日米株式市場の動向と現状のリスク要因(外部リスクを含む)

日米株式市場の動向と現状のリスク要因(外部リスクを含む)

昨日、「CPIで悪材料出尽くし」を演出して年内の戻り相場を作りたいウォール街の大口投資家達は、AIのアルゴリズムトレードを駆使して突如として買いはじめ、それに触発されたヘッジファンドや商品系ファンドの積もりに積もったショートポジションの買戻しによって大きく動き始めると、待ってましたとばかり買いを指向する個人投資家を巻き込んで、なんとザラ場で$1500もの暴騰(ダウ)となった。これで、テクニカルでは底値からの大陽線の包み線という「最強の底打ちサイン」となって、株価のトレンド転換の香りを強烈に放つことになった。

米国市場の動向

多くの個人投資家は、理屈はさておき日足チャートのテクニカルを盲目的に信用する。そしてこれほど明確なものはないと思わせる相場反転のサインが出たのだから、金利が急上昇しようが、今後の景気がどうなろうが、あまり関心を持つ事はないし、持ってもよく分からないことばかりの記事が出たり、アナリスト達の発言だったりでウンザリしているだろうだろうから株価が上昇しさえすれば理由なんかどうでもいいのだ。

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しかし、昨晩の株価急騰でETFでダウ$1000分を含み益にした個人投資家は多いはずで、とりあえず短期投資家は利食いしたい欲求に駆られていたし、昨夜の急騰劇に違和感を感じてるプロトレーダー筋も流れに乗って一晩で$1000分の濡れ手に粟をキャッシュに換えたいだろうから、利食いが出るし、ここからショートポジを建てる場合もあると(個人的には)見ていた。仮に今夜米国市場が続伸するのであれば、短期筋だけではなく大口ロングの買いが必要になってくる。この金利高、インフレ下、そして企業決算前という微妙な時期に、これ以上買いまくるのはある意味勇気が必要だからね。なので、相場を演出した筋は、今夜は様子を見るはず・・・。そして気になるのは、投資環境の急激な変化のはずだ。

以前から指摘してきたけれど、発表された10月ミシガン大学消費者態度指数は、極めて調査範囲が狭く特定の消費者の感覚しか反映できないので、あまり良好な景気指数ではないと思っている。そして、指数は強気であって1年後の期待インフレ率は5.1%と下落予想(9月予想の4.7%以下)に反して上昇した。その結果、米国債10年物金利は急騰し現時点(0:50)4.014pとなっている。またドル円は¥148.563と余裕で¥148の壁をブレイクしている。

また米国実質金利は、日本市場のザラ場の時点で既にプラス1.82%にまで戻っていて9月30日のプラス1.92%に迫っていたけれど、週明けには横並びもあり得る状況になった。こうした投資環境の変化は、改めて景気減速の懸念を喚起するだろうし、昨夜の戻りが如何に異常な事態であったかを投資家に示唆するだろう。

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AIアルゴによるシステムトレード、行き過ぎたショートポジションが時として異常な値動きを誘発する。それがおかしい、異常だと気付く相場であれば、まだいくらかの健全性が維持されていると個人的には思いたい。普通にまともに考えて、これからさらにFRBの利上げがきつくなり、その高金利状況が来年も継続するというのがコンセンサスであって、来年は少なくとも株価の大底が見込まれるこの時期に、大口ロングは株式に投資しない。少なくとも米国では彼らの防衛策は物価連動国債一択のはず・・・。ということは、例えばダウは$30,000をは挟んでもみ合いながら、企業決算を織り込むのだろう。

そして企業決算だけでなく、金利や為替の変化を織り込みながら、そして地政学リスク、他国の景気動向を十分に織り込む相場がこの時期に必要だと思う。いや、それをしてこそ、健全性の残された株式市場と言うことになるのではないか?

