水面下で着々と進行しつつあるリスク

水面下で着々と進行しつつあるリスク

米国ダウの強さには本当に恐れ入る。米国人は利益に貪欲というか肉食系というか、行くとなるととことん行くからね。米国ダウの日足チャートを観てて、ここまで吊り上げるのか?って思う。ダウの10月SQ値が$35,000を突破して決まって、なおかつその上大きく株価を上げて引けているのだから、11月はどの辺を見てるんだろう?ということになる。もっとも10月、11月、12月と株式市場のパフォーマンスは鰻登りになるわけで、今年もそうなると多くの市場参加者は思ってる証だろうね。

米国ダウ日足チャート 10月15日まで
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こうなった理由はもう1も2もなく米国企業(銀行系・金融系)の好決算に呼応したというものだ。名だたる米銀が軒並み物凄い3Q決算を発表したことが、米国経済を覆うインフレやボトルネックという暗雲を一掃してしまった。しかもこのセクターは、金利上昇の恩恵を思い切り受けるわけだから、今後の業績はさらに期待できると投資家は思っているし、実際そうかもしれないからね。

インフレの時代になって、金利が上がってモノの値段が上がると、何もしなくても金融業の扱い高は増えることになる反面、人員は合理化しやすいわけで、それがコロナ禍でほとんど焼け太りみたいになってるんだね。企業の業績が悪化したり、個人のファイナンスが増えると良し悪しは別にしても資金需要はどんどん増える。おまけに債券市場のボリュームも鰻登りになってデリバティブ金融商品もバンバン拡大するので、儲からないはずはない。

この部分を米国の投資家達は、金融セクターだけでなく他の分野も意外に業績はいいんじゃないか?って思い始めてるのかもしれない。そうでなくてはこんなダウの上昇の仕方はしないよね。

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ところが、そういうセクターもあれば、資源高、人件費高、労働力不足、エネルギー高等々インフレの影響をまともに受けているセクターもあるはずだから、今後の決算はそうは問屋が卸さないだろう。悲惨な欧州は・・・今や完全にスタフレの入り口にある。特にLNG価格が6倍~7倍に跳ね上がってるし、電力料金が4倍、5倍になってる国が続出しているわけで、それにともなってあらゆる物価が上昇気味になっている。その上、OPECの反撃にあっていて原油供給量は絞られたまま。北海ブレントは天井が見えず、といったところ。

さらに今後は干ばつの被害による少量不足、中国経済の変調による物価上昇と悲惨な将来はほぼ見えてきた。片や米国もインフレは高止まりだけど、9月小売り売上高がサプライズ的に好調だったことを好感して株価が上昇したわけだが、これが米国の投資家達を楽観させてしまったわけだよ。インフレなのだから売り上げは伸びて当たり前なわけだが、販売数量ベースでは完全に横這いになってるはず。ならばPPIがCPIより上昇しているという状況からして業績が良いはずがないし、人件費の高騰もそれに拍車を掛けてるはずだからね。

しかもコロナ禍で米国民の約30%は貯金を使い果たしたと言われてるうえに、ファイナンスは急激に増えてしまった。不動産市況がバブルになっていて不動産価格や家賃が高騰していて、これが米国人の家計を圧迫しまくっているし、ガソリンが4割も高くなるとほとんど生活できないところまで追い込まれてる。こうなってくると、エンタメ産業個人に余裕がなくなってしまってるからボロボロだろうし、戻ると期待されたホテルやレストランも回復は限定的になるだろう。

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製造業はもう完全にアウトに近いし、恐らく製造業に戻るべき雇用が戻らないのは決定的だろうし、アフターコロナで有望視された航空業も期待外れかもしれない。

結局金融セクターが膨大な利益を計上できる反面、他のセクターは衰退せざるを得ないだろうし、そうなると我が世の春を謳歌してる金融や不動産もいつか、いや近い将来地雷を踏むんだろうね。

というわけで米国の決算の序盤はいつも金融セクターで、これがサプライズだったから株価は飛んだわけだけど、来週からはそうもいかなくなると思ってる。案外米国ダウはこの辺り($35,294)辺りが戻り天井で、新値が取れないかもしれない。

そこに、いよいよ中国恒大問題が週始めから出るだろうしね。すでに中国共産党指導部は恒大のデフォルトで国民が暴動するのを警戒して「第一級厳戒態勢」を発令した、なんていうニュースも出回ってるし・・・。この週末、実際下落した米国債10年物金利はジワジワ上昇を始めてる。加えてWTI原油もほぼ$82まで戻ったしね。

週末、このマッタリした時間のなかで、何かが着々と進行しつつあるような、そんな予感がするのよ。俺はこの戻り局面にはおいそれと乗る気になれんね。