消費税増税に日本国民が反対しない決定的な理由って?
- 2019.05.28
- 放言
2019年秋、安倍内閣が消費税増税を断行したら日本経済は委縮し、国力は衰退の一途を辿ることは間違いないと思います。
それは良識ある経済学者や評論家の多く(少数派)は主張していることですが、主流派経済学者や政治家、財務省官僚の増税の動きを止めることができません。
消費税は経済活性化にとって「消費に一律に課税すると言う欧州(フランス)起源の天下の悪法」なのですが、政府・財務省はこれを強力に推進してきました。
その結果日本のGDPはドル建て比較すると、1980以来成長率は「ほぼゼロ」という恐ろしい事態に陥っています。
にもかかわらず、日本国民は消費税増税に反対しないのですね。
まさに不思議の国、日本ですが、その理由を考えていました。
財務省の言い分
財務省のWEBのなかに「消費税引き上げの理由」と題されたページがあります。QA形式のこのページには、財務省が国民を納得させるための言い分が記載されていますが、その内容が笑止千万なわけです。
なぜ所得税や法人税ではなく、消費税の引き上げを行うのですが?
今後、少子高齢化により、現役世代が急なスピードで減っていく一方で、高齢者は増えていきます。社会保険料など、現役世代の負担が既に年々高まりつつある中で、社会保障財源のために所得税や法人税の引上げを行えば、一層現役世代に負担が集中することとなります。特定の者に負担が集中せず、高齢者を含めて国民全体で広く負担する消費税が、高齢化社会における社会保障の財源にふさわしいと考えられます。
この財務省の主張はすでに「増税を前提」にしているわけです。つまり「なぜ増税をするのですか?」という国民の疑問には一切答えずにまずは増税ありきの姿勢です。
その理由が、高齢者が増加するために社会保障費用が増える。その負担が現役世代に集中するのを防ぐと言っているのです。
それを言われた国民は、「それじゃ仕方ない」と納得してしまっているのですね。しかし、国民だけでなく政治家もこの財務省の言い分に異を唱える人はごく少数派であるという現実があります。
そして根拠となるグラフを掲載しているのですが、これがまた凄い説明があるのです。
また、ここ10年くらいで見ると、所得税や法人税の税収は不景気のときに減少していますが、消費税は毎年10兆円程度(注)の税収が続いており、税収が経済動向に左右されにくく安定した税と言えます。
これは凄い説明で、「景気後退時でも税収が落ちないから安心ですよ」と国民を説得しているわけです。すると国民は「将来に向かって不可欠」と考えてしまうのでしょうね。
経済無視の財務省
財務省は増税が消費や内需に及ぼす影響を国民には絶対に説明しません。
増税すれば消費が減り、その結果シャッター商店街が増え、地方が貧困化し、国民全体の実質賃金や可処分所得が大幅に減り、その結果として景気が落ち込んで税収が減ってしまいます、とは口が裂けても言いません。
残念ですが国会議員や地方議員も、経済に関する認識レベルが余りにも低すぎてこのごく当たり前のことすら理解できていないわけです。
ですから、財務省としては、この程度の説明で十分に増税出来るとしているのです。
日本国民が消費税に反対しない理由
こうした状況を考えると、財務省としては後は簡単なのですね。
国民に対しては「高齢化社会」に対する危機感を植え付けるだけでいいのです。それをメディアや政治家を使って広く国民に訴えると、自然の増税機運が高まるわけですね。財務省の高給・高級・高学歴官僚たちは、簡単ですとほくそ笑んでいるのでしょうね。日本を支配しているのは我々だ、などと奢っているかもしれません。
地上波TVメディア・新聞を総動員
日本のTVメディアや新聞は、記事ネタの供給元である中央官庁に対し、意向に沿った記事を書き、番組を制作します。まるで戦時下の大本営発表さながらの情報統制状態を記者クラブを通じて行っているようなものです。
しかし、現在では報道する側の姿勢に大いに問題があるわけです。新聞は消費税増税で特例措置を受けたい、TVは少しでも有利な情報を獲得したい、という利害優勢の姿勢に陥ってしまっています。
もちろん、財務省の情報は大ネタなので、基本的に意向には逆らうことはないし、その結果広く国民に「消費税増税は必要なのだ」という意識が形成されているわけです。
