金融政策の転換点に過敏に反応する株式市場
- 2021.08.19
- 世界情勢
今夜の米国市場はDOMC議事録を経て急落、もちろん日経平均CFDも同調して急落モードで昨日の上昇分を打ち消す動きになってる。この7月FOMC議事録だけど・・・、ほぼ全員一致で年内テーパリング開始という内容にはなっていたけれど、反面金融リスクが上昇している、デルタ株感染拡大の景気への懸念、という意見もあって、7月の段階では条件が揃っていないという見方も示した。
米国市場模様
けれども株式市場は、年内テーパリング開始を織り込むような動きになってきて、AIが即反応するという感じで急落。テーパリングは始めるけれどもリスクも増大してるというダブルの悪条件では、下落するのもまったく無理はないということだろうね。
しかし、これで米国株式市場の天井感はますます広がったのは間違いないと思うし、金融相場なので実体経済よりも反応しやすい地合いであることは間違いないから、ここから下値を模索する動きになるであろうことは、ほぼ決定的になったということだろうね。
考えてみれば、FRBパウエル議長は株式市場や債券市場の過熱感を警戒して、トランプ時代に利上げを敢行したけれど、ほぼ同時に米中貿易戦争がエスカレートしてきて、トランプ大統領から叱責され嫌々金利引き下げに踏み切ったという経緯があった。その結果、リスク市場は米中対立にもかかわらず、暴落を回避したわけだが、今回は来年2月でFRB議長職の任期切れであること、アフガニスタンでの敗北、26日の新型コロナウイルスの起源調査報告、ジャクソンホール会議、とイベントが目白押しとなっているわけで、なかなか厳しい一夜になったという事だろうね。
正直、金融リスクを指摘しつつテーパリングをするという内容は、かなり物議を醸すだろうと思うけれど、8月の雇用統計が良好であることを考えると、この路線はほぼ決定かもしれないし、時期は11月のFOMCで発表されるかもしくは11月から即日開始するかのどちらかになると思われる。
大暴落の可能性はある?
今回、アフガニスタンでタリバンが予想外のスピードで政権を奪還する動きになったことは、米国人にとっては少なからずショックだったと思う。とにかく2000年代に入ってから米国は湾岸戦争、9.11同時多発テロやその報復戦としてのアフガン戦争、そしてイラク戦争とイスラム圏へ介入し続けたわけだが、特にビン・ラディンを暗殺した2011年以降もビンラディンを匿ったタリバンに対する戦闘を継続した。足掛け20年にも及ぶ米国市場最も長期の戦争に負けたという意味は、決して小さくはないだろう。
そしていま世界中にばら撒かれた新型コロナという災いに対して、中国とどう向き合うかという決断が問われる時が来る。FOMC議事録で株式市場が揺れた。FRBは金融政策の転換を示唆したわけで、年内テーパリングは既定路線になった。リーマンショック以来2度目の金融政策転換期が来たということかもしれない。
その上、新型コロナデルタ株、ラムダ株という変異種の感染拡大が続いていて、景気の先行きが大いに懸念される状況や中国の規制強化によるIT企業、ネット企業への締め付けも改めてその悪影響を考えざるを得ない状況にある。
ポジティブな要因を探すのは非常に困難で、気が付くと周囲をネガティブファクターが取り囲んでいるという状況、そしてインフレが消費を圧迫しつつある状況を考慮すると、ネガティブになった投資家が思い描くイメージは、不況下の物価上昇という最悪の事態かもしれない。となると、この秋の一時的な急落は避けようがないと思う。そして、それでもFRBがテーパリングを断行せざるを得ない状況に追い込まれるとすれば、株価下落は本番を迎える可能性が濃厚になってくる。
金融ジャブジャブ経済の限界か!?
現在の世界経済は、リーマンショック以降の金融緩和、そして新型コロナ禍による未曾有の金融緩和と財政出動で、世界景気はコロナ以前を取り戻し、さらにオーバラン状態にある。このようなことが可能になったのは、世界の中銀が歩調を合わせてバランスを保ちながら未曾有の資金供給を行ったからだ。
つまり、現在の金融ジャブジャブ経済は、バランスが命だということだが、その天秤の片方の主役である中国の動向が非常に怪しくなってきた。(公称では)世界第二位の経済大国である中国経済はいま膨大な債務に押しつぶされようとしている。この春からいくつもの半導体企業が倒産し、不動産最大手の恒大集団は数百兆円(600兆円以上!?)の債務が破裂する寸前である。そして政策的にはアリババやテンセント、ディーディーといった浙江財閥系のIT・ネット企業に対する締め付けを行っていて株価は下がる一方である。世界経済の主役である中国で、政治的な異変が起きているといってもいいわけで、そうなると世界経済のバランスが崩れる方向へと進む。
そこに新型コロナ起源が武漢ウイルス研究所であると世界が認定してしまうと、世界中から莫大な賠償請求が突き付けられることになる。現時点でもすでにインドやいくつかの国は賠償請求を行っていて、欧州も状況次第では一斉に賠償請求に動く準備を整えている。その試金石が米国のバイデン大統領がCIAに命令した新型コロナウイルスの起源調査報告であり、来年早々に開催される冬季北京五輪へのボイコット問題であったはずだが・・・。
ウォール街もまた中国系企業の株価暴落が止まらない状況になりつつあり、さらに中国投資に失敗したヘッジファンドや金融機関などの損失が、年末決算では計上されるはずで、混乱は避けられないと思う。
となると、未曾有の金融緩和が、中国はもちろん米国でも完全に仇になる可能性が否定できなくなってきた。
日本株は激安だが・・・
一夜にして地合いが一変することは、株式市場では良くあることかもしれないけれど、こうなってくると、日本市場の寄り付きも相当に厳しくなってきた。すでにCFDでは▲¥200以上下落し、日経平均¥27,300台に突入しているけれど、状況を考えると¥27,000割れは時間の問題のような気がしてきた。
こういう時には真っ先に「デルタ株の感染急拡大が・・・」と説明されそうだが、その根底にあるのは、世界経済の巻き戻しリスクだったということだろう。
昨日の時点では、夜の米国市場を見ればある程度推測できるかもしれないということで、注目していたわけだが、案の定厳しい下げになって戻ってきたわけだ。これで、日本株が売られていた原因は、海外勢のヘッジ的な先行売りがでていたこと、信用期日を迎えて需給が悪化していたこと、5倍前後という高い信用倍率と個人投資家の高い評価損があること、などなど需給要因が極めて悪化していたことも要因だったということだ。
米国の景気懸念、金融政策転換懸念が目前にあり、加えて政局がらみ選挙がらみで先行不透明であることから先行して日本株でヘッジしていたということだろう。
そうなれば、バリューエーションは蚊帳の外に置かれる。なので割安であるから買うという投資手法は、通用しなくなる。そして、需給面だけでなく売られる本質は、米国経済の先行き懸念へのヘッジだったということかもしれない。
ここから先、日米株式市場の大きな変化に要注意であるとともに、買持は極めてリスクが高いと改めて書いて置かねばならないと感じた。
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