FRBはインフレの背景を変えられるのか!?

FRBはインフレの背景を変えられるのか!?

いま、気になることが一つある。それは、今回の金融政策の大転換に対して、アナリスト達が甘く見てるということ。誰とは言わないけれど、金融に関するアナリスト達は、ザラ場を見ているわけでもなくて、所謂数字で判断するデスクワークなので、理論的にこうなる、という押し付けが過ぎるんじゃないだろうか?

そして金融の在り方、マーケットの在り方を論ずるとき、彼等がもっとも拠り所とするのは、過去の同類パターンとの類似性であって、様々な条件から新たな視点で将来的に起こるべき事象を予想するような、気概の在るアナリストは皆無といってもいいほどなんだよね。

もちろん、独自路線と称して極端な予想をする評論家、アナリスト(紛い)はいるけれど、良く聞けばほとんどが精神論であって論理性が極端に欠けている。しかも最終的には「株は投資家のセンチメント次第ですから」と言い放つことで締め括ろうとする。ちょっとそれでもプロかよ!って言いたくもなるし、そういう手法なら我々素人でも十分に、当たる当たらないは別そしても、予想できるだろう?

なのでそういう意味では、今回の「FRBの金融政策の大転換」を、精神的アナリストよりももう少しまともに、自分なりの考えを書いてみたと思った次第です。

今回の金融縮小の意味

今回の金融政策の大転換の目的は、「インフレ退治」と「過熱した金融市場の正常化(債券・不動産を含む)」が目的だよねぇ?けれどそれだけならば、過去にも同様の金融政策の引き締めはあった。いろいろな局面においてFRBは柔軟?グリーンスパン時代やイエレン時代にも対応してきたし、もちろんそのたびにマーケットは大きく影響を受けてきた。またパウエル時代にもトランプ大統領と対立しながら金融正常化に向けて利上げとQTをやってパウエルはトランプに大叱責されて、金融政策(利上げ)を急遽展開してクリスマス暴落を止めたのは記憶に新しい。

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けれどもこれから向き合おうとする金融政策の大転換は、過去のいずれのケースとも到底比較にならないほどの大量の金融緩和をしてしまった後だということ。もちろんそんなことを肌身で実感している人がアナリストでもないので、実感できないのは仕方ない事だけど、とにかく今の金融緩和マネーの量は半端なく膨大だということだよ。

ばかばかしくなるくらい単純なことだけど、株価¥100の銘柄を100株支えるのには¥10,000の資金が必要だけど、金融緩和によって株価を支えるマネーの量が飛躍的に増えてしまったから、株価が¥10,000になってしまいましたとなればその時に100株を支えている資金は¥1,000,000ですということ。つまりは¥990,000も増えてしまってるわけだよ。なおかつ企業は増資して株数を増やしたり、あの手この手で資金調達するわけだから、単純に¥990,000増えましたという話では当然ないよね。

単純に1社だけの株価だけを見ても、こうなってるわけだから、金融市場のすべての商品を考えると、資金がどれだけ膨張して膨れ上がってるか誰にも想像さえできないわけだよ。あのリーマンショックの時にはかろうじて理解できる桁数(数千兆円)で済んだな、という感じだったけれど、今回はそうはイカのキン○○なんだよね(下品ですみません!)

そしてその膨大な資金は経済成長というバイアスによって維持されていたけれど、実態は極めて微妙なバランスの上に成立していると言える。つまり経済成長に必要な資金を毎月FRBが市場に注入することにより成り立っていたからね。特に新型コロナが始まってその傾向が顕著だよね。今の米国経済がバブルか否かという議論が盛んだけど、これはもう間違いなく金融バブルの賜物だと言い切れる。なぜならそうした中央銀行の金融政策が明らかに今の経済を支えているからだよ。

そうした状況の中で、FRBは金融正常化ではなくてインフレ退治という新たな強大な目標のために嫌でも利上げとバランスシートの縮小をやらないといけないところまで追い込まれた。そして肝心なことは当自社であるFRBにさえ、その悪影響は計り知れないということだ。

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欧米のインフレ要因の分析が甘い!

