これから先の株価暴落の要因を想定しておく

これから先の株価暴落の要因を想定しておく

今回の日経平均暴落は何故起こったか!?

週末ともなると様々な意見が様々な人から発信されているけれど、どれももっともらしく聞こえるし、客観的にみたらそう分析できるのかな、という内容で、暴落が起こっている事象そのものを分析すれば、誰だって結論は同じになるのかな、とも思うもの。それらの意見に対して、俺なりの見方を書いてみたいと思います。

〇 円キャリートレード巻き返し説

今回の暴落は日銀が唐突に!?0.250pの利上げを強行し、さらに植田総裁が今後も継続的な利上げを示唆するタカ派的発言をしたことで、FRBの利下げ期待と相まって日米金利差が縮小するために、円キャリーの旨味が薄れることを懸念したヘッジファンドが、株価暴落により発生するマージンコール(追証)を懸念して、日本株の持ち高を減らしたというもの。

確かに円キャリーの資金運用は無茶苦茶で、外資は低金利の円を借り入れて、ドルにイクスチェンジして、それをハイレバ(10倍~50倍程度?)運用するという構図。だから日銀の金融緩和は世界のマーケットの主要資金になっていて、メガバンクや機関投資家は外資に対して底抜けに融資をしていることが世界の株バブルを引き起こしていたと言ってもいい状況がある。

なので、僅か0.250pと言っても実質的には2.5%~12.5%、手数料を入れると5%~25%という高額な損失となるので、ビビるんです。同様に今度はFRBが9月に利下げを行うことが決定的になっていて、これも0.250pであることはほぼほぼ確実で0.500pという大幅利下げは出来ません。なので今度は米国側の利下げに対してヘッジファンド等投機筋はこれから準備をしなきゃいけないという局面です。

リーマンショックの時もハイレバ取引が暴落の主要因だったわけで、今回の暴落要因も本質的には何ら変わらないもの。だからあれ以来FRBは懲りて、フォワードガイダンスで事前に政策変更をブラックアウト期間前に示唆して、時間的余裕を与えるようになったわけだが・・・。

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〇日銀の情報リーク

金融政策決定会合の前日、深夜0時前に共同通信とNHKの日銀リーク情報が出回った。これが何を意味するのか?ということが非常に重要なのだと思う。メディアはこのことの意味にはあまり触れないけれど、今回の株式市場の暴落の本質はここにあると言っても過言ではないと思っている。

そもそも、今回の日銀の利上げは政治圧力によって既定路線になっていた。ボロボロの自民党・岸田政権は総裁選を控え、失地挽回のためにインフレ抑制を国民にアピールしようとした。財務省は円高誘導をして先の為替介入の正当性を訴えたかったし金融機関からの利上げ要請もあった。そこで「政府・日銀連携」を御旗にして日銀の利上げ圧力をかけ続けたということ。そして7月に入るとそれは既定路線化していたわけだ。

だからこそ、河野太郎や茂木敏充という金融政策など全く理解も出来ないポンコツ政治家が、閣僚や幹事長という地位を利用して「金融正常化」を訴え、利上げを正当化する発言を始めたわけだ。こんな連中が金融政策の在り様を事前の確信もなく言い出すはずがないし、その立場でもないにもかかわらず、(私は分かっていましたという)自己アピールのために総裁選を睨んで発言したということ。

さらには、日銀から政策決定会合初日終了後に、正式に決定した旨を政府に報告し、その情報が同日夜にメディアに(政府筋から)リークされたというわけだが、実際にはメディアは記事の配信準備を終えていて、ウェイティングだったらしい。なのでこの日銀リーク問題は日銀批判もされたけれど、政策決定から情報リークまで、すべては政治主導だった。当然政治家はマーケットに対する影響など全く分からず理解もできないわけで・・・。しかも発表が深夜と言うことは、日本の投資家は無視で米国投資家に対する忖度だったと言える。

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〇バフェットのAPPLE売り

ヘッジファンドのポジション巻き戻し(円キャリー取引縮小)のきっかけの一つに、直前に市場を駆け巡ったバークシャー・ハザウエイ(ウォーロン・バフェット)のAPPLE売り情報。バフェットは6月後半から7月にかけての上昇局面で、膨大なAPPLE持ち株(持ち株の半数)を売り逃げた。いままで、バークシャーの取引動向はほとんど表面化することはなかったけれど、8月3日の決算で持ち株数が明らかになった。それを見たヘッジファンドは5日(月曜)に、大量の日本株売りを実行し、日経平均株価は▲¥4,451の大暴落となったわけだ。

