株価急落!米雇用統計に仕掛けられた爆弾!

株価急落!米雇用統計に仕掛けられた爆弾!

やはりマトモではないな、と言うのが雇用統計を観た感想ですよ。昨日後場の取引記事(雑感彼是)でちょっと書いた「陰謀説」じみた内容が、まさにその通りに発表されたような気がしてならない。

とりあえず発表された雇用統計の内容を掲載します。

21:30

アメリカ・雇用統計 07月 [非農業部門雇用者数・前月比]

+33.1pips 14.7万人(1.4万人) 10.8万人 7.3万人
21:30

アメリカ・雇用統計 07月 [失業率]

+33.1pips 4.1% 4.2% 4.2%
21:30

アメリカ・雇用統計 07月 [平均時給・前月比]

+33.1pips 0.2% 0.3% 0.3%
21:30

アメリカ・雇用統計 07月 [平均時給・前年比]

+33.1pips 3.7%(3.8%) 3.7% 3.9%

上記の予表で太線にしたのは、実は6月として発表された雇用者数と()内はその改定値。発表時には14.7万人の増加となっていたものが、よくよく精査して再集計したら僅かに1.4万人しか増えてません、という実に信用の置けない発表。

Advertisement

冗談じゃない、雇用統計は米国労働省・労働統計局が取りまとめて発表するのだけど、実際の調査も労働省・国勢調査局という公的機関が行っているものだから、マーケットは信頼して重要指標として扱ってきているわけだけど・・・。

これがバイデン政権の頃から特に、怪しい数字が頻発していた。そしてとうとうFRB・パウエル議長さえも「最近の雇用統計は信用できない」とコメントするほど乱れていて、年次修正を大掛かりにやったりして、何とか労働省は帳尻を合わせようとしていた。

けれどもマーケットは、発表された時点で即時に織り込もうとするわけで、後に改定されても過去にさかのぼって数字を再度吟味し、反応するようなことはない。と言うことはたとえ出鱈目な数字が出て来ても、額面通りに捉えて大きく値幅が上下することになる。

いま、米国ではトランプ大統領が就任して、次々に過激な(?)政策を繰り出しているわけだが、その最たるものが「トランプ関税」であることは言うまでもない。なので金利・為替・コモディティはもちろん、債券や株式市場等ほぼすべてのマーケットは、この強制的な高関税政策の影響を推し測ろうとしている。

Advertisement

その中でトランプ大統領は、自身の関税政策や政府財政の引き締め政策が、景気を減速させる恐れがあると認識しているせいか、執拗にパウエル議長に利下げを迫っている。そして就任以来、その言動はエスカレートしてきていて、(利下げをしないのなら)パウエル議長を辞めさせると言ったかと思えば、やはり辞めさせないと否定してみたり。

そして今度は、FRBに思い切り圧力をかけるように、パウエル議長が利下げを実行しないのなら、FRB(の理事会が反パウエルになって)利下げをしろ、と言い出した。

そしてほぼ同時に7月雇用統計が上記のように発表されて、「実は6月から雇用が非常に悪化していた」とでも言いたそうな演出をした。FRBの金融政策は、物価と雇用を守るための物。パウエル議長が利下げをしないのは、米国の物価に(高関税)によってインフレ圧力がかかると判断しているからで、これは批判されることはない真っ当な判断だろう。

Advertisement

その点ではトランプ大統領は、減税をしました、高関税をかけました、という二つの重要なインフレ政策をやっておきながら利下げをしろと迫ってるという無茶苦茶なもの。それをパウエル議長は相手にしていないというのが実情なのだ。

これでもしもFRBが利下げをすれば、インフレ再燃はかなり可能性が高くなるし、まして雇用が悪化していなければなおさらインフレに向かうのは必然。

でも、ここで雇用が急激に悪化しつつあるという演出をすれば、それも6月にさかのぼって雇用の悪化を強調すれば、それはトランプ大統領の利下げ発言を肯定することになるし、ますますFRBに対して圧力をかけやすくなるし、最悪パウエル議長の解任要因にもあり得る。そうしたところで、トランプ大統領は自身の正当性を強調できるだろう。

雇用統計がこんな発表となって株式市場は大きく値下がりをしている・・・。米国債10年金利は急落し、ドル円はなんと数時間で3円以上円高になっている。

Advertisement

確かに米国経済は実態は強いはずがなく、個人は債務に押しつぶされているので、消費は限界に来ている。数年間も高金利が続き、消費に歯止めがかからない米国人の気質からすれば、借金をしてでも買い物を続けるという悪循環がそろそろ限界に来ている。

その状況で、高関税政策で国民にさらなる負担を強いるわけで、残念だけど米国民の一般的なレベルでは、まさか自分たちが負担させられるとは思ってもいないだろうから、そうなったら急激に消費は縮小する可能性が大なのだ。

それが分かってるからトランプは利下げをしないと大変なことになると主張してる。けれどもパウエル議長にしてみれば、無謀極まりない関税政策を繰り出してインフレを助長するような政府に相当な反感を持っているし、急激にインフレが高まり金利が上昇すれば、その方がずっと危険なことは十分に分かっていて、いくらFRBが利下げを行ってもそれは短期金利にしか影響を与えないわけで、根本的な財政再建には寄与しないと承知している。

なので、このままで行けば、米国がインフレ下の不況、所謂スタグフレーションに突入しかねないという大きな危惧を持っているのだと思う。

いずれにしても、無茶で極端な政策は、必ず大きな反動がでるもの。今夜の株価の大幅下落は恐らく、投資家に対して貴重な警告となる可能性が濃厚ではないかな。