株式市場の岸田ショックは本物!?
- 2021.10.09
- 放言
結局のことろ、自由民主党という政党には経済に対する大局観を持っている政治家がほとんどいないということが分かった総裁選、そして首班指名。またしても、日本は世界のなかで復活する絶好の機会を逃したとはっきり言えると思う。日本経済が長い間デフレで、国民生活は全く豊かにならず、高度成長期の働き盛りで現在リタイヤ組だけが、生活に不安を感じることなく老後を謳歌しているだけで、若い世代や働き盛りの世代は、本当にカスカスの生活を余儀なくされてる。そうした日本社会はやはりどう考えても政治責任以外の何物でもないと今回改めて確信した次第。
何故、いつまでも決まったことをグズグズ書くのか、というとそれはこれから来る、とんでもない事態のなかで、岸田内閣では自体を火に油を注ぐかのように悪化させる一方だと分かるからだ。20年も30年もデフレで喘いだ日本経済だけど、いよいよデフレも最終局面に至るときがくると思う。これからますます社会生活は苦しくなると思うし、日本人はそれを覚悟すべきだ。
金融所得課税増税は無能の証
岸田氏は総裁選から金融所得課税増税をほのめかしていたけれど、総裁就任後直ちに法制化への検討を指示した。理由は自信の所得再分配政策への批判をかわすために、私は財源を常に考慮しています、と主張したいがために目先の金融所得課税増税を持ち出したに過ぎない。何とも不純極まりない動機と金融市場への無知。
ただし、岸田首相は、経済に無知であるが故に、財務省系列で固められたブレーン達の言うことを素直に聞くしかない。今の時代、経済に無知な国家リーダーを擁することくらい悲劇なことはないわけで、何よりそういう無能なリーダーが意味不明の看板(岸田の場合は新・資本主義)を掲げて行う政策ほど怖いものはない。
自民党岸田派の衆議院議員に山本幸三と言うのがいる。これが先日ブルームバーグに対して「首相の掲げる格差是正の象徴だ」といって金融所得課税の25%への引き上げは全く問題ないと答え、海外投資家の嘲笑をかった。さらに「これまでの実証研究では株式市場を害さない税率は25%だ」と意味不明の主張を堂々とやってのけ、此奴はペテン師そのものだと思った。これでも東京大学経済学部を出て、大蔵省に入省し公費でコーネル大学でMBAを取得するという在りがちな経歴だが、とどのつまり財務省の忠犬の一人である。
こういう大局観の欠片もない議員が私大(早稲田)出の岸田首相に提案すると、なんでも他人の忠告をよく聞く首相であるからして、全く疑問を挟む余地もないだろう。この世界経済の状況で世界横並び20%というのが暗黙の了解にもかかわらず、日本が先んじて25%に増税したらどうなるか?実証研究ってどんなことを下のだろう?恐らく何もしていない机上の計算に過ぎないだろう。
それに乗せられて、貧困層への給付に充てる、といってこれを正当化して見せたはいいが、岸田首相にはその悪影響を想像することすらできないし、その能力はないと思う。何か政策を打ち出して、目先の財源を探し回り、それに手を出したまま、1年で交代するというのが歴代の日本の無能首相の常だった。その結果、日本は財務省の思惑通り増税の嵐が吹いている。
それが如何に経済成長を阻害し、日本人を困窮させるかなどは関係ないのが財務省とその忠犬たちなのだ。
世界を直撃するエネルギー不足
総裁選で3位に甘んじた高市氏も金融所得課税30%を主張していた。その点では、彼女も金融市場に対する全くの勉強不足なのだが、恐らく当選していたら、市場環境をみて早々の導入はしなかっただろうし、状況によっては取り下げた可能性が濃厚だった。なぜなら、まずは経済成長を第一目標としていたからだ。よって、日銀の金融政策によって支えられてきた株式市場から、その効果を根こそぎ奪うような税制の影響は、レクチャーされたら容易に理解できるからである。
そして4候補の内、誰よりもエネルギー危機に対して正しい認識を持っていたのが高市氏であって、岸田も河野も最初からエネルギー危機の認識さえなかったという点において無能極まると言わざるを得ない。
今、世界は完全にエネルギー不足の只中にある。世界的な潮流になった自然エネルギー・再生可能エネルギーへの潮流は、政治活動としてクリーンな印象付けにはもってこいの政策だが、言い換えると完全に現実逃避の夢想家的な政策だったということだ。季節風や偏西風の流れが変わっただけで発電出来ない風力、天候不順の影響をまともに受ける太陽光、生物の生態系と流域の住民の生活を変えてしまう水力、その他僅かなバイオマスや地熱etc. それらが基幹産業や国民生活を支えるエネルギーとなり得るのか、現実的な計算をすべきだと思う。
世界が目前に突き付けられている現実は、化石燃料なしには社会を維持できないということ。そして、これからの経済成長には今まで以上に莫大なエネルギーを必要とすること。その意味では、嫌でもLNGや石油、石炭、そして原子力に頼らざるを得ないということを再認識する必要がある。環境のためといって原油から出来るレジ袋を有料化して、マイバッグを普及させ万引きを助長した、超無能政治家もいたが、結果として事業者を苦しめ国民を苦しめただけである。
