百田・有本・河村の日本保守党について考える

百田・有本・河村の日本保守党について考える

政治団体・日本保守党が政界に旋風を巻き起こしつつある。以下個人的な感想と断っておくけれど、今の自民党を中心とする政治の感度が実に悪い、というか最悪の状況だということは、保守・リベラル関係なく国民のほぼ全員が感じていることだと思う。

もちろん日本には保守派もリベラル派も共産党支持派もいる自由な国家だけれど、主義主張を抜きにしても今の政治家がそれそれの期待に応えるような、世の中の変化に敏感に対応できる政治姿勢を維持しつつ活動してくれる政治家の希薄さに失望しているのではないかな。

例えば与党自民党を例に取れば、少なくとも国会議員は何を根拠にしているのか分からない「平穏な社会」「平和な日本」を前提にして、現実の社会問題に向き合おうとはしていないし、国会議員と言う特権意識の中で、「政治ごっこ」をしているとしか思えない。

傍目には国会議員の活動の99%が、次期選挙のための対策といっても過言ではないと思うし、そのために、例えば懇意にしている業界のために便宜を図り、自身の選挙区の地盤を守るために活動し、自身の選挙資金集めに奔走し、「政治ごっこ」をしているふりをしているだけに見える。もちろんごく少数、政治をしたいと思って活動している議員もいるだろうけど、それでも先立つものの基盤(カネ・鞄・看板)あっての話だと割り切る。

日本の国会議員は、日本の労働生産性が下位に甘んじようと、GDPが低迷しようと、全く意に介さない。このまま何事もなく次の選挙で当選することが最大の政治目的であって、そのためだけに奔走していると言っても過言ではない。それは与野党共通だろう。

自民党はリベラル!?

日本保守党は、「今の自民党は保守ではなくリベラルだ」と主張しているけれど、実際に自民党が保守政党だということを意識している国民はそれほど多くなかったのではないか。国民もまた、自民党に期待するのは、地域のインフラ整備であったり、地域行政への圧力だったり、要するに利益誘導してくれさえすれば何も文句はないという姿勢なのだから、主義・主張などはさほど気にならない。

そうして油断しているうちに自民党がリベラルに傾くのは当たり前の話で、過半数を占める与党であるなら、保守だ、リベラルだ、ではなくてあらゆる階層からの票が必要だからなのだ。しかも、自身の選挙区で自公協力が必須と考えるならば、当然公明党寄りの政策を表に出さないと当選はおぼつかないとなればなおさらだろう。

与党自民党が安定多数の議席を確保するということは、そういう事なのだ。

そのことは立憲民主党の凋落ぶりを見れば、明らかに自民党にリベラル票を侵食されていることからも明らかで、そんなことは今に始まったことではない。日本保守党の百田代表も有本事務総長も、故安倍晋三氏の保守姿勢を賛美しているけれど、安倍政権時代からすでに自民党が選挙で勝つたびにそうした姿勢は強まっていたと思うし、今いたずらに安倍政治を懐かしんでもあまり意味はない。

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民間人が立ち上げた政党

政治が民意から乖離してゆく様を見て、我慢の限界を超えたとする日本保守党の結党理由は、今の日本で最もダイレクトに民意を反映する存在だと思う。その最大の意義は作家である百田尚樹氏とジャーナリストの有本香氏という民間人が立ち上げた政党(政治団体)であるということに集約されるし、そのことは民意に最も近い政治団体であるということを意味する。

もちろん、維新も令和新撰組も、そして参政党も当初の成り立ちは同じかもしれないけれど、保守政党と言う意味では非常に分りやすい面を持っている。これが極めて重要な部分で、これが維新も令和新選組も参政党も国政政党になると瞬く間に色褪せた。

少なくとも維新は立憲民主党の凋落を梃にして党勢を拡大しているものの、保守政党とは主張していないしいいとこどりの姿勢であって主義主張に一貫性はない。口を開けば「是々非々」というばかり。令和も参政党も国政政党としてそれなりの構えはできたものの、一時の熱は冷めてしまった。

つまりは、自民党と民主党の二大政党制の綻びから生まれた仇花に近い存在に見える。特に維新は民主党が離合集散を繰り返し自滅した代替政党のようなものに見える。

では何故、色褪せてしまうのだろう?少なからぬ国民が期待し、一票を投じても政治の核にはなれない政党でしかないのだろう?既成政党の代替政党でしかないのだろう?その答えはもしかしたら意外に簡単なことなのかもしれないと最近思い始めた。

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減税日本と特別友党関係!?

