金融バブル崩壊はそんなに甘いものじゃない!

金融バブル崩壊はそんなに甘いものじゃない!

みんなは・・・ほとんどすべての人が・・・今の米国経済を極めて過大評価していると思うんだよねぇ・・・。時折、日本のバブル崩壊を持ち出したりするから、オジサンが何言ってるんだ、みたいに笑われてるかもしれないけれど、オジサンだからこそ、今でもあのバブル~バブル崩壊の時期は結構鮮明に覚えてる。あの1991年というのは、俺も父親になった年でもあるのでね。

いろいろ議論はあるけれど、(あの時代を生きていた身としての)当事者としては、肌で感じたバブル崩壊の直接的な理由はまさに不動産融資に対する総量規制と利上げという急激な信用収縮にあったのは間違いないね。当時、俺も若かったけれど、とにかく総量規制が1990年の春から始まるというので、その前年に住宅用の土地を買ったんだよ。もうバブルもバブルでね、早く買わないともうこの値段では買えなくなる、という銀行マンの甘言もあって、全く馬鹿げた広さの土地を買う羽目になった。28歳で土地だけで8000万の買い物だったよね。

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よく考えると、これってちょうど今の東京のマンションの平均取得額に近いな(苦笑)いま思うと本当に馬鹿げた買い物をしたと悔やんでるけれど、当時は周囲の誰もが買えと言ったんだよ。反対者はゼロだった。社会の空気が今とは全く異次元だったわけだよね。その時はまさか日本がこんなに貧乏国になるとは夢にも思わなかったけどね。

資本主義経済というのは意外に恐ろしいもので、大学時代に学んだ景気循環がなぜ発生するかとか、結局当時は理解できたようでできてなかったんだね。当時は何でも需給で解決しようする風潮みたいなものがあって、結局のところ価格はもちろんだけど、景気も需給で決まる、みたいなまるで意味をなさないことをやってる。数式とか使うからさももっともらしくなるんだよ。

けれども結局、時代が進んで複雑系になってきたら、結構お手上げになっちゃった。ケインジアンとマネタリストが鬩ぎ合ってきたけれど、様々な意味で選択肢が爆増してしまうとやれ市場原理主義だ、といっても暴走が止められなくなって、マネーの供給量を調整すれば、みたいなことも暴走は止められないから、結局様々に規制するしかなくなってしまって、現実の資本主義は結構社会主義化してると思うんだよね。

この暴走した例がいわば日本のバブルだったわけだけど、実際当時は需給なんか関係なかったし。というよりも実需を無視したと言った方が正しいかな。実体的な需給バランスなんかとうに崩れて、あとはイケイケになっちゃう。とにかく期待インフレ率がバンバン上昇しちゃうからね。今買っておけば儲かるとか早く買わないと買えなくなるとかね、そういうやつ。それが端的に表れたのが株価と不動産の暴騰というわけだけど。

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日本全土でパンパンに膨れ上がった信用は、東京でも地方の田舎でも比率的には変わらなかったよ。大都市圏では住宅やマンションの高騰、地方ではあっちこっちでリゾート開発とかあってね、駅に近いと急騰、景色がいいと急騰、みたいなことが起こってた。知り合いの銀行マンが入間市に住宅を建てた。小さな住宅だと本人は言ってたけど、金額が8000万と聞いたなぁ・・・。俺も後悔しきりだったけど、同じ金額をサラリーマンがローンを組む・・・。根性あるなぁ・・・なんて思ったよ。俺はまだサラリーマンじゃなかったから逃げ場がある、みたいに思ってたけどね(実際にはなかった!)。

それが、もうどうにもできなくなってしまって、アホな国会議員が連日不動産と株の暴騰を議論してて、「サラリーマンが東京に家も持てないなんて!」と自民党を批判するけれど、自民党の議員たちは美味しい金蔓がバンバンで、なかなか同意しない。そのうち不動産転がしであちこち問題が噴出しちゃって、反社会勢力の地上げとか、金融機関の過剰融資問題とか、もう世の中問題だらけになってきて・・・。まさに資本主義の暴走だよね。結局市場原理主義に基づく小さな政府では、国家を統治できなくなっちゃった、というのが正しいのかな。

