中東情勢はVシネマの世界!?

中東情勢はVシネマの世界!?

イランはイスラエルに対する報復攻撃を実行したけれど、イスラエルはほぼ無傷でこの攻撃を凌いだ。イスラエルの防空システムと米英軍のアシストによって、ミサイルやドローンをほぼ全機を迎撃し、ごく一部がイスラエル軍基地に着弾したのみで、死者も出ていない。

攻撃終了後イランは、「(イスラエルが強硬手段に出ない限り)戦闘の継続はない」と発表したことで、週初のマーケットは落ち着きを取り戻すと思われる。

一方のイスラエルは、思惑通りイランの直接攻撃を誘い出すことに成功し、イラン本土への直接攻撃の大義名分を得るとともに、米英に対する同盟関係を確認することが出来た。

こうした戦闘は、両国のデモンストレーションの側面が大きく、恐らくイランは米英に対しイスラエル攻撃の事前通告を行っただろうし、十分に迎撃の準備を行った上での物だったと思われる。茶番劇とまでは言えないが、結果はどうあれイランのハメネイ師の(イスラム世界での)面子を保つことには成功した。出来レースであれ、何であれ、イラン本土からイスラエルを直接攻撃したことに変わりはなく、そうした行為は明らかに「二国間の戦争行為」であることに変わりはない。

Advertisement

さて、昨日書いた通り、今度はイスラエルがどこまで我慢できるかが試されることになる。

こういうのを見ていると、ほとんどVシネマMの世界と酷似していると思った。まるでシマを巡るヤ〇ザの組同士の抗争と同じ。まずはシマの拡大を巡って局地的な対立が始まり、それがエスカレートすると組事務所の玄関先に数発の弾丸を打ち込む。そのままでは、弱腰と見られかねない本部では、規模を拡大した報復行為に出る・・・。そこにこれ以上の抗争拡大を阻止するために権威のある親分が仲介に入り、何事も起きなければ手打ち式となる。

ところが、それでまるく収まると、物語は終わってしまうから、必ず手打ちの条件に不満な子分がいて、事を拗れさす行動に出る。Vシネマのストーリーはそこからが真骨頂なのだ。

そういう見方をすれば、イランのハメネイ師はなんとかギリギリ面子を保ったけれど、ネタニヤフを始めイスラエル政府内の急進派は「直接攻撃」をどう受け止めるのだろう?というところまで来た恰好。ガザ地区での抗争はイスラエルにとっては引くに引けない状況になっていて、ハマスも停戦を拒否していることから、とても手打ちなど出来る状況ではない。本格的な抗争の火種はそのまま残されたまま、なのだ。

Advertisement

そもそも、イスラエルがイランを攻撃したい理由は、イランの核開発を中断させ核保有を阻止したいから。イランが核武装をすれば、その標的はイスラエルになることは明らかだから。そうなると、イスラエルも従来のようなパレスチナへの入植も出来ず、領土を広げることは出来ないし、ヒズボラやフーシ派との戦闘にも影響がでる。そういう意味では、今回のイランの直接攻撃は、イスラエルにとっては「ミサイルによる核攻撃が具体化した」ことを意味するわけで、恐らく水面下では相当の脅威を感じているだろう。とうとうイランによる核開発は止められなかった。イランの格濃縮のための遠心分離施設は無傷で、もはや十分に臨界可能な濃縮ウランを所持していて、いまや核保有国となったとみなさねばならないからだ。

となると中東は、イスラエルとイランという核保有国同士がにらみ合う新たな局面になったと言える。もっともイスラエルの核は米軍の装備だけれど。なので、今回のイラン直接攻撃の意味は、中東の情勢が従来とは異なる新たな次元になったと認識しないといけないと思う。

バイデン大統領は今回のイラン報復攻撃に関し緊急でG7を招集したけれど、各国首脳が中東情勢の変化を十分に認識できるとは思えない。特にエネルギーの大半を中東に依存する日本の岸田首相は、何に一つ対策を打つことはないと思う。しかるに週初の株式市場も何事もなかったかのように寄り付き始まるだろう。イランが攻撃の終結をコメントしなかったとしたら、大変な状態だったろうけど、結局出来レースと結論付けて、楽観相場は継続するのかな、と思ってます。