ではアナリスト達が言うように金融を引き締めたら今回のインフレは収まるとうるのは、ちょっと甘すぎる分析だと思うね。インフレを退治するにはインフレの背景を変える必要がある・・・。バックグラインドが変わらないとインフレ退治は出来ないし、そもそも金融縮小はその一つに過ぎないということだよ。

今回の米国のインフレ要因は、
1)労働力不足と賃金上昇
2)エネ価格の急騰
3)不動産価格の急騰
の3つの主要因があって、1)の根本原因は新型コロナのパンデミックと人の移動の制限で、2)は地球温暖化防止策としての脱炭素社会への具体的な目標設定と様々な規制、地政学リスク、そして3)は金融緩和マネーの受け皿、という具体化できる原因がある。

これを解消するような状況は、FRBが利上げや金融縮小によって作り出せるか?というとかなり疑問なんだよ。そしてそれらをすべて包み込むように膨大な緩和マネーという背景があるのだから、一筋縄ではいかないよね。

俺自身、ただの個人投資家であって素人同然なのだから、これらの相関を具体的な数値で示すような分析は出来るはずもないけれど、それをしっかりと数量的に分析をして、予測を示すのが金融アナリストの仕事じゃないのか?と言いたいわけだ。

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個人投資家が相場から感じ得る状況

例えば今日の日本市場のザラ場を見ていると、本当に感じることがたくさんあるけどね。その最たるものが、好業績・好決算銘柄が売られまくっているという現象だと思う。下世話な表現で俺も「材料出尽くし」などと書いているけれど、かろうじて好業績・高配当のバリュー株に対して買いは入るものの、単純にどんな決算であろうと、ただただブン投げろ!みたいな雰囲気に覆われていたと思う。

そもそも材料出尽くしというのは、業績がピークアウトしてる、と判断するからこそ一気に売ろうとする動きになるということ。いまの株価が当面の最高値という判断からくるのであって、とにかく売ればいいというものでもないはずだ。

ならば外国勢力が株価の下値誘導という作為をもって売っているか?というと、どうもそういう感じがしないんだよね。つまり昨夜のフェイスブック(メタ)の▲23%もの大暴落を見ると、また昨今のNASDAQの売られ方を見ると、「とにかく今は株を売っておく」という判断としか思えない。そして売る理由は「株だから」という事なのかもしれないと思ったりしてる。

そしてそうした投資行動に出ているとするならば、今回の金融政策の大転換は、前例のない事態に至ることを、米国の大口投資家達は理屈以上に肌で感じているのではないか?と思ったりしてる。もちろん、そうしたファンドや投資銀行はもっと理詰めだろうけど、その理詰めに自信が持てていないのだろうと思う。

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前例のない状況の変化

インフレ退治の名目で利上げと金融縮小を余儀なくされるFRBだが、FRBに今回のインフレを抑制する政策的な決め手があるか?というと非常に不安が残る。実際、FRBの連銀総裁達がかなり怖気づいて急にハト派的発言をするようでは、ますます市場の疑心暗鬼を増幅させるだろうね。

インフレ要因を考えるに、「不況なくインフレを退治する」というFRBの甘言では通用しないと思うし、そうした態度がここまでインフレを拡大してしまったのだろう?

このインフレを退治するには、「戦争無き不況」という劇薬が必要だと思うし、今度こそパウエル議長は犠牲を覚悟しつつ力ずくで抑え込まないといけないと思う。前例のない未曾有の金融緩和の果てに途方もない資金が経済のバランスを保っている状況は、それを維持するためにさらなる資金の供給を必要とする。しかし、その結果破壊的なインフレをもたらすことは火を見るよりも明らかだ。逆にそうした背景であるがゆえに、金融引き締めは高度なバランスを呆気なく崩しかねないのも事実だろう。

いまFRBは、後者を選択しようとしていて、出来ればソフトランディングさせたいと思っている。

同時に株式市場は前例のない状況の変化に戸惑い、利上げ、QTは大きな影響はないとする強気派と、致命的とする弱気派のせめぎ合いになっているけれど、米国では特に個人投資家達は強気派が多いと言われているけれど、すでにこの相場の行く先は決まっているような気がする。

労や痛みを感じないで実を収穫する、というのはいささか虫が良すぎると思うが・・・。