米国の金融不安と中東のキナ臭さ

米国の金融不安と中東のキナ臭さ

今、株式市場はSVB破綻の話題で持ちきりで、この状況でFRBが利上げを今後も継続できるのか?というところに焦点が当たっている。雇用統計が終わって次は14日のCPIだけど、インフレは僅かに改善するというコンセンサスになっていて、実際大きくぶれることはないだろうね。けれどもインフレが低下傾向を示したとして、それを好感する株価の動きになるような、従来と同様な楽観相場に回帰するようならば、個人的にはそんな動きにはまったく付いて行けないと思ってる。

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そもそも、SVBの破綻なんてことは、FRBが意図してたことなんじゃないの?って思うし、本当にインフレを2%にするためには、経済を正常化するためにはまだまだ事故がたくさん必要なんじゃないの?なので、巷で言うほどパウエル議長はビビッてはいないと思うけどね。でも不思議なのは、SVBの財務悪化の原因が大量に保有する米国債価格の下落だったというのは、多少ショックだったには違いないし、個人的には売却してキャッシュを比率を高めておけば・・・と思ったりもするけれど、金融機関が保有する国債なんてそう簡単に売れるものじゃないんだろうな、と。そもそも国債とキャッシュは同じ扱いなんだろうしね。保有し続ければ償還で毀損することもないわけで・・・。

もしも言われているように、ベンチャー企業が預金引き出しに動いたために、キャッシュフローが極端に悪化したというのなら、売却してキャッシュを確保したうえで、増資または身売りを発表するのが手順だった気がする。けれども、実際には増資を発表したり手持ち債券を売却したと発表して間もなく、カリフォルニア州の金融保護当局によって閉鎖され、FDIC(連邦預金保険公社)の管理下に置かれた。これがあまりにも早すぎたのは、他に何らかの理由があるはずだ。

まぁそこが金融機関、銀行の怖いところで、3ヵ月に1度の決算で時価総額評価してもあまり意味がないというくらいの速度で悪化するときはする。けれども実際にどうなっているのかは好評されないと思っておいた方がいいし、内情が分からないので、此の先も金融機関の破綻は十分にあり得るだろうと思うよ。

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それにこの心理的ショックがかなりの確率でクレディに波及するのはまず間違いないと思う。もしもクレディが破綻することにでもなれば、それこそリーマンショック級以上の金融パニックに陥ることは間違いないしね。個人的には今の金融ジャブジャブ状況を改善するには、シコシコ金利を上げるとか、ジワジワQTで資金を引き上げるとかやっても無理だと思う。

そもそも、金融パニックが起きるというのは、世界中の消費(特に米国)が個人のファイナンスによって成り立っているという経済構造だから。個人レベルでは生活(消費)はすべて借金によって成り立っている。住宅ローン、自動車ローン、学費ローン、やら通常消費はカードローンやら・・・。でもそれは企業も同じで、当局がマネタリーベースを増やした分だけそれは融資や社債発行といった形で投資に振り向けられてるわけで、需要側(消費)が後退したら供給側(企業)も必ず影響を受けるものだからね。

その個人消費の後退はこれからが本番ですよ。ファイナンスで成り立ってる個人消費が経済のベースにあるのに、景気が悪くなると簡単にレイオフできてしまう経済構造だから・・・。ファイナンス自体もすでに限界にきているし、その上で米国経済は底堅いとか消費は大丈夫とか言われてるけど、俺は意外に米国経済って脆いんじゃないかって思ってるしね。環境が悪化に傾けばセンチメントも急激に変化する可能性は大いにある。

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なので楽観はもうできないだろうし、金融機関の連鎖が起きるようなら、要注意領域に突入ってことも覚悟しないといけないよね。

さて週末のもう一つのビッグニュースは、サウジアラビアとイランが中国の仲裁でとうとう外交関係樹立に漕ぎつけたというもの。これでもしかしたらイラン原油が堂々と市場に出回る可能性が出てきたんじゃないかな。OPECはそれを前提にして6月から減産に踏み切る準備をしていると言われているけれど、こうなってくるとある程度原油価格はOPEC主導で硬直化する可能性が大いに出てきたよね。

それに追い込まれたのがイスラエルで、そもそもサウジはイスラエルの度重なる要請にも関わらず、イスラエルがイラン本土を爆撃して核施設を破壊することに同意することはなかった。そしてなんといっても中国はバイデン大統領のうちに、習近平のサウジアラビア訪問から水面下で完全に中東を抑えにかかったとみるべきで、サウジはサウジでこれからの原油需要の見込まれる中国を何とか確保しておこうという目論見だよね。そもそもシェールで自給できる米国を相手にしても仕方ないという腹が見え見え。

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それで、今回のサウジとイランの外交関係回復で、イランはいよいよ核保有国になることが決定的になった。結局米国は、イランの核開発を止められなかったわけで、またしても影でイランに対し濃縮施設を売っているフランスとか、表面的には核合意を推進しつつ裏でしっかりと商売をしているという二枚舌の結果がこうなってしまったってことだよね。

けれどもこの推移をイスラエルはどう見ているのだろう?って思うよ。湾岸諸国に開戦通知をしたネタにエフは、サウジの協力が得られないからといってイラン攻撃を諦めるとも思えないし、見方を変えれば今回のことは、より一層イスラエルを刺激することになるんじゃないか?と言う気がするけどね。

サウジの協力が得られないから、アゼルバイジャンから攻撃すると準備しているし。すっかり中国に出し抜かれた格好の米国だけど、今度は対中半導体輸出規制の一層の強化を打ち出してるし。これでますます日本の半導体装置企業への影響が図れなくなってきたしね。なんだか各国の思惑が入り乱れてしまって、中東はますます分らなくなってきたよ。

 

こんな時に、まさかクレディが破綻するようなことにでもなれば・・・一気に持っていかれるような事態は避けられなくなる。米国内の銀行システムは強靭だ、なんて言ってられなくなる。イエレン財務長官が必死なのは分かるけどね。米国政府は債務上限に達してしまってるわけだから・・・。