この冬、化石エネルギー価格の上昇によって、基本的に世界はエネルギー危機が頂点になる。その意味は発電コストを上昇させ世界中で値上げラッシュとなって跳ね返っている。中国では30%太陽光発電で賄っていると豪語しているが、太陽光のバラつきと石炭不足・値上がりによって満足に発電が出来なくなった。英国では電気料金が2倍となり、スペインではすでに3倍から4倍になっている。米国でもバイデンの政策によりシェールへの投資が行われず、この冬のエネ不足は確定的になっている。
こうした経済環境の変化の中で、世界経済はコロナ後の復活劇が完全に阻害されてしまって、経済成長に急ブレーキがかかり始めた。同時に株式市場もまた、経済情勢を反映する形で下落局面を迎えつつある。にもかかわらず、日本は金融所得課税を強化するという・・・。その結果どうなるかは火を見るよりも明らかで、そうなると負のスパイラルとなり期待税収が得られるはずがない。岸田政権は世界経済という感覚が全くない無能揃いである。
新・資本主義は社会主義
今世界はインフレと金利高で景気後退の瀬戸際にある。エネルギー価格の上昇はありとあらゆる物価を引き上げてしまうわけで、経済にとっては明らかにマイナスに作用する。がしかし、日本だけは原発再稼働によってエネ不足の心配がない先進国と言える。
岸田政権は景気対策として年内の大型予算を示唆しているが、前出の山本幸三は真水が30兆円必要とのたもうた。その真水とは、前年度の未執行予算の額であるというのは明らかで、現時点でのGDPギャップでもある。と言うことは、たとえ執行したところでGDPの押し上げ効果は岸田政権のものではない。前年コロナ禍で棚上げになったGOTOを中心に大きく開いた穴を埋める効果しかないし、それも限定的である。
日本社会が経済成長をしようとすると、必ず増税によってその腰を折るのが財務省でありその意をくんだ時の政権なのだ。現財務大臣の鈴木は、PB(プライマリーバランス)の目標を堅持すると発言しているが、岸田政権の再分配政策を行うための財源は増税しかないのだ。経済成長によってもたらされる所得増を完全に諦めて、増税によって再分配を行うというのは、経済効果はマイナスでしかない。なぜならエネルギー価格の上昇と増税により将来の負担率が高まるからだ。
総選挙を控えて国民に耳障りの良い政策こそ、増税の温床であって、それは社会主義的な発想そのものだ。
世界経済はリセッションの入り口に
ドイツの影響下にあるECBは、今のインフレを容認するはずもなくほぼ間違いなく金利上昇へと舵を切るだろう。米国もまたテーパリングを中止または延期することはなく、長期金利の上昇は止まらないだろう。世界のエネルギー不足はそれほどひっ迫しているし、いままで冷や飯を食わされていた中東やロシアは、原油やLNGを最大限武器に使ってくる。ここで経済を立て直さないと将来が描けないからだ。
そして最も致命的なのは、長期金利の上昇である。
何度も書いてきたが、現在の世界経済はほぼゼロ金利で国債を中銀が無制限に買い支えるというベースの上に立っている。それだけに投資やファイナンスはすべて超低金利を想定している。膨れ上がった企業や個人の借り入れは低金利が前提であるから現在の水準を維持しているわけだ。ところが、長期金利が上昇を始めると途端にファイナンスコストが上がり始め、その結果消費はインフレによって名目は上昇しても実質はマイナスすると言う現象が起きるし、すでに米国はそうなりつつある。
だが少なくとも波及効果の高いエネルギー価格の上昇が止まらない限りインフレは止まらず、そうなるとますます実質消費は落ち込み企業業績が悪化するのは確実だからだ。その結果、金融政策の転換点が株式市場の転換点、という言葉通り、株式市場は下落トレンドに転換する。
現時点でWTI原油は$80.11あっての$76.60、米国債10年物金利は1.621Pである。目先、双方ともに上昇してゆくはずであり、原油はともかく10年債金利は前回高値の1.700P台を上回るのは確実であり、このトレンドはFRBのテーパリング終了まで続くのではないかと思う。
岸田ショックは本物
日本市場の株価下落は、岸田ショックと揶揄されているが、こうした世界情勢においてまるで日本は関係ないと言いたそうな政策を打ち出し、なおかつ日本への投資を引き揚げさせるような金融所得課税の増税を打ち出すことに対して、海外投資家はどのように感じているだろうか?
日経平均は暴落から2日間、ダウと連動しながら戻りを演じたが、この2日間でさえ投資家の空売り比率は46.0%、45.8%と一向に減る気配がなかった。今後、岸田政権の政策により、日本市場は米国と連動しない動きが続くかもしれない。
そして10月6日の安値¥27,293を割り込むようなことになると、岸田ショックは本物であると思って間違いない。
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