日米株式市場:バブル崩壊はソフトランディングを許さない!

日米株式市場:バブル崩壊はソフトランディングを許さない!

今の米国経済は、言い方を変えると完全に「消費者バブル」となっている。事実、11月、米国のクリスマス商戦は予想外に強かったと言ってもいい。でも、予想でも決して景気後退を表すような数字ではなかったし、今の高金利状況を考えると、「異常に好調」と言い換えることが出来ると思う。

米国の消費が好調な原因は何か?という議論に対してアナリストは、新型コロナの時の給付金で人々に貯金が出来て、それを使っているからまだ大丈夫、とかいう出鱈目を平然と言い放っている。けれど、そんなものがいつまでもあるはずもなく、もう2年前には呆気なく消えているだろう。米国では一人当たり総額で100万円に届こうという給付金がばら撒かれたけれど、この高インフレ下では、使うとなると一瞬で終わるし、とっくに終わってる。

次にクレカで限度額いっぱいまで買い物をするか、キャッシングをする。けれどクレカの返済は大半がリボ払いなので、今では20%以上の金利を毎月支払っていることになる。それが最近では8%を超える返済不能率になっていて、新型コロナ禍の初年度と同等水準だ。すでに銀行は高金利状況で一段と審査基準が厳しくなったため事業融資が出来ず、かろうじて、担保価値の高い住宅向けの貸し出しが回っている状況である。そこでアルゴやAIを使ったBNPL(バイナウ・ペイレイター)という決済手段が注目を浴びるようになった。

米国ではアファームという企業が受けていて、クレカのような月々の与信総枠管理ではなく、商取引(商品売買)毎の個別与信として管理するという方法で、買い物毎に個別に細かく管理すれば個人の与信はまだまだ使えるということで、多くの小売企業がこれを導入した。

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このBNPLとは、数週間の据え置き後期限の決済であればば金利・手数料はかからないけれど、数週間の据え置き期間の期限を超えると30%以上の金利が掛かるという暴利サービスだ。なので個人の与信管理をしないため、銀行やクレジット会社等の金融規制にかからず、現時点では野放し状態になっている。このBNPL(バイナウ・ペイレイター)を、ウォルマートAMAZONが導入する(またはした?)ということで、米国の消費は現時点で破綻寸前であって将来は破綻必至と言ってもいいくらいだ。

恐らく米国で噂される金融懸念とは、慢性的に赤字が爆発的に拡大し続けるアファームが、個人投資家のデフォルトの連鎖が起こると破綻するのではないか?ということ。そうなると、この決済サービスを提供しているすべての小売業者は資金回収で影響を受けるだけでなく、頼みの綱である販売手段を失うことになる。

米国消費者の大半は、このインフレと金利高で、給料の大半がローン返済に消え、手元に現金が残らない家計状況であると言われている。しかしすでにクレジットカードの与信も限度額に達していて、リボ払いには20%以上の高金利がこれから待っている。10月から学生ローンの返済も再開され、既存のローン金利の高騰と相まって買い物もできなくなってきている。そこでBNPLが一躍脚光を浴びて、いまは多くの米国消費者は飛びついている状況にある。

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また増え続ける地銀への資金投入によって、FRB自体のBS(バランスシート)も急激に悪化していて、中銀としての信頼感を失うわけにはいかないという危機的状況が、足元で懸念され始めた。なのでFRBは何としてもこれ以上地銀の経営悪化を食い止め、資金投入を終わりにしないといけない状況がある。

12月のFOMCではパウエル議長の予想外のハト的発言が、サプライズとなって株価はここまで上昇し続けた。しかし、この発言は現在の米国経済の苦しさを物語るものだったのではないか?と思う。インフレを抑制し目標の2%にすることはFRBの使命とも言えるものだが、その前に金融引き締めの高金利政策によって、一見好調に見える米国経済は、その70%を占める個人消費が崩壊しつつあるということを、公に発表したも同然だ。

飽和状態だった債券市場で、サブプライム住宅ローンを金融工学を使ってAAAの高金利商品に作り変えてしまった結果、世界中の金融機関やファンドが飛びつき、サブプライムローンのデフォルトが続出して一気に流動性を失ってしまった結果、世界的な金融危機(リーマンショック)に見舞われた。この時住宅バブルが崩壊したと言われたが現実は金融バブルの崩壊と言えるものだった。

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BNPLの存在は、まさに当時のサブプライム債券と同じだと思う。金融バブルの末期に救世主のように登場する金融商品や金融システム。仮にBNPLで個人がデフォルトした場合、その個人が関わるクレカや住宅ローン、自動車ローンは一気にデフォルトへと向かう可能性が高い。BNPLは個別取引の与信管理だから、波及することはないという理論が果たして通用するかどうか、それが一番問題であって、それこそはサブプライム債券のAAA格付けなのだ。破綻するときは破綻する。

従ってその様子を注視しつつFRBは市場の思惑通り、来年早期の利下げに動く可能性が高いのかもしれない。そうだとしても、米国消費者の膨れ上がった高金利債務を帳消しにするわけにも行かず、すでに、完全に手遅れである。インフレを抑え込もうとすればするほど、賃金は上がらず、したがって消費者は債務を減らすこと自体ままならないからだ。

米国経済は完全に金融バブルだった。すでに2022年の3月から金融政策は引き締めに転じているにもかかわらず、消費者はいまだバブル気分。そのために企業業績も予想外に落ち込むことはなかった。そのため、株式市場では「米国経済はソフトランディングする」という願望がコンセンサスになってしまった。米国株と連動する日本市場もそのことが前提になっているが・・・。

日米株式市場は近く足元をすくわれるだろう。バブルは完全に崩壊するものだから。