結局日銀は、バブル絶頂期までに5回金利を引き上げて2.5%を6.5%にしたけれど、全く効果なし。それじゃ蛇口を絞めるかということになって大蔵省銀行局があらゆる手段で不動産取引に対する規制を強化した。不動産融資の総量規制、固定資産税や譲渡所得税の強化等々とにかく何でもやった。

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それで一気に信用収縮が起こったんだよ。そりゃ1億円の土地を買う場合、数年後の2億、3憶を当然のことのように考えていたわけだから銀行だって全額融資なんて無茶苦茶をやる。子会社使って迂回融資したりね。もう出鱈目もいいところで日本中完全におかしくなってたからね。

ヘリコプタにのって日本中を駆け回る若造に政府系金融機関が無尽蔵に融資してたとか、千昌夫の資産は1000億だとか・・・それが一気にヘリコプタは墜落し、千昌夫は破産した。けれども一番困ったのは、ごくごく一般的な住宅ローンを組んだ国民なのよ。それが、今日まで続く日本のデフレの元凶になってる。所謂団塊の世代がみな地獄を見てるからね、もうあんな思いはしたくないといってシコシコ生活を切り詰めて預金してしまい、お金を使わなくなった。だから、極端な話、団塊の世代が死んで相続が行われないと、日本はデフレ脱却できない、みたいなそんな話なんだよね。

で、俺の場合、その後の日銀の滅茶苦茶な金融政策もあって、給料が30万/月でローンの返済が75万/月という地獄を見た。2年もしないうちに貯金は消え失せて・・・俺は毎日何やってるんだろっ!?って感じだった。

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さて、バブルの後の始末はこれはもう大変なことでね。今回の米国経済の場合、これから襲ってくるのは消費の落ち込みだよ。けれども今は、日本でもそうだったけど、バブル崩壊しても日本経済はすぐに立ち直る、みたいなことをみんなが思ってた。我慢は一時のことで、元に戻ると。評論家もそんな感じだったし、現に社会全体がバブルを2、3年は引き摺ってたと思う。けどね、本来あると思っていた価値が消えてなくなってる、というのを社会全体が自覚するまでには時間がかかるんだよ。その間はただひたすらに血を流し続けないといけない。

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米国もEU各国も、うちは大丈夫なんて言ってる英国も、ここからはバブルの後始末をやらなきゃいけないわけで、それは半端なく大変なことだと思うけどね。その上今度は中国経済もボロボロで世界経済のエンジンがない。インフラ整備が遅れてるインドは恐らく無理というか間に合わない。多分世界は不況に陥ると思う。

今年になって米国で失われた資産は、株の時価総額、仮想通貨の時価総額、債券の総額あわせて2000兆円近くになっている。そのタイミングで、インフレの高止まりを抑制するために、FRBはいまから本格的に金融引き締めに入るんだよ。

株式市場はもう利上げとQTを織り込んでいる、みたいな意見も多いけれど、次のフェーズは業績相場に必ずなる。はっきり言って米国民の貯蓄率は最近5%を切ってます。とにかく米国民の消費癖はかなりの足枷になると思う。それをして米国経済は好調と判断するか否かは見方に寄るけれど。

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欧州の場合はもっと悲惨なことになると思う。インフレもさることながら、EUは牽引国のドイツ、フランスがリセッションに陥ると、まず南欧加盟国経済が持たない。そこから崩れるわけだけど、頼みの綱の中国経済がボロボロなので、崩れ始めると処方箋がない。

新型コロナの次はロシアのウクライナ侵攻で、資源・エネ価格がメチャメチャになった。そしてロシアは今度はNATO加盟申請したフィンランドの国境に軍隊を集結しだして、攻め込もうという姿勢をあらわにしている。もはや狂人と化したプーチンを、このままでは止めることが出来ないよね。今日(21日)からロシアはフィンランドへの天然ガス供給を止めてしまった。

NATOは今度はプーチンを許さないだろう。ロシアはフィンランドがNATO加盟前に侵攻するかもしれないが、それでもNATOは受諾してロシアと対峙するかもしれない。

考えてもみれば、今回の株価下落とインフレで、米欧中で一体どのくらいの資産が吹き飛んだのだろう?米国だけで2000兆円ならば世界では数千兆円となっても不思議ではない。全世界のGDPの総額が約1京円であることを考えると、その大きさは歴史上比較できる事態は見当たらない。

ちょっと足下の侵攻しつつある出来事を、もう少し慎重に捉えなければならない時期に来ていると思うが・・・。