より脆弱になった米国金融システム

より脆弱になった米国金融システム

日米株式市場はイケイケモードに回帰した。でも時期的にこのイケイケモードの賞味期限はそう長くないだろうし、せいぜい4月20日くらいまで持てばいいところで、その後は調整モードに入って5月のFOMCを待つという展開だと思う。それまでにチャールズ・シュワブ銀行が持てば、の話だけど。

というか金融危機と言うよりも今回の株式市場急落の意味は、まさに米国政府の財政危機、つまりは米国債そのものの危機なのではないか?ということだよ。考えてもみれば、米銀からの預金流出はいまだに続いていてインフレも高水準であるために、リスクオフの国債買いによって米国債金利は低下傾向にある。その間多くの米銀が何をしたかと言うと準備金の毀損をFRBからの約45兆円もの借り入れで賄い自己資本率を維持しようとした。

そして多くの米銀が、保有米国債を投資債券から満期保有債券へと振り替えることで含み損を帳簿から消し去ったわけだよ。満期保有国債に振り替えれば、時価損失(含み損)は消える。言わば、バランスシート上のマジックをいつも通り行使したということ。けれども会計上満期保有債券とすれば、事実上の流動性は失われるわけで、その手を使えば使うほど金融機関の資金流動性は硬直化する。

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FRBによる資金投入は、銀行システムは強靭であることを維持するため、と言ってはいるものの、見方を変えると金融危機以前よりも格段に財務内容か悪化したということになる。FRBからの借り入れによって自己資本は何とか維持できて、準備金の毀損はなんとか回復したけれど、結局米銀全体の未実現損失は約82兆円になるとブルームバーグは報じている。

と言うことはつまり、これ以上の預金流出に対応する手段は、大量の貸し剥がしを行うか、大幅な貸出制限をかけるか、はたまた今以上にFRBが貸し出すか、しかない状況になったということだね。この状況は破綻した3行以外の他の銀行は、現状は今まで以上に厳しい状況に置かれていると言うことになる。はたしてこの状況で「金融危機は去った」と言えるのか?と思ってしまうよね。

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一方株式市場は、金融危機が落ち着いたと判断したうえで、FRBの利上げも3月で終了かまたはあっても5月が最後という前提のもとに戻りを試すブルマーケットの様相を呈している。その根拠を詳し見てみると、まずは米銀に対する45兆円余りの緊急融資によって昨年からのQTの半分以上を台無しにしてしまったことを実質的に大幅な金融緩和と受け取ったことと利上げの見通しを合わせて、金融政策の実態はすでに緩和方向に動き出している、と見たからだ。

いままで何度も書いてきたけれど、株価上昇の根拠は常にFRBのマネタリーベースの拡大だった。先読みする株式市場は従来と同じようにマネタリーベースの拡大は市場へのマネーサプライを拡大させると見た。だから株は買いと言うのが論拠になっていると思う。

けれども今回の株式上昇は短命に終わる、少なくとも5月のGWまでは持たないと思っていて早ければ4月中旬には失速すると思っている理由は、今回はマネタリーベースの拡大がマネーサプライを増加させないと言うことが、分って来ると思うからだ。つまり銀行の状況が改善しないどころか、日を追うごとに悪化してくれば、その穴埋めは結局マネーサプライの圧縮以外にないからだ。

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そうかといってFRBは今以上に、銀行の経営が悪化するたびに資金投入をすると言うことになれば、モラルハザードだけでなく米国債の暴落も招きかねない。そしてタイミングとしては債務上限問題が全く進展していない今、最悪の選択になるからだ。

 

少しの間、少なくとも米企業の決算見通しが発表されるまで、またはリセッション入りを予感させるような景気指標が出るまでは、恐らく盲目的に株式市場はジワジワ上昇するかもしれない。けれどもFRBが利上げをできなくなるという理由は、インフレの動向だけではない。いまだにビットコインは高値水準を保ち続け銀行預金の流出が止まらないという状況があり、そしてその上に雇用と消費が弱ってくれば、それはリセッションの扉を開くことを宣言するに等しい。

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超低金利と超金融緩和で好調だった企業業績が、市中金利が2倍、3倍になっても好調持続など出来るはずがない。そもそも消費者にとっても急激に増加した金利負担に耐えられるのも限界がある。なので真っ当に考えて企業業績は悪化するしかないし、雇用・消費も厳しくならざるを得ない。

さて米議会で債務上限が引き上げられるまで、米国債金利は徐々に上昇を開始すると思う。そして10年物国債金利が3.900pをブレイクすると相当に危険な状況が生まれる。FRBがいざとなれば以前と同様に大量の資金投入で火消をするしかないということが分かってしまえば、金融システムはカオスに突入すると思う。そしてそれが急激なドル安につながるようなら、その時がジャブジャブ経済の終焉となると思う。

実際いろいろ調べたけれど、これを絵空事で片付けることなど、全くできないと思ったし、それどころか予想以上に確率は高いと思わざるを得なかったという週末になった。