EVに思い切り突っ込む!ホンダと日産、大丈夫かなぁ・・・

EVに思い切り突っ込む!ホンダと日産、大丈夫かなぁ・・・

ドイツのVWがとうとうEVの生産を大幅に抑制すると言い出した。曰く「EVの需要がない」と。なんでもVWが当初想定していたEV需要の30%減しか見込めないという調査結果らしい。もともとEUのエンジン車規制に対して合成燃料(e-fuel)車を認めろと抵抗を示していて、環境にやさしい合成燃料(建前)なら、という許可を取り付けていたけれど、EVは売れない、EVは儲からない、という本音が出た、ということなんだろうね。

自動車生産台数世界第二位のVWがEVに関して悲観的な見方をし始めたことで、首位のトヨタと並んでトップ2が全面EV化に対して正式に疑問を呈したのも同然の状況になって、いよいよEV至上主義に赤信号が灯ったと言える。

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EVと言えばBYDを筆頭に数十社が犇めくと言われる中国だけど、中国政府はEVに多額の補助金を供与していたから雨後の竹の子のようにメーカーが出現した。あの不動産ディベの恒大集団もいまはEVをシャカリキになって作ってる。けれども折からの国内経済の落ち込みでEV車が売れず、中国国内には数千台単位の投棄された完成車置き場が彼方此方に点在する有様。その上廃車問題でバッテリーによる深刻な環境汚染が発生している。BYDなどの大手は欧州への輸出が伸びていると言われてるけれど、経済が減速し始めてる欧州で廉価販売を展開しているに過ぎないわけで・・・。

というわけで現状ではEVを購入したら最後、その維持・運用にとんでもない労力を費やさなければならないことに、多くのユーザーが直面している。例を挙げるとキリがないのでここでは省くけれど、個人的には全面EV化は有り得ず、せいぜい普及率は10%程度まで、と見ているけれどどうだろうね。

そこで、非常に気になるのは2035年までに100%EV化するという戦略を掲げたホンダ「Nissan Ambition 2030」で2030年までに50%以上の生産をEV化するという日産だ。トヨタは全個体電池を2027年~2028年までに実用化するという目標を掲げていることもあり、佐藤新社長はEVに力を入れると宣言しているものの、その生産規模はトヨタ全体から見ると10%程度を目標にしているに過ぎない。

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そこでまずホンダだけど、ホンダが強気な理由は燃料電池らしい。水素を使って酸素との化学反応で発電するというわけだが、このシステムに自信を持ってるというわけだよ。これはトヨタもやっているけれど、トヨタはガソリンの代わりに水素を燃焼させるという方式に力を入れてるみたいだ。そうした事情を受けて経済産業省が水素基本戦略を改訂し2040年までに官民合わせて15兆円の投資を促して水素生産整備やステーションの普及に努めるとした。

けれどもホンダは従来のレシプロ技術を捨てることが出来るのか?と。結局ホンダこそが水素エンジンに取り組むべきじゃないか?って思ったりするし・・・。いくらカーボンニュートラル車を実現すると言ってもそもそも水素の生成に大きな電力を必要とする以上、建前論に思えて仕方ないんだけど・・・。

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そして日産だけど、日産のアプローチはかなりEVに比重を置いている。EV化を推進し自動運転と組み合わせることに活路を見出そうとしている。そして欧州ではルノーとの合弁でいよいよEV専門の企業を立ち上げるようだけど、今後コモディティ化が避けられないEVの分野で、果たしてまともに競争して行けるのか、そして大きな市場である欧州を合弁でカバーしてしまって、経営が成り立つのか?という大きな課題がある。

兎に角、EV開発にこれまで莫大な投資をしてきて財務的にはかなり厳しい状況に陥っていることは確かで、変に価格競争に巻き込まれるようなことになれば、非常に苦しいだろう。過去に日産の経営陣が無暗な車両開発ばかりを優先させ、バブル崩壊という環境の変化で経営が行き詰まったことを考えると、今の経営の在り様は危険な感じさえする。

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なのでホンダも日産も、長期投資を考えるとかなりハイリスクである可能性が否定できないと思う。とにかく2000年代に入って急激に盛り上がった地球温暖化の議論は、CO2排出権売買というマーケットの形成に失敗した後、突如としてEV議論が巻き起こった。環境負荷を抑制する、からSDG’sという議論に発展し、政治主導で地球環境保護を標榜した政策が次々に登場した。自動車メーカーの立ち位置として、政治主導で刻々と厳しんなる規制に対応しなければ事業が継続できないと判断したのだと思う。

しかしながらEV化を主導すればするほど、電気の需要は鰻登りになり、莫大な発電所建設投資を必要とする。また中国やインド、ブラジルといった大国のCO2排出量が経済発展とともに増え続けることを考えると、この脱ガソリンエンジン競争には明確な未来が見通すことが出来ない。一体何のためにそこまでEVを主導するのだろうか?

そしてEV車製造には多種多量のレアメタルが必要になり、その供給は中国、ロシアに偏っている現状では、余りに政治リスクが大きすぎる選択と言える。そして真剣にSDG’sを議論するのであれば、今後続々と増えるEV車のバッテリー処理問題、さらには太陽光パネルの処理問題は、原子力発電の核燃料廃棄問題と同等な深刻さをもたらす可能性を考えるべきだ。

世界の政治家がそれを議論しないのは一体どんな理由があるのだろう?

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EV化は産業のイノベーションである、という意見がある。確かに現在は従来のガソリンエンジンだけでなく、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、EV、燃料電池、水素エンジン等多様な展開の様相を呈していて、ここまでバリエーションが拡大すると、量産効果によるコストカットが非常に難しい状況にある。それでなくても半導体不足やレアメタル不足と言った価格高騰要因に加え、人件費や部品原材料費の高騰によって、車両価格は鰻登りの状態になった。

昔、R32GTRを500万円くらいで購入した。若かりし頃の自分としては清水の舞台から飛び降りる思いだったわけだが、僅かに280psのこのスポーツカーはもちろん後席に家族を乗せることなど出来ず、実用には耐えられないと感じたけれど、当時は最高のスポーツカーをドライブする喜びは感じることが出来たし、確かにR32は日本の市販スポーツカーの頂点だった気がする。

でも今では、電動モーターのセダンが軽く600万円、700万円する時代。小型のEVでも下手をすれば400万円という信じられない価格になってしまった。そうしなければ自動車メーカーは利益が出ないからだろう。にもかかわらず、これからEVのコモディティ化に突入しようとしているわけで、ホンダや日産がそれに耐えられるのか?という疑問をどうしても払拭するとができない。