ズバリ!中国リスク
- 2021.08.05
- 世界情勢
先週は結構中国リスクについて書いたけど、じゃ一体中国リスクの本質は何なのか?ってことになるけれどね、それはずばり政治リスクってことなんだと思うわけだ。だから欧米や日本のように自由主義市場がそこにあって、または自由に企業間取引が行えて、という感覚は明らかに間違えであって、中国信仰じゃないけれど中国好きな日本企業なんかヤマほどあるわけで、そうした企業の方針は明らかに(現実と)ミスマッチだということを気付かないとヤバイことになるだろうね。
中国依存の日本企業
そもそも日本企業は中国依存度が高すぎる。で、その要因は言うまでもなく、国内市場が少子高齢化とデフレで拡大が望めないということで、安易に目の前にある大きな市場に飛びついた結果ともいえるし、企業がグローバル化を志向すれば必然的に中国のウエイトを高めるのが手っ取り早いと考えた。
けれど中国で商売するには、中国向けに輸出するか、現地法人を設立して地産地消とするかのいずれかになる。だが前者の場合は流通という大きな壁があって、後者は共産党支部の併設を含めた出資比率の問題もあって利益を自由にできないという壁がある。
でも日系企業はこと中国に関しては、まるで国内の事業のように一律で決算発表をするから、投資家には何がどうなってるのかさっぱり分からないんだよね。そこが個別株式投資をするうえで大きなネックになるし、中国リスクを意識すれば額面通りには受け取れない怖さもある。
だから、俺の場合は株式投資をするうえで、やはり中国比率(中国依存度)の高い企業の「買い」はほとんど考えたことがなくて、勝負するなら「売り」で、と思ってる。先月くらいに2021年3月時点で中国での売り上げ比率の高い企業ランキングが発表されていたけれど、これ見るとTDKと村田製作所はもう異常領域に突入いているねぇ。とにかくどの企業も経営者が中国信仰を捨てられない、旧態依然の経営体質、経営マインドだということかもしれないね。
リスク、リスク、と騒ぐけど、そんなに恐れることはない、みたいな感じなのかも。でも、ここにはランキングされていないけれど、絶対に忘れてはならないのがSBGであることは言うまでもないし、楽天も財務が苦しくてテンセントとか中国系の資本でもなんでも受け入れるみたいな企業もちょっと問題ありかもしれない。
中国リスクは政治リスク
習近平は自らの権力基盤を盤石なものとするには、政治的には毛沢東の後継者という印象を(国民や共産党員に対して)与えること、そして自らの権力基盤を経済よりも軍(人民解放軍)の掌握によって確立しようとしていること、さらには旧勢力の経済基盤を政治的圧力によって自らが掌握することが必要と考えて、共産党100周年記念式典で毛沢東同様の人民服姿で演説を行った。
そう、習近平は毛沢東のような権力集中を完全に目論んでるわけだ。となると、毛沢東は国内の経済がどうの、などと言うことは一切考えていなかったし、意味不明の農業政策で数多の国民を餓死に追いやった人物。そして文化大革命では、中国の文化そのものを否定し、密告社会を作り上げ、反体制分子は容赦なく処刑した。
共産党の独裁者と言うのは、スターリンもポルポトも毛沢東もみな同じ方向に舵を切る、というかそれしか統治の仕様がないのかもね。そんな極めて危険な領域に習近平は入り込みつつある、というのは疑いの余地がない。なので、正直経済がどうの、と言うことをほとんど問題にはしないだろうし、するとすれば自らの地盤として事業を集中するだろう。
しかし今の中国経済の中心をなす大企業はすべて周恩来由来の浙江財閥系資本によってつくられたものであり、習近平なにするものぞ!という雰囲気がある。そもそも周恩来は毛沢東と表面上は対立していたわけではないが、文化大革命等々圧政を止めなかった裏で、圧政に対し不満を持つ共産党を掌握して、経済基盤を作ることに専念した。それによって形成された浙江財閥系は次々に企業を作り出し、ファーウェイ、鴻海(台湾)、TSMC(台湾)、アリババ、テンセント、と言った巨大企業化に成功するとともに、AMDやエヌヴィディアと言った親族企業をも含めると、世界のハイテクの今回を占めるまでに至っている。
そしてその勢力は当然のことながら日本にも及び、シャープの買収劇を画策した郭台銘、パナソニックの半導体事業引き受けた焦る焦佑鈞、そしてソフトバンクの資金的なバックとしてまたアリババのスポンサーとしての蔡崇信など、浙江財閥系の有名企業家によって傘下の企業を通じて触手を伸ばしている。