政治家の選挙公約
一方政治家はどうか?というと、財務省の狙いは「選挙公約」です。国会議員や地方議員にかかわらず、多くの勉強不足の政治家は、必ず選挙公約に「社会保障の充実」や「少子高齢化社会対策」を織り込みます。これはもう選挙の雛型で、どんなに低レベルの候補者であっても、言える公約なのです。
その結果めでたく当選し議員になれば、次の選挙を見据えた議員活動をします。議員は自らの選挙公約をこれだけ実現しました、と披露して支持者を納得させなければなりません。
ですから、すでにTVや新聞で「高齢化社会の歪」のような番組を見せられて危機感を持った国民に対して、政治家が一斉に「社会保障の充実」を訴えると国民の意識はほぼ醸成されます。
財務省は政治家に対し、「先生、財源はどうしましょう?」と迫る。これで政治家は何の反論も出来なくなります。
日本の人口構成
上記は日本の2015年人口構成となります。これを見ていると財務省の言い分がいかに「的を得た戦略」であるかが分かります。
団塊の世代と呼ばれる戦後の第一次ベビーブーム(1947-1949)世代が、65歳ー68歳(現在2019年では70歳前後)に集中し、その子供たち(団塊ジュニア)世代は現在では45歳前後の社会の中核を担う年齢になっています。
つまり、団塊の世代の高齢化を支えるのは、団塊ジュニア世代であることは、当たり前のことなのです。しかし問題は、団塊ジュニア世代を本来支えるはずの20歳前後若者が少子化によって極端に少ないことなのです。
20歳と言えば、財務省が消費に対して課税するという消費税を段階的に引き上げた今日に至るまでの期間なのですが、そのことを財務省も政治家も一切顧みようとはしないのです。反省の意識ゼロ、どころか問題意識さえありません。
にもかかわらず、いま、財務省や政治家は、この人口構成比を逆手にとって国民の危機感を煽り、消費税のさらなる増税を迫っているわけです。
日本人気質
「お上の言うことに逆らわない」「苦しくても耐える」という気質が日本人独特のものとは考えたくないですが、日本人の意識にはそうした「耐えることの美徳」のようなものがあるのかもしれません。
「苦しくても我慢すれば道が開ける」という結論が社会のなかで美化されているわけですが、これは政治家や官僚にとってはまことに都合がいい風潮ではないでしょうか。
なので、日本人は苦しいことでも、基本的に受け入れて我慢するのでしょう。その結果、30年間も経済成長ゼロという世界でも唯一の貧困化国家になってしまいました。
しかし、それでも生活できるのだから、と言って我慢するのが日本人気質なのでしょうか。
実際大多数の日本人の生活レベルは、先進国と比較しても驚くほど低下してしまっているのですが、「おもてなしの国」というメディアの宣伝で、「外国人をもてなすことは美徳」とされました。しかし、世界的にみて、もてなしを受ける側が経済的に優位に立っているわけです。そのことに日本人は気が付きません。
安倍首相が消費税増税でも日本国民は反対しません
安倍内閣によって消費税増税が実行されたら、消費は落ち込み、景気が悪化し、結果的に現役世代の負担はますます増加して、さらには少子化に拍車がかかるのは火を見るよりも明らかです。
しかし、多くの日本国民はそう考えてはいないわけです。来る高齢化社会において社会保障を維持するためにどうしても必要であると思っています。人生100年時代を迎えて、消費税増税は待ったなし!と政治家は叫んでいますが、このような状況では日本人は反対することはないのでしょう。
しかし、国家が衰退するときには、こうした状況に陥るものです。
太平洋戦争でさえ、「欲しがりません、勝つまでは」という風潮で国民が反対していませんでした。その結果、敗戦となって「戦争を悔いている」わけです。
これが歴史なのかと思うと、やるせない気分になってきます。
まとめ
それでも、個人的には消費税増税に断固反対します。多少なりとも経済を学んだ身として、また株式投資を生業とする身として、良心に従って悪政に反対しないわけにはいかないのです。
-
前の記事
僅かにセンチメントが改善か?:5月27日(月)後場 2019.05.27
-
次の記事
日米同盟の安心感が市場に?:5月28日(火)前場 2019.05.28