リスクが潜む日本市場

さて、それでは株式市場を取り巻く外部要因はどうなのだろう?まずは日本市場を考えると、今日は大引け後に為替介入があると予想していたし、実際いドル円は¥148台の半ばまで急伸していて、ここは明らかに2度目の介入を行うべきポイントだと思う。9月22日の1回目の介入ポイントは¥145.900近辺であったことを考えると、効果的なのは¥3上昇辺りだと思うので、瞬間でも¥149にタッチするような局面になれば、介入してくると予想している。

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財務省の介入は少なくとも、各企業や機関投資家が為替ヘッジしているノックアウトポイントの集中する¥150の手前だと思っていて、タッチすれば急激な為替変動は避けられなくなるから。また金融機関を含む機関投資家や輸出企業の金利スワップによる大量のデリバティブ償還も予想されていて、デリバティブ状況はかなり追い込まれてしまっている。英国の年金基金が莫大な損失の危機に晒されているけれど、「急激な為替や金利の変動」は、地雷を踏むような状況には違いない。

政府や財務省、日銀は少なくともデリバティブ取引の実態把握が出来ているとは思わないし、ようやく最近になって個人向け仕組債の販売停止を求めたのみである。いま日本市場は独歩高、世界最強という奇天烈な主張をする評論家が多いけれど、はっきり言えば今の日本市場など、為替や金利の大幅な変動によって一夜にして素っ飛ぶくらいの危機的状況にある。だからこそ、海外投資家は9月に大幅売り越しに転じたわけだ。

カオスの英国経済

次に英国の混乱は、今に始まったことではないけれど、英国の政治システムは明らかに各政策の権限が大臣に大幅に移譲されていて、首相は平然と各大臣に責任転嫁する、というか首相の政策責任という日本的な思考とは著しく異なるようだ。この状況下で前代未聞の金融緩和を打ち出したクワーテング財務相は世界中から批判を浴び、国債金利急騰、ポンド急落という洗練を受けた。

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一部政策を撤回したがトラス首相は会見で「あれは財務相が勝手にやったこと」平然と述べて唖然としたわけだが・・・。いよいよイングランド銀行は長期国債の買いオペを終了し、年金基金に対して為替ヘッジのデリバティを清算するか資産を売却するかの選択を迫った。

まさに政府当局と中銀の真っ向対立という状況に成り、反面公共料金の暴騰と10%を超えるインフレで国民生活は立ち行かなくなっている状況と金利、雇用を制御してインフレを抑制したいという状況のせめぎ合いの真っ最中にある。

中国は独裁基盤の強化中

そして中国はいよいよ共産党大会が16日から始まり、習近平が3期目に突入することが決定的となっているけれど、同時に不動産バブルの崩壊に端を発した経済危機にあって、いよいよ米国は対中半導体輸出規制を全面的に発動し、中国の軍事産業、宇宙開発を封じ込めようとしている。しかるに中国のGDPの半分を占める不動産開発関連が崩壊したことで残されたものは、開発企業の実質破綻のみならず地方政府の莫大な債務、個人の膨大な住宅債務が、完全に消費を冷え込ませる結果となっている。そしてそうした景気悪化に拍車を掛けるゼロコロナ政策・・・。

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そもそもすでに5年、10年前から中国経済慢性的に中国経済の危機が言われていたけれど、すでに中国は日本の不動産バブル崩壊の比ではないほどの不良債権が発生し、通常の資本主義社会の基準ではすでに経済崩壊している。その経済を習近平の独裁体制を確固たるものにするために、憲法を改正し3期目の国家主席を終身とすることで、独善的に立て直そうという意図が見えている。そこには今以上の強権発動を伴うわけで、ここからは中国へ進出した企業への影響は避けられないのではないか?

その意味では、事業における中国比率の高い邦人企業は極めて高いリスクに晒される可能性がある。中国はファーウェイが米国に受けた仕打ちを忘れないし、ハイテク企業潰しに対し忸怩たる思いがあるだろう。そしてロシアのプーチンを見るまでもいなく、国際合弁プロジェクトであるサハリン1、サハリン2は一声で国家が没収できるのが独裁主義である。中国も窮地に立てば、中国に進出している海外企業を僅かな出資によって国有化できてしまうわけで・・・。

すでに世界の潮目は大きく変わっていて、それくらいのことは簡単に起きてしまうというリスク時代に突入していると思った方がいいのではないか?

