米国の戦略的ビットコイン国家備蓄法とゴールド
- 2025.03.26
- 海外情勢

米国の3月カンファレンスボード(消費者信頼感指数)が、弱い予想(94.2)にもかかわらず、さらに弱い数字(92.9)が発表された。個人的にも弱いはず、と思っていたけれど、やはり弱い数字がでたな、と。これで、米国債10年金利が低下し始め、ドル円も日中¥150.94まであったものが今現在(1:00am)でも¥1以上円高方向に増えて来て¥149.77辺り。
米国株は、戻り相場ということで、投資家の期待は相当だったと思うし、トランプ大統領のコロコロと変わる政策に対してもウンザリしてしまって、もう買いでいいだろうという見切り発車をしてしまったという感じだよね。
消費の減速を織り込まない相場
それでも株式相場では、なかなか流れはすぐには変わらなくて、米国経済の70%を占める消費が弱くなってきているということに対する警戒感が出ても、すぐには下げないというか下がらない。上昇を見越してのポジションが大分積まれているだろうから、大口も慎重に対処しないと大きな損失もあり得るという意味では、例のウォール街のコンセンサスみたいなものが効いているのかもしれない。
いずれにしても、2025年になって1月、2月、3月と景気は徐々に悪化していることは否定できないし、このタイミングで関税の引き上げをしたら、一気にスタグフレーションに持っていかれる可能性は少なくないというか現時点では濃厚・・・。
こんな時面白いのは日経CFDで、株価上昇、円高進行というのは米国投資家にとっては非常に美味しい話なので、昨日の引け値から¥150ほど高く推移している。こういうところがね、日本市場の最も厄介な部分の一つではあるよね。
日経平均株価のチャートを見ても、こうやって陰線の駒を作りながらGUして上昇してゆくっていうのは、気持ち悪いというか、海外投資家が無理筋を押して買い上がってるというパターンが多い。昨日は陰線を叩いてしまって結局25日線割れで引けた。こんなチャートになったら、大きく担がれないだろうと高を括ってたけれど、今夜の展開にはいささか意外な感じも。
まぁそれも楽観ムードの米国市場が大引けでどうなっているか、何だけど。
さて、こんな相場で今はグタグタしてるけれど、正直4月相場は本当に何が起こるか分からない怖さがあるし、5月相場は4月以上かも、なんて思ってる。株式市場は荒っぽい、じゃなくて大荒れの動きをすることはどう考えても明らかだと。
ゴールド(金)を集めろ!
天地がひっくり返るようなインパクトのある事態になるかもしれない。その中に、何度か書いているけれどゴールドに関係する動きが活発化していることが上げられる。ゴールドの価格上昇が止まらない状況で何かと注目されているゴールド相場。でも、何かがおかしいと思ったのはそのゴールドが米国内にあちこちから輸送されているという記事がでたから。
JPモルガンが世界各地から6200億円相当のゴールドを米国内に持ち込み、それを証拠金として先物契約をしたという。もちろんそれはレバレッジ取引のため以外の何物でもないはず。また特にロンドンから米国への輸送が活発で、それを「トランプ関税回避のため」という理由付けをしていた。
こうした動きの影響でゴールドのみならず、シルバーまでが動き始め、これから相場になると予想してる運用者もいるくらいだけど、それはちょっと違うと思う。
トランプ大統領は、就任早々に米国のゴールド保有量を何十年かぶりに調査する法案を議会に提出したことが話題になった。本当に米国には8133トンものゴールドがあるのか?と言った記事も出回ったけれど、米国は公式にゴールドの監査を行ったのは1953年で、以来70年以上も監査自体は行われていない。また何処に保管されているか?というと、ニューヨーク連銀の地下に約7000トン、フォートノックスやウエストポイントという軍関係施設に残りがあるとされているけれど、本当の処は分からない。
戦略的ビットコイン国家備蓄法
じゃなぜトランプ大統領は法案を議会提出してまで監査をしたかったか?と言えば、その法案はゴールドをなんとビットコインの価値の裏付けにしようというとんでもない目的のためだという・・・。そして提出されている法案はビットコインの「戦略的ビットコイン国家備蓄法案」だという。
トランプと言う人はまったくとんでもないところに目を付けたものだと感心しかない。その理由は、米国政府が所有するゴールドは元来金本位制であったためにFRB(傘下の各銀行)の所有物だったもの。それを1934年の金準備法で米国政府に引き渡したわけで、その代わりに米国政府はFRBにゴールド証券を発行した。これが1トロイオンス(約31g)$42.22の額面だったわけで、要するにゴールドを棚卸して、現在の評価額に直したゴールド証券を発行してFRBに引き取らせれば、差額分の財源が確保されるというわけ。
法案が通過すれば、FRBは1トロイオンス=約$3000でゴールド証券を受け取ることになるわけで、米国政府に対し差額分のドルを新規発行して提供しなくてはならなくなる。米国政府が本当に8133トンのゴールドを保有しているならば、2億5600万トロイオンスとなり、新規発行額は約7600億ドルになる。日本円に換算すると約110兆円。そして法案では毎年20万ビットコインを5年間購入するという内容。
ビットコインの金本位制!?
法案ではこの資金でビットコインの国家備蓄をするという内容だから、実質的に数量が増えないビットコインは米国内ではほぼほぼゴールドに価値が裏付けられた仮想通貨ということになる。平たく言えばビットコインの金本位制と言えるのだ。
これは価値の裏付けが疑問視される仮想通貨にあって革命的な出来事だ。そしてゴールドを保有する各国がこれに追従し、さらに一般の投資家もビットコインを買いあさるような事態になると、ゴールド価格とビットコイン価格が同時に上昇してゆく事態も安易に想定できてしまう。
となれば、1ビットコインは現行価格の10倍以上に跳ね上がるという計算になり、もっと言えばそこから投機相場がスタートすることになるのだ。
トランプの凄いところはその発想力にあると思う。1400兆円の米国債ロールオーバーのために、株式市場を暴落させ、米国債金利を下げさせることで、崖っぷちの連邦予算を何とか持続可能なものにする。そして景気が思い切り減速したら今度は、あらゆる手段で景気浮揚を図る。もしかしたら「戦略的ビットコイン国家備蓄法」は、その一策のような気がする。
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