中国発、世界同時株安に楽観は通用せず 

中国発、世界同時株安に楽観は通用せず 

中国が米国で連邦破産法15条を申請したということを、イコール「破産」または「破産相当」と解釈したことは、間違いとは言わないけれど、解釈が曖昧だったことを反省した。

そもそも、15条はかなり特殊な条項で、「多国籍に渡る企業が米国内の資産を保全するための条項」ではなくて、前程条件として米国外で破産手続きや債務整理等それに準じた裁判等の開始があって、その上で債権者が米国内の資産を早い者勝ちで訴訟して押さえることが頻発すると、債権者の公平が失われるので、破産手続きを海外の司法と同期させるために資産を保全する」という目的の条項だという事。

これを今回は恒大集団が自ら申請したということで、恒大集団は破綻を事実上認めたうえで、債務の扱いを公平に一括して行いたいという意思表示をしたということになるわけです。

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これを米国連邦裁判所が認めるか否かは未知数で、実際に恒大集団が米国外(香港またはケイマン諸島?)で破綻手続きを行っているのか、また包括的に債権者との話し合いが行われる用意があるのか、を確認したうえで受理、不受理を決めることになる。

けれども恒大集団としては、もうこれ以上債権者との個別交渉を行うのが不可能と判断したと思う。あまりに膨大過ぎる債務と債権者の数・・・。記載した個別の債券に投資した投資家だってそれこそ何人いるか分からない。破綻を回避するために危険な債務から返済していくことで凌いできたものの、もうこれ以上は無理と判断したのではないかな。勿論、中国当局が同意しているのかは分からないけれど、実質的な破綻宣言には間違いなく相当すると思われる。

そしてマーケットが懸念するのは、恒大集団よりも碧桂園のデフォルトで、中国でも米国でも欧州でも、恒大集団の約4倍以上の債務規模だということ。あのバイデン大統領は演説で「中国は時限爆弾」と痴呆のせいでポロっと漏らしたのはどうやら碧桂園のデフォルトの報告を受けていたかららしい。

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さらに今回、中国大手信託の中植集団が「債務の再編をする」と言ったのは、恒大集団と碧桂園がダブルで来る、と言うだけでなく、他の不動産の連鎖も十分に想定されるという最悪の事態だから。

けれども中国はもはや個別の事案を論議しても始まらないくらい、不動産やシャドーバンク関連の債務は圧倒的で、その額はなんと2000兆円を上回ると言われている。中国は米国同様に「デット・ベース・マネージメント」という「貸付により膨大な信用創造を行って経済を活性化するシステム」で経済を運用しているけれど、これが限界に達したときの姿をいま、表し始めたと言ってもいい。

MMT理論は「ハイパーインフレにならない限り政府はいくらでも財政拡大が出来る」というものだが、中国がハイパーインフレになったわけではないにもかかわらず、つまりは極端に需要を供給が上回ってしまえば、通用しないのだということを証明している。

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とにかく中国の需要は今後日に日に減少するだろう。中国の団体客が訪日して爆買いするということももはや期待できないと思うし、中国依存度の高い企業は業績を落とすだろう。これから時間の経過とともに中国経済の墜落の影響が明らかになって行き、昨夜のような曖昧な相場が許されるようなことにはならないと思う。

いままでこれだけ中国に依存してきた米国経済、日本経済、欧州経済が、あれは中国経済の問題と無視できるようなことは有り得ない。中国に進出した企業の数は膨大で、最悪それらが没収されることも十分にあるし、そもそも企業決算における中国法人の扱いが極めて微妙になるだろう。いくら中国での利益が留保されていた場合、資金移動できなければそれをどう扱うか、またはどう評価するかが問題になる。

中国不動産は悪く破綻はすでに織り込み済み、という馬鹿な楽観論は1ヵ月もしないうちに吹っ飛ぶと思う。世界中の企業が、ファンドが、銀行が、そして投資家が大なり小なり影響を公表しないわけには行かなくなる。そして恐らく米国はそれを望んでいる。