FRBの史上最も危険な賭け:米国リセッション入りの恐怖はドル崩壊に通じる

FRBの史上最も危険な賭け:米国リセッション入りの恐怖はドル崩壊に通じる

今のマーケットを支配しているのは、FRBの金融政策(利上げ)具合、インフレの状況(落ち方)、という目先の環境に対する見方だけれども、もういいんじゃないか!?という気分がどうも蔓延している感じがする。みんなもう飽き飽きしてるんだよねぇ・・・。だからこそ、株価(特にダウや日経)はこうやって反発してきたわけだが、裏を返すと投資家が最も恐れているのは、金利でもなければインフレでもなくて、米国経済がリセッション入りすることそのものなんだよね。

もしも今回、米国経済の後退に歯止めがかからず、リセッション入りしてしまうと大変なことになる、大惨事が待ってる、ということを、例えばFRB関係者とか、財務省のイエレン、そして大手銀行や大手ファンドのCEO達は十分すぎるほど理解していると思う。多分大惨事というのは米国経済だけの話ではなくて、世界的な大恐慌を招く恐れがあるということで、個人的にはその確率は思ったよりも高いのだと思ってる。

膨大な米国債務

米国の政府債務は現時点で約4240兆円(1$=¥135)で、個人債務は3240兆円、その他債務を合わせると米国全体債務はなんと1京2600兆円、そして通貨($)とクレジットのデリバティブ取引は8京2800兆円に上る!けれども実際のマネーサプライM2(現金通貨+預金通貨+定期性預金)は2890兆円だから、通貨デリバティブとクレジットデリバティブがリセッションの進行によって解約・売却の動きが出ると、たちどころにドル不足に陥って、スワップ金利は跳ね上がり、ドル決済が履行不能となり、なんとドルそのものが流動性を失うというとんでもない事態に直面することになる。

すでにサブプライムショック時のデリバティブ量をはるかに超えて、たとえFRBと言えども暴走してしまうと全く手も足も出ない断末魔を迎えることになる。なので、FRBが金融引き締めを行うということがどれだけのリスクを背負うことになるかが分かる。そしてそのこと(ドル不足)を匂わすように「債券の流動性悪化に最大限の注力をすべき」と発言したイエレン財務長官は、パウエル議長以上にドル不足を警戒している。

だからこそ、イエレン財務長官はバイデン政権の財政拡大に極めて行為的な発言をしているわけだ。米国債をFRBに引き受けるよう圧力をかけ、目先のQTを中断するべきという意味でもある。

通貨デリバティブとは例えば貿易をする企業に対し様々な条件のヘッジ契約をすることで、一見為替変動をヘッジできるような建付けのデリバティブ契約だけど、為替が逆変動をした場合、またはノックアウトオプションを設定して急激な変動時に強制決済をするというもので、類似形式はあってもあくまで随意の契約の積み重ねでもある。これがほぼすべての為替取引で行われていて、契約解除には莫大なドル需要が発生すると言われている。

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またあらゆる金融取引にヘッジの意味でデリバティブ契約が行われるようになり、金融緩和の進行とともに爆発的に増加した。(9984SBGの決算ではアリババ株のデリバティブ取引が登場しているよね)このデリバティブ取引は個別契約の積み重ねであり内容も千差万別で、恐らくドル不足が表面化すれば、たちどころにパニックに陥る。

今回のFRBのインフレ退治は「利上げ+QT」であり、計り知れないリスクを背負っていると言えるわけで、リセッション入りして資産の投げ売り、在庫の換金売りが急激に進み、個人消費が低下せず個人の負債が急増するような局面になったり、高額な不動産の売却処分が増加したりすれば、徐々にドル不足が深刻になり、金融機関等は資金提供できない状況になるだろう。そこに至るようなことになれば単なる不況では当然済まされない。

今の米国のリセッションとは、米国の債務危機が表面化するだけでなく、ドル不足から世界経済が同時に崩れるという、とんでもない状況に至る可能性が否定できない極めて深刻な事態なのだ。だからこそFRBパウエル議長は敢えて、ソフトランディングを示唆することで、この恐ろしい金融危機を覆い隠すことにした。そして、マーケットはそれに呼応した形で、徐々に長期金利は低下し、株価は上昇しているが・・・大手銀行はすでに危機を察知し始めていて、貸し出し金利を急激に引き上げ、新たな融資審査を厳しくした結果、短期金利の高止まりは収まらず、逆イールドはますます深刻化しているという状況だ。

