トランプ政策と邦銀メガ(バンク)3行の行方
- 2025.01.22
- トレード雑感
強烈な追い風が吹きつつあるメガバンク株。毎回にように好決算を連発して、株価を上昇させてきたメガ3行だけど、常々疑問に思うのが、ほぼほぼゼロ金利が長らく続いた中で収益を伸ばし続ける構造が不思議というか驚異的にさえ感じていた。
そのメガバンク、ここにきてさらに株価が加速するような状況に直面していると思う。一つは今週確実視される日銀政策決定会合での利上げであることは言うまでもない。利上げの根拠は様々あるだろうけど、やはり基本的なことは、今となっては先進国のなかで日本だけ、しかも断トツで実質金利がマイナスしているということに尽きる。
この表を見る限り、日銀の政策金利は0.250%だけれど、インフレは米国並みに高く、結果として実質金利は断トツの▲2.7%という散々な状況・・・。これだけでもキャッシュの価値は止めどもなく低下していると感じるわけだが、この2.9%というインフレの信頼感は生活実感からしても、到底信じられるものではない。
そもそも今の日本は、コア指数に組み入れられない生鮮食料品を除くものだが、その肝心の生産食糧品がどれも100%近く値上がりしている状況で、食料品全体を見ても1年間でどれだけ上昇したのか分からない有様で、消費という概念を一般的に考えるとその影響はもはや看過できないところまで来ている。
昔、便乗値上げという言葉がはやったけれど、今の値上げはまさにそれ以外の何物でもなく、だからこそ内需企業であっても円安の最中に利益は伸びている。また輸出企業であっても輸出価格の値上げが国内シフトされる例が大半だから、自動車などはいい例だが円安下では国内価格が急上昇することになる。
建築資材も賃金も何もかもが上昇する中に合って、日銀が発表するように日本のコアCPIが2.9%プラスなどと言うのは、机上の空論でしかない。
となると、インフレが2.9%であるはずもなく、実質金利が▲2.7%というのは絵空事以外の何物でもない。なので日銀が利上げをしてこれを是正する方向で動くのは当然で、日本は実質的にはいまだに大幅なマイナス金利下にある経済だということになる。
なので日銀としては一刻も早くある程度の金利水準を確保しなければならないと考えるのは当然で、むしろ利上げペースは遅すぎると思うし、それが経済の原則でもある。
そしてもう一つは米国経済のインフレが根強く、FRBがおいそれと利下げが出来る環境が遠のきつつあるという事。昨日成立したトランプ政権の政策を見る限り、減税方針と雇用がタイトになる状況がインフレを下支えてしまう可能性がかなり強い。そしてシェールを掘りまくってエネ価格が下げられたとしても、掘削コストの増強や輸出コストの増大、最高水準まで押し上げる国家備蓄という要因で恐らく目論見通りには下がらないと思う。
シェール採掘という過酷な重労働は、移民なしでは成り立たないということもあるが、移民の強制退去や流入停止は、労働力不足に直結するのも事実。
そうなるとFRBにとって利下げを肯定する理由が見当たらないのだ。
なので日本のメガバンクにとっては国内利上げ、米国金利据え置きとなれば、短期国債金利のみならず長期国債金利も期待インフレの上昇で、市中金利上昇の要因になる。となれば此の先、トランプ政権が利下げに介入しない限りはこの状況が続くかもしれない。そしてメガバンク3行の業績も、まだまだ右肩上がりを維持する可能性が濃厚なのではないか?
トランプ大統領は就任演説や、初日の大統領令に置いて、金融関連の政策を封印した。政策の中には金融規制を緩和することが柱の中にあるにもかかわらず、である。また仮想通貨関連の政策も先送りした格好だ。しかし、近いうちに金融規制緩和は発表されるだろうし、仮想通貨にも言及するだろう。そしてそれもまた米国運用を行っているメガバンクにとっては強烈な追い風となる。
勿論米国の金融には商業用不動産関連融資という強烈なリスクは存在するし、現在の米国金利水準では、ひにひに財務状況は悪化していると考えるべきだろう。また、株価の過熱感が半端ないレベルにまで来ているという状況は、トリガーが現れれば急落の可能性の高い脆いものだということもある。
また国内でも農林中金危機が2月後半から3月と言われていることもあり、金融全体に波及しないとは限らない。そしてないとは思うけど、今週の日銀利上げを当て込んた投機筋の積み上がったショートポジも気になるところではある。
ファンドトレーダーの石原順氏は、この内外金利差こそが米国株を下支えている要因だと指摘している。いわゆる円キャリー資金が、金融緩和的な役割で米国市場に大量に流入していることや、日本の個人投資家の資金も米国投資に集中していることが、高金利下の株高要因だという・・・。一説によれば円キャリー資金のレバレッジ運用は3000兆円以上だという報告もある。
トランプ大統領は、カナダ、メキシコに対し25%の関税を2月1日から実行すると表明したが、対中観関税については猶予期間、交渉期間を設けるということ。これは恐らく株式市場急落の可能性が最も高いトリガーの一つと判断したのだろう。これくらいの経済ブレーンはいるだろうからね。
もしも、対中関税を発表し、日銀が利上げを行えば日本株は急落の憂き目にあっただろうと思う。その場合耐えられるのはメガバンクなんじゃないか?と思ったけどね。試練は米国商業用不動産債権なんだろうと思うけど。過熱感の在る市場に、商業用不動産、利下げ中止、対中関税、とくれば流石に米国市場も一時的な暴落は免れないだろうけど。
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