7203トヨタ:中国戦略は巨大企業の危険な賭け
- 2019.06.07
- 企業評論
米中対立が激化する中、トヨタは中国へのシフトを加速し始めました。トヨタは今年、合弁相手企業(広州汽車集団)と運営する広汽トヨタの工場拡張のために約2000億円の投資を決断しました。
またデンソーもこの投資に伴い300億円を投資し新工場建設へ動き出しています。
本格的にEVシフトを発表
世界のEV戦略で出遅れていたトヨタは、車載用電池の世界最大手の中国CATLと、中国展開で二の足を踏んでいるパナソニックの代わりに業務提携しました。
ATLはホンダとEV用電池を共同開発しただけでなく、日産やBMW、VWにも車載用電池を供給しています。
そんな中、全個体電池を独自開発しているとはいうものの、実用化(大型化)にかなりの時間を要するため、EV戦略を5年間前倒しするための対策と思われます。
トヨタのEV戦略は、現在(2018年実績)2449台であったEV・FCV車の販売を2025年には100万台以上に引き上げるという大掛かりなもので、これによってトヨタ自動車の販売内訳は、ガソリン・ディーゼル車とHV・PHV/EV・FCV車の比率を半々にし、1100万台(2018年は954万台)となる予定です。
EVの需要は現時点では中国に一極集中していて、他地域で普及するかどうかは甚だ疑問と言われていますが・・・。
EV・PHVは中国が約7割を占める
中国は国策によって世界のEV販売の約7割を占めている。
これは中国製造2025による重点項目でもあって、PM2.5の環境汚染を防止するという大義名分もあります。
しかし実態は、地方政府や公共機関での購入が大部分で、結局は景気対策としか捉えていません。
また民需ということでは、ガソリン・ディーゼル車に対するプレートの交付は半年待ち、EVなら即日、みたいなことで、普及を強引に計っているに過ぎません。
中国のような大陸で、EVはなかなか普及は難しいし、現状の中国経済の状況を考えると、いつまでこのEV需要が持つのか、はなはだ疑問なのです。
トヨタの姿勢に日本企業は追従する
トヨタは日米通商交渉において、米国側が要求していると言われる、台数制限に真っ向から反対しました。
トヨタは50年以上の米国展開の歴史があり、現状販売も含め50万人以上の雇用を作り出している、としてトランプ大統領の政策を牽制するとともに、
メキシコ工場の建設を終了したばかりのタイミングで、関税問題が持ち上がったことに懸念を示しています。
また4月には国内での終身雇用の維持に懸念を示し、物議を醸しています。
そのトヨタが、矢継ぎ早に親中事業展開を打ち出したことは、他の中国ウエイトの高い日本企業に大きな影響があります。
リコーは中国撤退を決め、パナソニックはファーウエイビジネスを全面的に終結という方針を打ち出しましたが、他の日本企業は対中国展開に明確な方針を打ち出そうとはしません。
与党・自民党の大半の国会議員が親中であるということや、経団連の姿勢なども、大きな要因となっていますが、トヨタの積極的な姿勢は現在の日本企業の象徴でもあります。
米国の要求は相当に厳しい?
恐らく日米通商交渉における米国側の要求は相当に厳しい内容である、と思われます。現に年初に提示された内容はとても飲めるものではないという情報が出回りました。
トヨタの中国拡大戦略は、ちょうどそのころから表面化し始めています。
トランプ大統領は、来日時の会見で「選挙後の8月に非常によい結果が出るだろう」と発言しました。一方日本側は日米交渉妥結のためには年単位の作業・調整が必要ということで、日米の主張は噛み合いません。
しかし、これ以上米国生産を増強すれば、当然国内工場への影響は避けられず、「終身雇用維持は困難」というトップの発言に繋がったのでしょう。
米中対立を乗り越えられるのか?
米国は中国製造2025の重点項目すべてをECRA(米国輸出管理改革法)の指定項目にあげています。
現在の5G対中戦略はその1項目に過ぎないわけで、軍事技術転用可能なすべての部門を優先的に規制すると思われています。
もちろん、「省エネ、新エネ自動車」は中国製造2025の重点分野であり、規制の対象となる恐れが多分にあるわけです。
すでに貿易関税以外の国防権限法やECRAによる規制に関しては、トランプ大統領はすべて商務省に権限委譲を行っており、貿易問題とは別途進無可能性があります。
その意味では、モーターや電池のコア技術は米国として絶対に中国に渡せない技術であって、日産自動車がルノーと共同で中国展開することを、ゴーン事件(マネロンのネタ元)で阻害したとも言われているのです。
その状況で、トヨタがこの時期、中国に突っ込んでゆくのは、相当のリスクがあると言うことになるでしょう。
トヨタの中国ビジネス拡大は、極めて危険な賭けであると言わざるを得ません。
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