日本保守党の有本香氏は、結党を目指すと決めたとき早い段階で、河村名古屋市長に声をかけたという。米中が捏造した南京問題に関し、中国の代表団を前にその歴史を否定した河村氏を高く評価していたからだといい、その政治経験をぜひとも必要と感じたからだという。

河村名古屋市長は地域政党(政治団体)である減税日本を率いて名古屋市長を14年間務めている75歳の高齢者である。にもかかわらず声をかけ、名古屋のみならず日本の国政改革に引きずり出すために日本保守党共同代表という地位でオファーした。

もちろん主義主張の違いは少なくないけれど、長時間互いの政策をすり合わせ、名古屋という地域基盤を日本保守党に組み込むことに成功した。これは明らかに維新の政治手法に倣った戦略ではあるけれど、有本氏は恐らくそれ以上の可能性を感じたからではないか?と思う。

数々の物議をかもした河村氏ではあるけれど、減税政策に成功したノウハウを持つ唯一の政治家であるとともに、いまだ日本の政治批判を続ける唯一の首長であり、国会議員の経験も持ち合わせている現役の政治家であるという事。いかな人気者の民間人が立ち上げた政党とは言え、政治ノウハウが全くないというのでは話にならないということ。

けれども有本氏はそれ以外に河村氏に大きな魅力を感じていたに違いない。

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有本氏が百田氏から学んだもの

恐らく有本氏と百田氏が親密になったのは、「虎ノ門ニュース」というYOUTUBE番組なのではないか?もちろんそれ以前に機知は合ったとしても、その番組で共演して政治評論を始めてから、百田氏の奔放な言動をいぶかる場面を何度も見た。恐らく共演当初は「嫌な相手」と思っていたのに違いない。何せ百田氏は、政治家言葉も評論家言葉も使わない、大阪人そのままの人物であったからだ。

1000万部を軽く凌駕する日本最高の売れっ子作家である百田氏は、その自信からか歯に衣着せぬ言動を連発していた。とにかく百田氏の話し言葉は、高飛車い構えた大作家の言葉でもなく、一般大衆のそれだった。アホ、バカの連発で実名告発もいとわず、「虎ノ門ニュース」では「このおじさんは癇に障る」という表情を連発していた。

しかし、百田氏が歴史教育を大転換しなければ、と言う思いでこの日本の歴史を全て書き直すと宣言し「日本国紀」の執筆を開始すると同時にそれに賛同し編集者の役割を買って出てから、この気の遠くなる作業を通じてお互いの歴史観を刷り合わせる中で、百田氏の偉大さに気付かされたのだと思う。

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「日本国紀」は2000年以上続く日本の歴史を再編纂するという壮大な作業だったと思うが、見事にこのコンビがそれを成し遂げた。その間にも百田氏の暴言はネットメディアで続いていたものの、有本氏は「本当に大事なこととは、政治を分かりやすい一般大衆の話し言葉で訴えること」だという思いに至ったのだと思う。

そう、今の政治に最も欠けているものとは、国民の親しみやすい言葉で話しかけることなのだと。そこには当然喜怒哀楽の表現がダイレクトにあってしかるべき。なんでもオブラートに包み込むような政治言葉も、どうにでもとれるような評論家言葉も必要ないし、ましてメディ受けを狙う必要は毛頭ないのだということを学んだ。

そこに百田氏と同様に歯に衣着せぬ河村名古屋市長の存在意義も見出したのでは、と思う。この今の日本政治に最も重要であるが、最も欠けている「国民目線での物言い」が「日本国民を動かす最大要素」であることを有本氏は掴んでしまった。そしてそれこそが日本保守党の最大の美点と見る。

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一気呵成に走る必要あり

百田代表はまだしも有本事務総長は、早急な議員擁立に拘らず、としていて、5年10年というスパンで党の基盤を固めるつもりであると表明しているが、それで果たして刻々と変化する世界情勢や国内政治の劣化に間に合うのか?と言う疑問は残る。それは普段両氏が発言している「日本は急速にダメになる」ということと矛盾した方針なのでは?と思う。

従って今の状況では、保守系の支持者、言論人、事業家の総力を結集するような一大勢力を作り上げることが重要と思う。最初は手堅く数人の当選を目指すという選挙戦略は捨て、出来る限り多くの候補者を次期総選挙では建てる必要がある。なぜなら、そこで問題になるのは得票数であるからだ。

そしていまのムーブメントを消さないために、国会のキャスティングボードを握るくらいの勢力を一気に構築する必要があると思うし、そのためには政治経験者に拘る必要は毛頭ない。全国遊説や街宣も必要だとは思うが、実際問題として保守系の言論人、有名人を全て動員するくらいのパワーが必要で、日本国紀編纂と同様の力を発揮し、一気呵成に突っ走る必要があると思う。

そのために、百田氏、有本氏の出馬はもちろん河村名古屋市長の出馬は不可欠。高橋洋一氏、櫻井よし子氏、竹田恒泰氏、杉田水脈(現自民党衆議院議員)、青山繁晴氏(現自民党参議院議員)、高市早苗氏(現自民党衆議院議員)等々の保守勢力を結集するくらいの意気を見せて欲しい。その上で最低でも衆議院選挙で15議席は確保して欲しい。

そんな絵空事のようなことでも実現しない限り、今の日本は変わらない。