だが習近平は、着々と浙江財閥系企業に対する規制を通じて、その経済力を自陣営に取り込もうと強権を発動し始めている・・・というのが、中国リスクそのものであって、すでにアリババのジャック・マーは経営トップを追われ公に姿を現すことは無くなったし、SBGの孫会長も滴滴(DIDI)で大きな損失を負わされ、他の投資案件にも規制が入り窮地に陥っている。また半導体のTSMCやアップル最大のOEM先である鴻海(FOXCON)をめぐる米中対立の行方は、今後の無視できないリスクであることは間違いない。
結局のところ、中国リスクは政治リスクであるけれども、それだけに従来の投資感覚では全く理解できないものかもしれない。
不動産バブル潰し
習近平は昨年から不動産取引規制を導入し、金融機関には不動産向けの融資規制を実施している。そして今年になって、不動産取得資格を当局が証明書を発行するという売買規制を大都市圏で導入し始めた。しかし表面上は、不動産バブルがヤバイという雰囲気は・・・、前々から言われ続けてるにもかかわらず、大丈夫なのだから、今度も大丈夫という楽観が打ち消してる。
日本でも第二次安倍政権で、インバウンド需要、オモテナシ、等々いろいろ外国人観光客の訪日を奨励していた際に、中国人観光客は銀座や免税店で(日本人の感覚では理解不能な)爆買いをやらかして大騒ぎだったけれども、その裏にはほぼすべて、不動産バブルがあったわけだ。
日本のバブル時でも不動産は、非常に魅力的に映ったわけだ。不動産神話とか言い持って不動産投資で莫大な財産を築くという神話だけども、エスカレートすると金額は関係なくなってくる。それが所謂不動産バブルってことだけど、中国ではそれが足掛け15年も続いちゃってる・・・。なので、不動産を取得すれば大金持ちになった気分になって、大判振る舞いしてたのが、日本での爆買い現象だったわけだよ。
しかし先日習近平は、中国人の海外渡航をなんと95%も制限する、といきなり言い出した。同時に米国は中国人留学生のビザを発給停止した。また習近平は仮想通貨規制を徹底的に導入して、マイニングさえも制限し始めてる。その裏には、中国の不動産バブルによる資金の海外流出を止めるという意図があるのは明らかだろう。
金融機関は融資を止めて、理財商品も壊滅的な状況で、資金流出が続けば流石に国内は混乱する。そういうことをするのが共産党員だったりするから習近平にとっては始末が悪いんだろう。
こんな状況にも関わらず、中国経済は成長するから中国投資は大丈夫、といってるレイ・ダリオなんか本当にとぼけてると思うよ。いま、米系資本は中国からのキャピタルフライトに必死になってるってのにね。
不動産も半導体も非常にヤバイ
中国で最大の不動産開発ディベは恒大集団だけども、この企業はもう完全に死に体と化している。習近平はここを潰そうとしているのは明らかで、手形発行残高が数兆円あるということだから負債総額は恐らく200兆円を超えるだろうと言われてる。もちろん、ここ数年ありとあらゆる手段を通じて資金を集め捲ってたわけだが、日本だってここの外貨建て社債なんかを証券が売ってたりしたけどね。
ドル建てでも数兆円集めたと言われてるし、金融機関の融資も追い貸しの繰り返しでかなりヤバい状況になってるわけで、あのバカみたいなゴーストタウンと化したマンション群を見れば、だれだって終わってることは分かるはず・・・。これが、大きなデフォルトを出したら、アルケゴスどころの騒ぎではないしね。
そしていま絶好調の半導体企業・・・と言えば台湾のTSMCだけど、浙江財閥系の流れでは米国のAMDもエヌヴィディアも含まれるけれど、とにかく気が付くと半導体は半分以上中国系で独占されているわけだよ。要するに中国と米国の台湾を舞台にした綱引きは、すべて半導体の主導権争いということだよね。
そんななか中国では大手の半導体企業が資金不足から次々に倒産、解体に追い込まれてる。こうした状況と今の半導体不足の因果関係がないはずもないし、なかなか情報が出てこないので、詳細は分からないけれど、危ないニオイが俺にはプンプンするんだよね。
油断大敵
習近平の政治志向はここにきて、毛沢東継承路線になった!?というわけではなくて権力の集中とか共産党での地位を継承するということで、政策をまねるわけではないだろうけど、共産党内で権力集中となると、考えられないような強権を発動する必要があるわけで・・・。
毛沢東は数々を悪政を敷くことで、権力を集中したと言われてる。みんな疲弊して最後は忠誠を誓うしかなかったというわけで、今の中国は鄧小平の毛沢東否定と浙江財閥の路線が噛み合った結果生まれてるわけで・・・。
これを巻き戻そうというのが習近平なのだから・・・。
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