株式市場はジュリアナのお立ち台!

株式市場はジュリアナのお立ち台!

米国の12月小売売上高が前月比0.0%と変わらずというコンセンサスにもかかわらず、-1.9%と全く振るわなかった。しかも自動車を除く数値も0.2%増を見込んでいただが-2.3%と数値的には惨敗ということになった。そして12月鉱工業生産の前月比も0.3%増のコンセンサス に対し-0.1%とかなり軟調であったことも、いよいよ米国経済に影が見え始めたという事なのかもしれない。

22:30 (米) 12月 小売売上高(除自動車) [前月比] 0.3%
(0.1%)
0.2% -2.3%
22:30 (米) 12月 輸入物価指数 [前月比] 0.7% 0.3% -0.2%
22:30 (米) 12月 輸出物価指数 [前月比] 1.0%
(0.8%)
0.3% -1.8%
22:30 (欧) ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、発言 N/A N/A N/A
23:15 (米) 12月 鉱工業生産 [前月比] 0.5% 0.3% -0.1%
23:15 (米) 12月 設備稼働率 76.8% 77.0% 76.5%

しかも、今年になって米国ではオミクロン株の感染者が激増していて、いくらオミクロン株が症状が軽いと言っても、感染者が激増すれば労働力不足に拍車を掛け、インフレ圧力が強まる。賃金が上昇し、不動産価格が高止まりしている米国経済にとって、マイナス要素は決して小さくないはずなのだが、どうも米国株式市場は、経済の本質的な部分をあまり直視したくないらしい。

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そもそも、12月CPIが7.0%上昇(前年同月比)、12月PPIが9.7%上昇(前年同月比)という状況をインフレがピーク感アリとした市場の見方も不自然ながら、結局のところ市場の値動きはFRBパウエル議長の公聴会証言やブレイナード副議長発言の影響で動いているに過ぎなかったわけだ。

22:30 (米) 12月 消費者物価指数(CPI) [前月比] 0.8% 0.4% 0.5%
22:30 (米) 12月 消費者物価指数(CPI) [前年同月比] 6.8% 7.0% 7.0%
22:30 (米) 12月 消費者物価指数(CPIコア指数) [前月比] 0.5% 0.5% 0.6%
22:30 (米) 12月 消費者物価指数(CPIコア指数) [前年同月比] 4.9% 5.4% 5.5%
22:30 (米) 12月 卸売物価指数(PPI) [前月比] 0.8%
(1.0%)
0.4% 0.2%
22:30 (米) 12月 卸売物価指数(PPI) [前年同月比] 9.6%
(9.8%)
9.8% 9.7%
22:30 (米) 12月 卸売物価指数(PPIコア指数、食品・エネルギー除く) [前月比] 0.7%
(0.9%)
0.5% 0.5%
22:30 (米) 12月 卸売物価指数(PPIコア指数、食品・エネルギー除く) [前年同月比] 7.7% 8.0% 8.3%

株式市場の関心事の中に新型コロナは全くなくなって、その影響さえも無視するということ、そして目先の指数がどうあれ企業業績が付いてくれば株価は大丈夫と言うことなのだろう。12月はWTI原油や天然ガス価格、そして他のコモディティ価格の上昇が一段落していたわけだが、ここにきてWTI原油が$80台を固めようという動きで、また中国製品の値上げ圧力もこれから、ということを加味すると、超ハト派のブレイナード副議長がタカ派に転身したような発言をしても、全く不思議ではないはずなのだが・・・。

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こうした経緯を踏まえて、週末の株式市場が現状をどのように織り込んで行くのかが、今夜の焦点になるわけだが、寄り付きからの動きを見る限り、とりあえず厳しいチャートのNASDAQとS&P500はショートカバーが優勢に推移している。NASDAQが戻れば日経平均CFDも買われるし、このまま行けば方向は持ち合いの下値支持線を割らずに済むことになる。

しかし、米国債10年物金利はいよいよ1.700台に定着しそうだし、場合によっては早々に1.800台を目指すと思う。今の米国債10年物金利はほぼほぼWTI原油と同調するような動きを見せているからだ。となれば、今後の株式市場は簡単に上値追いが出来る状況ではないし、米国経済はますます厳しい状況に陥ると思うね。

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こうしてある意味、株式市場はインフレを織り込み、景気指標を織り込む形で推移するのだろうが、それは必ずしも弱気とは限らないというのは、新型コロナの感染状況無視する市場を見ればわかること。いくら3月でテーパー終了、利上げ開始、といっても足下ではまだ金融緩和の真っ最中だから。株式市場は将来(6カ月先、1年先)を織り込む、と言われるが、実際は現状で右往左往する相場に成りがちだ。けれどもそれはかなり投機的な値動きだろうと思う。1月に入ってハイボラな荒っぽい相場が続いているけれど、とにかく投資家はポジションをリバランスして、利上げに備えないといけないし、そうは言っても目先の需給もまた相場をかき回すことになるので、ますます方向感が出辛いしますます混沌としてくる。

為替は日米金利差が広がってもドル売りの大合唱で円高方向に動く。ショートカバーになれば10年物金利が上昇してもハイテクが買われる。そうした値動きは従来の法則性を逸脱したものであることは言うまでもなし。だからこそ、全く読めなくなってる自分が情けないというのはあるけれどね。

それでも正直、今後の相場が強いとは思えないし、巻き戻したポジションを元に戻すこともないだろうから、グロース売り・バリュー買いの流れはそう簡単には収まらないとは思う。けれど、もしもバリューが売られ始めたら、いよいよ株式市場に暗雲が立ち込めるという意味かもしれないね。

米国人のセンチメントは、個人も法人も「株価は上昇して当たり前」という非常に強いものだ。そこに世界中の運用資金はドル高を背景にして米国に集中するのだから、相場が弱いはずがない。FRBがテーパーをしても金利上昇ならばその分の資金は簡単に集まってくる、という評論家もいる。現に日本人の米国株投資は増加の一途をたどっているわけだ。FRBパウエル議長はQTをしてもその分の埋め合わせはゆっくりやればなんとか吸収できるとと言う意味で議会証言をした。

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しかし、米国市場はSPACというペーパーカンパニーに莫大な資金を埋めている。まさにSBGの孫会長の手口を地で行くような投資手法だけど、これは米国市場の火薬庫だ。金利上昇にすこぶる弱く将来不安に弱いわけで、リーマンショック時のサブプライムのようなものだ。

また米国の不動産市場を持ち上げたのはFRBの金融緩和であることは言うまでもなく、カネ余りになると常に過剰反応しやすいのはいつの時代でもどの国でも同じだ。それが利上げとQTによって巻き戻されてしまうと大惨事の可能性もある。今ほど不動産が注目されない時代も珍しいと思うけど、日米中、歴史を見てもリセッションのきっかけは不動産なのは明らかだ。

まさにこれから数か月は、未曾有の金融緩和という宴の終焉の前夜としか見えないのは俺だけだろうか・・・。嫌なものは見ない、臭いものには蓋をする、将来は考えない。ただ刹那的に踊り狂う。今の株式市場はジュリアナのお立ち台で扇子を振り回して踊っているようなものだ!