破綻寸前の韓国経済

さて韓国ウォンの暴落が止まらない。現時点で1440/$と安値更新して政府債務、企業のドル建て債務はデフォルト寸前であり、破綻危機に突入している。英国のトラス首相の優柔不断で結果として落ち着きを見せつつあるポンドの次に狙われるのは韓国ウォンであることは決定的なのだ。そしてヘッジファンドは、経済規模の小さな韓国ウォンを暴落さてることは決して難しくはない。

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後は韓国が政治的な立場を明確にして、日米寄りのポジションを鮮明に打ち出し、荒ぶる北朝鮮と中国・ロシアの防波堤になることを確約することと引き換えに、(米国当局の)政治圧力でヘッジファンドの介入を止めるしか道はない。狂ったようにミサイル発射を続ける北朝鮮は、ミサイルの性能を誇示し小型核弾頭の実験を再開すると思われ、それは取りも直さずプーチンの核戦略(核のブラフ)の一環でもある。

日本は、プーチン、習近平、金正恩という狂人たちに取り囲まれた世界で最もハイリスク国家であるにも関わらず、半数以上が中国のハニトラに引っかかり援助を受けている国会議員で構成された与党という完全平和ボケ国家と化している。だからこそ、ハニトラ議員を徴用する岸田首相を終始批判しているのだ。この人が追加景気対策を打ち出すと、その裏で財務省は着々と介護費用を削り、年金支給を削り、マイナンバーで国民資産を掌握し、課税強化を図り、金融所得課税を強化しで、国民の財産を根こそぎ奪い取る。岸田首相は首相としての資質はほぼ欠如していて、故安倍元首相、菅前首相とは比較の対象外である。

末期的狂人プーチンの考えていること

最後にロシア。今回のウクライナ侵攻によってロシアは国際社会での地位を喪失しただけでなく、国連を有名無実化し、国民を兵士に駆り立てて、無謀な軍事作戦を強行している。そして経済制裁によって兵器の開発も生産もままならない状態に追い込まれ、もはや追い詰められたヒトラーやスターリンのごとく国民の犠牲を意に介さない消耗戦へと突入している。ヒトラー同様にミサイルによって無差別攻撃を掛けるという様は、見るに堪えない狂人の所業だ。

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そしてプーチンはほぼ確実に核兵器の使用を目論んでいると思う。もはや兵士の動員もままならず、武器も弾薬の生産も立ち行かなくなっているロシアにとって、ウクライナ侵攻作戦を勝利するには、戦術核の使用しか手段がなくなりつつあるからだ。狂人と化したプーチンは、恐らく米国は2度と核を使えない国家であると確信しているから報復核攻撃はないと計算しているのではないか?

プーチンは金正恩にミサイル実験を繰り返し行わせ、米国に対しロケットでの核攻撃という圧力を掛けていると思うし、プーチン自身は軍事的な劣勢を一気に挽回する核魚雷の使用を目論んでいると言われる。現在開発中のポセイドンと言われる原子力推進の核魚雷を実験する準備を行っている最中ということで、最大水深1000mで航行するこの魚雷の実験を、世界が目にする形で成功させれば、極めて大きな牽制となる。

さらにロシアのラブロフ外相は「核の使用は国家の危機的な状況の場合に限定される」と発言したが、すでにロシアはウクライナ領内の親ロシアは自治区3地域を独立国承認してロシア連邦に帰属させている。ということはつまり、ゼレンスキーが領土奪還に動けばそれはロシアにとっては侵略行為であって自国の危機的状況であるという、幼稚な理論である。

3:30

ドル円:¥148.860
日経CFD:▲¥400
米国債10年金利:4.010p
ダウ:▲1.28%
NASDAQ:▲2.69%
S&P500:▲2.12%

まだ米国市場には健全な部分が残ってるようだ。そしてドル円は介入いつでもOKの水準だ。