原油価格の上昇は止まらない!?

原油価格の上昇は止まらない!?

最近また原油と非鉄を弄り出した。まずは原油を弄り始めた理由を書いてみます。

原油は現物の需給が10%変動すると相場は50%以上動くと言われてるけれど、この相場は特に投機的な資金が入りやすいから。その資金の出所ははっきりしないけれど、実際に動かしているのは商品系の資金が主体と言われてるけれど、出所は様々なんだろうと。けれども、現実の需給を見ると、今後はタイトになる方向でほぼ間違いないところまで来ているんじゃないかな。

まずは欧州・米国がロシア産原油および関連製品の購入停止を2月から始めます。すでに昨年12月の時点で$60の上限規制を行っていて、これを段階的に引き下げてゆくという方針を打ち出している・・・。つまりロシア産原油は$60以上の契約は終了で、ゆくゆくは$30台にまで規制を強化する方針。

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いやそうなると原油価格は下がるんじゃ?と思うのが普通だけれど、そもそも現時点までロシア産原油は$50台で主に中国、インド、トルコに輸出されているわけで、市場外取引ということでブレントやWTI価格に影響を与えていない。しかもロシア産原油の採算ラインは$44近辺と言われているので、欧米はなんとか採算割れに追い込みたいという事なんだろうね。

けれども途上国にとっては原油をルーブル建てで支払うのは難しいわけで、安くても買えない。中国が人民元建てを主導しているけれど、それには人民元を獲得しないといけない。インドは多分ユーロ建てで買ってるんだろうけど、それもいつまで続くか分からない。ロシア産原油を買って自国で精製して欧州に売るという商売を欧州は快く思っていないんだろうね。

そうなると欧米の価格規制というのは結果としてロシア産原油を原油市場から締め出す方向になる。

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イスラエル ネタニアフ首相

そしてもう一つ、市場外で原油をさばいているイランの動向。日本もイラン産原油を買っているけれど、核合意の不調、イスラエルでイラン強硬派のネタニヤフ政権が再度昨年12月に発足して、イランのイスラム民兵組織への支援を封じ込めるために強硬手段に出ると各国に通知した。具体的には常にイスラエルにとって頭痛の種であるヒズボラやサウジに仕掛けるフーシ派、そして中東のアルカイダ系の過激組織を武器面・資金面で支援しているイランと戦禍を交える方針で、湾岸諸国のスンニ派(サウジ・UAE・カタール・クェート・バーレーン・オマーン等)にすでに通告をしていると言われている。

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そこにイランが、イラン国籍と英国国籍を持つ元イラン国防副大臣のアリレザ・アクバリという人物を英国のスパイとして昨年11月の処刑したことで、急激に関係が悪化し、英国はイスラエルへの支援を表明したと言われている。加えて従来イラン産原油の最大の顧客であってた中国が急激にイランと敵対するサウジと接近したことで、イランの孤立化が深まった。またイラン国内では、ヒジャブの着用違反で道徳警察が逮捕した女性が死亡したことで隆起したデモを強硬手段で鎮圧する姿勢を見せたことで、政情が極めて不安定化している。

そうした中での中国とサウジの接近は、イランイスラム政権にとっては衝撃的であり、イスラエルにとってはイラン攻撃への追い風となる可能性が濃厚になっている。

しかしそうした国際政治情勢に加えて、根本的な意味では、欧米の未曾有の金融緩和によって、原油価格の水準が変わると思うからだ。変動相場制なので、主要通貨が同時に金融緩和するならば、名目上の貨幣価値の低下は回避できることになるけれど、新型コロナ禍が原因とは言え短期間で4倍にも膨れ上がった米国のマネタリーベースを見れば、ドルそのものの貨幣価値が低下しないはずもなく、米国のインフレは起こるべくして起こったと言えるし、ユーロ圏もまた同様である。

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そして実体経済において、基軸通貨であるドル価値を反映するような動きになって当然であり、その意味では供給量がコロナ禍以前の4倍にも膨れ上がったという事実を原油を筆頭としたコモディティが織り込みに行って当然なのかもしれない。つまり、原油価格を考えれば、WTI$70台で底打ちしたとみるべきであるという結論に達したのが、原油を弄り始めた理由だ。原油価格は昨年WTIで$140を超えたけれど、狂ったように世界が地球環境問題への言及を止めない限り、$140は単純に投機的なものではないような気がする。

最後に付け加えると、イランの軍事力はサウジを含めた湾岸諸国より数段上であること、イランの核開発が野放しになっていることで核保有国になるボーダーを超えつつあること、などを考えるとイスラエルがイランを叩く可能性はすでに極めて限定されていること、そして万が一中東が戦禍を交えるならば、日本には原油が90%以上入らなくなること、を視野に入れておくべきだと思う。まさに石油ショックの再来だ。