝ちたいということで、無謀ともいえる予算規模をブチ上げたわけだが、まずインフラ整備やオバマケアの充実といった事業をこなすのは非常に厳しいし、個人向けの1200ドル配布や中小企業対策は即効性はあるものの、大統領選挙のドタバタで支持票集めに使われることは必至。
いずれにしても、共和党、民主党ともに、追加対策を自陣の選挙を優位にするための手段として使う気満々ということだ。
そうなってくると決まるものも決まらなくなってくる。
そしてなんと、昨夜はペロシ下院議長が柔軟な姿勢を示す発言をしたし、クドローNEC委員長はトランプ大統領は妥協案を受けいれる、と言った適当な発言で相場にチャチャをいれた。これで株式市場の期待感が高まりつつあったところで、肝心のトランプ大統領が「民主党案を上回る規模を望む」と発言して、従来の態度を一変させてしまった。
つまりこうした応酬は、トランプ大統領も民主党も選挙前の妥結は「やる気なし、無理」という前提にたって、どういう言い回しをしたら選挙を有利に進められるか、ということだけで、国民感情や、株式市場を翻弄しているだけに過ぎない。
トランプ大統領は、感染した自身の新型コロナに対して短期間で治療・退院を終えホワイトハウスに戻った。本人は健在ぶりを示し失った支持率を回復したいということかもしれないが、感染はホワイトハウスや政権関係者に及び、すでに30人を超えていてこれをメディアは徹底的に攻撃している。
収支報告、資産報告を一向に公開しないトランプ大統領の態度には、嘘があるとあからさまに攻撃し、偏った支持率調査で世論を誘導しようとし、米国の雰囲気を変えようと懸命になっている。
選挙戦の最中、民主党候補のバイデンはただひたすらに傍観者のような態度で、自宅の地下室の特設スタジオからのリモート配信を時々行うだけ。自らの支持率アップを狙うのではなく、トランプ大統領の不支持アップを待っているだけだ。冷静に考えると、そんな人物を、しかも高齢な人物を大統領に選んでいいはずがないのだが、メディアによって米国民の冷静さは失われつつある。
そうした中で、株式市場は民主党の追加景気対策予算の大きさに期待し、バイデン有利とされる11月3日に向かって上値追いを続けている。だが、仮に政権交代となれば、米国では行政機構の人事も一新することになり、予算の執行は大幅に遅れる。少なくとも年内に執行を開始するには大統領選挙前に妥結し、その後何のトラブルもなく議会を招集できることが必要だが、上院の半数改選もある。
したがって追加景気対策期待とは、バイデンが勝利し、上院で民主党が過半数を奪還することを期待しているのだと思う。もちろんバイデンはトランプに大差をつけて勝利する必要があり、僅差では完全に法廷闘争に持ち込まれるから長引く・・・。
世界中、冬に向かって新型コロナの感染拡大が再加速し始めた。連日で世界の感染者数は最高となり、米国内の感染者数も増加に転じている。このまま、政治的な泥試合を少なくとも11月3日まで続けなければならない米国では、またぞろ新型コロナに足元をすくわれかねない。確かにトランプ政権は新型コロナ対策に対するアクセスが不足しているし、感染者数が増えれば増えるほどトランプ大統領は不利になる。
状況を考えると、明らかにバイデン有利なのだと思う。株式市場はすでにバイデン大統領、民主党勝利を織り込もうとしているのかもしれない。一方、FRBのパウエル議長は、「FRBはできる限りのことをした。あとは政治の問題」といち早く傍観者を決め込んだ。財政出動をしない限り景気は戻らないとなんどとなく発言している。
なので、株式市場はこの混沌とした政治状況を織り込みながら、ひたすら民主党勝利、バイデン勝利を期待して、推移していると言える。すでに新型コロナ以前の水準を奪還し、来年にはワクチンと追加景気対策で経済は完全に回復可能というシナリオ・・・。その場合、予算規模の大きな民主党の方がベターという、恐ろしく単純な理屈で動いている。
こうした事情があるからこそ、トランプ大統領は、突如として「民主党提案以上の追加景気対策」と言い出した。民主党案も妥協して230~250兆円規模になったところで、昨夜政権は180兆円の妥協案を提示すると報道されたが・・・。
トランプ大統領は感染中とはいえ、意外に冷静に状況を分析していると思う。ギリギリまでペロシ下院議長の妥協を引き出したところで、土壇場で予算規模を拡大するという戦術に出たと見る。民主党はこのトランプ大統領の心変わりを覆すことはできない状況だ。
こうして、新型コロナの世界的拡大を尻目に、またNYでの再度の感染拡大を注視しつつも、ひたすらに泥試合を繰り返しているのが米国の政治事情と言える。現時点でのほぼ確定的な選挙人獲得数は、共和党が120前後、民主党が220前後だが、スイングステートの選挙人数はまだ200弱残っている。この選挙人をめぐって残り約3週間の虚々実々の駆け引きが繰り返されるわけで、大統領選挙の行方はまだわからない。
同時に10月中旬の株式市場は未曾有の財政出動と3Q決算を前にして、高値水準で揉み合いとならざるを得ない状況だと思う。
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