株式市場の運命を決めるFOMCナイト
- 2021.12.15
- 海外情勢
いよいよ歴史的な金融政策の転換点とブルームバーグが書き立てた2021年12月FOMCの結果が今夜公表されます。リーマンショック後、金融緩和が一貫して行われていたわけでもなく、テーパリングは何度か行われ、利上げも行われてきました。けれども今回のFRBのテーパリングとそれに続く利上げは、すでにインフレが6.8%以上という危機的な状況でスタートするわけで、金融政策としては完全に後手に回っているということになるんです。そうなると、恐らく今の米国のインフレは今夜のFOMCでは全く(?)止めることが出来ないと思います。今夜FRBは、テーパリングの量的規模を拡大し早期に終了するとともに、利上げを2022年度に年間3回とほのめかすことになるわけですが・・・。
今の米国のインフレ要因は、金融緩和による資金ジャブジャブによって不動産価格を暴騰させてしまったこと、コロナ禍で雇用が失われ、それがコロナ禍以前に戻らないために(労働力不足となり)賃金が急騰していること、にあります。ところが今夜テーパリングを縮小し利上げを開始することをほのめかしても、この二つに対する効果はほとんど期待できないわけで、となると米国のインフレは止まらないことになってしまいます。
何となれば、テーパリングの縮小と言うのは金融緩和そのものの継続だからです。終結すればFRBの買いオペによる金融緩和は終わります。そして恐らくその時期は来年の3月くらいが目途になる。その後、6月、9月、12月で3回の利上げを行ったとしても、FFレートは0.75%にとどまり、金融は多少タイトにはなるけれど、依然株式投資や債券投資に対しては(徐々にリスクプレミアムは剥落するけれども)、暴落するような影響は出ないというのが大方の見方だからです。
もちろん、そうなると2022年はまず小型株はほとんど望みはないし、ハイテク株も厳しい状況になるし、また人件費の高騰が厳しい業種は業績が徐々に悪化します。なので今までのような株式相場にはならないでしょう。けれどもだからと言って暴落するという事でもなく、好業績銘柄や安定的な高配当銘柄は最後まで値崩れすることはないかもしれません。
しかし、インフレが止まらず企業業績や景気に影響が出始めると、そうも言っていられなくなります。株式市場はそうしたネガティブ・ファクターを極めて織り込みやすい環境になると考えた方が無難で、今までは安易に無視されてきた地政学リスクや政治リスクも2022年は無視できない年になると思います。
FRBがテーパーを終了して利上げが始まっても、それが直接機に株価暴落の原因にはならない反面、市場の興味は何処で、どのタイミングでFRBが資産縮小に動き出すか?の一点に移ります。そしてそれが見極められたなら、その時が株式市場が暴落するタイミングと言うことになるのではないかと考えます。
しかし、注意しなければならないことは、現状の金融緩和は今までに経験したこともない未曾有の規模だという事。株式は上昇の一途、債券は買われジャンク債も(高利回りのために)積極的に買われています。そして溢れんばかりの資金は、仮想通貨を持ち上げ、IPOバブルを引き起こし、そして何よりも空前のデリバティブバブルを引き起こしたわけで、そうした金融市場の模様が何時急激な変化をするのか分からないのです。
実際、仮想通貨はテーパーが決まっただけで下落を始めているし、中国系企業のジャンク債はすでにバナナのたたき売り状態になっているし、2022年になると徐々に企業選別も始まるでしょう。インフレに弱い企業は積極的に篩に掛けられるでしょうし、相場は荒れ気味でしょう。ようやく個別企業のファンダを吟味して銘柄を選ぶ時代が訪れることになるわけです。米国市場で言えば、グーグルやメタ、マイクロソフトといったインフレに動じない銘柄が買われるのはほぼ確実です。
ですが・・・、インフレがさらに上伸するようなことになると、そうした金融上の計算だけで株価は動かなくなります。もしかしたら今夜のFOMCでは、年4回のペースで利上げを行うとほのめかすかもしれない。なぜならそれでも今のインフレは沈静化できない可能性が高いほど厳しいものだからであり、FRBはそのことを熟知していると思われるからです。
さて、他山の石のように日本市場は今夜の米国の状況を眺めていると思う。OECDの信頼ならざる予測では2022年は先進国で唯一日本経済だけが成長率の上方修正をされたが、それは単に新型コロナの感染状況から推測したに過ぎないので、まったく当てになりません。それよりも今の日本経済は、政治リスクが極大化しているということを、海外投資家は意識しているに違いない。だからこそ、海外のインフレを避けた投資資金が日本市場に振り向けられるという可能性は現時点では微塵もないでしょう。
となると、日経平均と米国市場は一時的には逆行する可能性はあっても、タイムラグがあって時期に連動するようになると考えるべき。多分2022年には何度か厳しい下げの局面に遭遇するのは間違いなし。来年末に日経平均¥30,000が果たしてあるかどうか・・・。そんな厳しい状況になると個人的には見ていますが・・・。
いずれにしても今夜、FOMCです。
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