トランプ大統領が輸入関税を引き上げる理由

トランプ大統領が輸入関税を引き上げる理由

トランプ大統領は本気だった・・・今日からカナダ・メキシコに25%、中国には10%の関税引き上げを実行すると明言。その他に鉄鋼、アルミニウム、石油・ガス、医薬品、半導体など幅広い輸入品に今後数カ月のうちに関税を課すと表明した。

またトランプ大統領は、「われわれは、あらゆる形態の医薬品や薬剤を対象とする。そして、非常に重要な鉄鋼も対象とし、さらに半導体や半導体関連製品も対象にする」「石油とガスにも関税を課すつもりだ。それはもうすぐ実現するだろう。2月18日ごろになると思う」と発言した。

これで、ほぼほぼ株式市場は「節分天井」が決定的になったと言える。このことで日米株式市場は昨夜急落し、相場の様相は一変した。

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輸入関税引き上げの意図

そもそもカナダ・メキシコ・中国というのは米国の輸入のトップ3であり全体の約45%を占める。その上で品目別の関税引き上げが行われるとすれば、大半の輸入品目について関税引き上げとなり、それに対し各国は何らかの報復措置を講じる可能性が高いわけで、米国市場の閉鎖性が一段と強化されることになる。

トランプ大統領は「関税を引き上げてもインフレにはならない」と言っているもののその根拠は、関税は輸出側が負担するもので米国民の負担は増えないということ、つまり安易な販売価格引き上げは(価格競争力を失うために)出来ず、したがって米国の物価に対する上昇バイアスにはならないというもの。

しかし経済が、思いのほか好調であることを考えると、ひとまずは物価の上昇圧力になることは明白だで、反面消費は好調に推移した年末の反動が出る新年度上期であることから、嫌でも米国消費は想定以上の減速となり得るし、米国経済は停滞し始めると思う。

このことはトランプ大統領は十分に承知していて、だからこそ消費余力を確保するためにFRBに対し、利下げを要求していたのだ。これで、ドル高が進めば関税引き上げ効果は相殺されてしまうからだが、FRBは(関税引き上げを無視した格好で)当面の現状維持を決めた。その金融政策に対し、トランプ大統領は「ならば関税引き上げは現実だ」と言いたそうにカウンターを繰り出したという側面もある。

だから見方によっては「トランプ対FRB」の対決なのだろう。

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FRBはディープステートの牙城?

トランプ大統領はディープステートとの対決を明確に宣言している。ディープステートとは「政権の政策に対しそれに従わない勢力」と定義している。それが米国の連邦組織に蔓延していて、政策をことごとく無力化してきたから、その勢力の一掃がトランプ大統領のプライマリーな政策なのだと思う。

そして金融政策に置いてFRBという組織は、ディープステートそのもの、という認識がトランプ大統領自身にある。マーケットはトランプの政策よりもFRBを信頼していることは明白なわけで、トランプ大統領は表面的な対立は避けてはいるものの、確実にマーケットに対する影響力を削ごうとするだろう。

けれども、このあまりにも過激な政策を強引に推し進めようとする姿勢は、結局米国経済を冷やし、株式市場は長い調整局面に突入する可能性が濃厚なのではないか?これで米国消費が打撃を受けて、景気減速の兆しが現れたならば3月にもFRBは利下げに踏み切ることになるだろう。

FRBを動かすには政策転換による意図的な景気減速以外に道がないことを、トランプ大統領は熟知している。第一次政権の時のように表面的に対決しても思い通りには行かないことを学習しているのだ。今回のバイデン政権下での米国インフレは、FRBが金融引き締め的政策を行っても、政権が財政出動を拡大し続けたために食い止めることが出来なかったという事実がある。だから金利を引き下げようとすれば、(バイデン政権の)反対の財政政策をするしかない、というわけだ。

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DEIで労働環境が歪む?

またトランプ大統領は、バイデン政権の極端なDEI政策によって無駄な労働力が浪費されていると確信している。米国では連邦職員の8割以上がリモートで在宅勤務をしている状況だし、能力主義よりもDEIが偏重されている余り、労働バランスが極端に崩れていると指摘している。そうしたことを考えると、これを是正することで極端に移民に頼る必要はないと考えているのだろう。

トランプ大統領の政策が、意図したと通りに進まないことも十分に考えられるとしても、何れにして今、米国は大いなる変革の中にあると言える。トランプ大統領は、歴代大統領がなし得なかった社会変革に挑もうというのであるから、副作用もまた大きくなるだろう。

良し悪しの判断は出来ないとしても、いよいよこれから株式市場は大いなるトランプ相場に突入していく予感がする。株式投資をするのならば、覚悟して臨まないと人生を棒に振ることにもなりかねないと思ってます。