APPLEと言えばAI搭載IPHONEの発売をこの秋に控える、AI収益化のリーダーと見られていただけに、円キャリーでAI関連に投資していたヘッジファンドにはとてつもない衝撃になったことはまず間違いない。AI相場と言うのは一種異様な様相となっている。つまりNVIDIAのGPUが独り勝ちであり、AI投資をしなければ、これからは生き残れないという危機感がテック企業にあって、我先にと1個500万円以上するGPUを数千個、数万個単位で買いあさったし、AI投資そのものもヒートアップしていた。その結果NVIDIAは爆発的な利益となったものの、この熱狂は次のNVIDIAを探す方向に大きく舵を切っていたわけで、APPLEはその有力企業の一画と見られていただけに、ショックは大きかっただろう。

このことが日経平均の暴落に拍車をかけたことは、ほぼ間違えないと思う。

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〇日本発世界同時暴落の可能性

個人的にこのブログで先日発表された米国7月新規失業保険申請件数に関して、かなり疑わしいと書いた。その理由はアカウントするだけの数字にもかかわらず6月の修正がなされていたということ、それに各州ごとの申請件数をトータルして発表している数字であることだった。

これに関しては株式市場もいままで材料視することはほとんとなかったけれど、今回は悪化した7月雇用統計の補完資料と見られていたことで、株式市場は強烈に反応し上昇したわけだ。もしも、この数字が悪化していたら米国市場はさらなる暴落となったことは確実だが、それ以上に強烈なキャリートレード解消の動きが出たの違いない。

米国ではFRBが緊急会合を開催し利下げすべきだ、との意見も大きかったし、9月FOMCで0.500pの利下げがコンセンサスになり年内三回の利下げが適当というコンセンサスになったところで、新規失業申請件数の悪化は致命的になるに十分だったから。

そこで米当局は、「景気は持ち直してます」みたいな演出をして、なんとか大統領選挙前の株式市場暴落を回避しようとする思惑が見えた。

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けれどもFRBの利下げ方針を覆すだけの根拠にはならず、9月には0.250pの利下げに踏み切らざるを得ないだけの十分なデータは揃ってる。そしてその前の8月雇用統計の発表で、さらに悪化するような事態になれば、再度暴落局面に火が点くことになりそう。そうなると利下げサイクルが確定することになるから、キャリートレードの大幅な縮小になることは必至だからだ。

問題なのは、ここまでの株式市場の上昇を支えてきた円キャリートレードが、どの程度の資金効果を生んでいるのか誰にも正確な数字がわからないこと。一説には1兆ドル(約145兆円)程度と言われているけれど、実際の運用に関しては10倍~50倍のレバレッジ取引も少なくないことを考えると、145兆円×レバレッジと考える方が実態に近いし、さらに言えば大半がオフバランス取引のため、実態把握が出来ないという最大の欠陥を露呈することになる。

リーマンショックはサブプライム債券の流通量が不明な点が最大の懸念だったわけだが、今回はそれにあたるのが円キャリーの運用と言うことになる。つまりはリーマンショック時よりもはるかに多額の運用に対する懸念があるということになる。

となると一旦キャリートレード解消の動きが出れば、世界同時暴落の可能性は想定以上に高いのではないか?と思っている。

最後に

バフェットが手持ちリスク資産をキャッシュ化するということは、バークシャーは株式市場の暴落は嫌でも避けられないと思っている。しかも▲10%や▲20%の急落が想定されるのであれば、APPLE株は売らないと思う。また最優良株のAPPLEを手放すということは、ファンダが通用しない相場になることを想定しているのだろう。

本当の暴落になれば、逆張りして買う人間などいなくなる。下げれば下げるほど買えないものなのだ。その時買うか否かが勝負の分かれ目になるのだろう。余剰資金出ない限り、買ってはいけない局面だからね。

それと余談ながら、原油価格がジリジリと上昇しているけれど、投資家はイランのイスラエルへの報復は必ずあると思っている証だ。そうした情勢を考えるに、今後しばらくは買ってはいけない局面が続くと思う。