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BIS(国際決済銀行)の警鐘

BISは先日、「オフバランス(簿外)通貨デリバティブ(ドル)が8,775兆円隠れているて、過去の経済危機では必ず、ドルの流動性が失われることが発火点になっている」と警鐘を鳴らした。オフバランスであるために、この事実を投資家は理解できていないか、見て見ぬ振りをするか、または気に留めることができないことが極めて大きなリスクとなると言っているわけだ。しかし、これはデリバティブの中でも特に通貨スワップに焦点を当てているに過ぎないけれど、膨らみ切ったドル建て金融市場の債務はデリバティブによってそれよりもはるかに多額となっている。

このことは、10月にイエレン財務長官もドル不足による債券の流動性不安を口にしているし、金利が上昇し債券売りになったときのドル不足を指摘していた。

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リセッションになるとドル危機が表面化

では仮に米国経済が本格的なリセッション(景気後退)に突入したらどうなるか?と言えば、企業在庫、不動産、株式、債券、コモディティに強烈な売り圧力がかかり、ドルの想定以上の希薄化を招く。大口投資家やロングファンドは資産の現金化をこれまで以上に急ぐだろう。そこでデリバティブの巻き戻しとなれば、これは間違いなく史上最大の金融危機に突入する。

もちろん、そうした危機的状況をパウエル議長もイエレン財務長官も十二分に意識しているし、大手銀行のCEO達も確実にそうした事態に備えつつある。マーケットで言うと、仮想通貨やSPACからは急激に資金が抜ける局面があると思うし、不動産は危機的状況になるだろう。その上でデリバティブの巻き戻しが多数発生すると、途端にドル危機が表面化することになるかもしれない。

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暗雲漂う日本経済

恐らく年明け以降、米国景気の悪化とともにリスク資産が売られ始めると、個人的にはドルの流動性低下によって、再度ドル高の方向に突き進む可能性を考えている。つまりは円安が再度進行して、今度は恐らく前回安値を抜くかもしれない。3月になれば日銀人事が一新され新総裁(恐らく中曽副総裁の昇格)となると、いよいよ金融政策の修正局面を迎えることになる。そうなると、円安に歯止めをかけるためにYCCの終了と利上げが行われるだろう。

現在岸田首相の下で増税路線を突き進んでいる日本政府、金融緩和に否定的な日銀、そしてその双方を主導し財政緊縮を画策する財務省によって、2023年以降日本経済はまた緊縮路線に回帰してしまい、民主党時代のような暗黒時代となりそうな雲行き。国民の可処分所得は急激に低下することになる。いま、岸田降しが出来ない自民党も、もはや財務省と中国の傀儡政党の様相を呈しているのだ。

仮に米国でドルの流動性低下による経済危機が起こってしまえば、当然日本経済は重大な影響を受けることになる。現在の日銀金融緩和路線は、円安メリット・デメリットを天秤にかけて円安メリットが大きいと判断した選択であるけれど、恐らく米国がリセッション入りしても円高・ドル安方向へは進まない。恐らく日本経済が米国リセッションの影響を最大限緩和する方向は現状金融政策の維持以外にない。

しかし、次期総裁が中曽副総裁になれば、氏の言動や講演、レポートからして金融政策を転換し、それが日本経済の命取りになる。なぜなら現状の日本株は米国株よりもはるかに安定しているわけで、現行政策が正解であることを物語っているからだ。

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FRBの市場最も危険な賭け

米国は、世界は金融緩和を見境なく遣り過ぎた!その結果デリバティブ取引によって表面化しない莫大な債務を生んでしまった。一見安全な取引や投資に見えても、通貨スワップによって一夜にして莫大な損失を抱えることになる。現在の為替市場がどれほどリスクに満ちたものであるかは、値動きを見るだけで容易に想像できるだろう。だが本質はドルの流動性不安にある。

米国経済がリセッション入りし景気後退が顕著になれば、たちどころにドル不足が顕著になる。そのことを熟知したうえで、インフレ抑制というぎりぎりの金融政策をFRBは行っているわけだ。インフレ抑制に失敗すれば、スタグフレーションという事態を招き、長期間経済は低迷することになり、やがてはデリバティブの崩壊をもたらす。

FRBの言うソフトランディングというのは「景気後退局面を演出することで雇用と賃金上昇を抑え、消費を抑え込んでインフレを鎮静化させるが、経済や企業業績の極端な悪化をもたらさないようにする」ということ。しかしそうすれば、此の先延々とドル流動性危機は温存され、莫大な債務にあえぐ経済が残される。

インフレは地獄、リセッションは崩壊。

いまFRBは史上最も危険な賭けに出ているのだ。