こんなにホンダが好きなのに・・・【初代アコード・インスパイア CB5型 前編】

こんなにホンダが好きなのに・・・【初代アコード・インスパイア CB5型 前編】

多分、スポーツカー・エンジンでもなく、また大排気量エンジンでもない2000ccとか2500ccクラスのエンジンで、いままで経験した中で最良のものを一つ選べ、と言われたなら迷わずホンダのG20A、G25Aというちょっと独特なエンジンを選ぶ。

何故5気筒?と思うけれど、FFレイアウトのちょっと高級なセダンに乗せるエンジンが欲しかったという事らしい。しかも様々なこだわりと制約から縦置きにしたかった。でも当時はまだ高級=FRという感覚が残っていたので、FFで、となるとハンドリング等々何かとネガティブ視される時代だったから、FFの癖の原因である前輪前に吊り下げる重量物(エンジン)を出来るだけ後ろに下げて搭載したい。でも、トラクションが減少するのはマズイ。

そのために新しく開発されたのがG20A、G25Aというエンジンだった・・・ということらしい。それを搭載してさっそうとデビューしたのが、アコード・インスパイア CB5型だった。

美しいサイトビュー!

本当はしっかりとドアフレームがあるセダンが欲しかった。なぜならドアフレームレス、ピラーレスって日本のバブル経済の象徴のような気がしてね。トヨタのマークⅡとか日産もマツダもホンダもピラーレス。これにしちゃうと車のしっかり感は当然ないし、左右の異形段差ではミシミシとボディが歪む音がする。マークⅡなんか本当に酷かったもの。

でも、この車が出たとき、ドアフレームはなかったけれどしっかりとセンターフレームがあった。そしてカタログを見た瞬間に、そのサイドビューの美しさに感動した。というかホンダもそれを意識してかカタログの見開きでドーンとサイドビューを強調していた。ヤラレタね。後は堂々とドアハンドルを取手式にしてあってそれも気に入った。初めてドアフレームレスのまともなデザインを見た感覚になって、発売3ヵ月後に衝動買い。美しいというのは十分車の購入動機になるね。

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高級と言えば天童木工パネル

内装もシンプルで素敵だった。当時何故か高級と言えば天童木工のパネルが使われてて、なかでも特にこの車の木目は色艶ともに最高だった。内装色、特にレザーやダッシュの色とのマッチングも最高だった。はっきり言ってこの内装、このデザイン感覚を超える国産車って今まで見たことがないくらい。

ただホンダのデザイナーは確実にやらかしてる。確信犯だと思う。この内装デザインは、はっきり言ってランチャ・テーマ8・32をパクったんじゃないか!?手縫いのレザーと言う点まで真似してる(ホンダはミシン縫いだけど)んだから呆れる。それとこの木目ね。まんま、そのまんまじゃん!

皮工芸と言えばイタリアのお家芸でそういうのは素晴らしく上品だ。ちなみに車の出来としてはメチャメチャだけどね。セダンにフェラーリ製のV8・32バルブエンジンをそのまま載せちゃうんだから呆れるけど。(と言うか経営危機だったフェラーリを支援するために乗せたらしいけど)

両車のカタログに掲載されている内装画像だけど、これを比べてどう思うかは個人の判断ですけど。ホンダのデザイナーさんはマニアックは人が多いと思うので、テーマ8・32に憧れて当然だと思うしね。

ただ流石と思うのはランチャのシート座面処理で、なるべくお尻や背中の形状にフィットするようなギャザー加工。アコード・インスパイアのシート座面は確かに疲れたもの。

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G25Aエンジンの極上フィール!

直5というとなんとなくバランスが悪そうに感じるけれど、ピストン運動と回転運動にともない発生する振動を各ピストンで打ち消し合う一次バランス、二次バランスは意外に4気筒エンジンよりも良好。ただ量産エンジンなので手っ取り早くカンターシャフトで打ち消してしまうんだけど、そうして出来上がったG20A(2000cc)、G25A(2500cc)エンジンはどちらも極上!納車時のブリッピングでマジ!?という感じで驚いちゃったもの。

直列5気筒SOHC

ホンダエンジンの特徴は?と言われると躊躇いなくロッカーアーム方式のバブル駆動って答えちゃう。日産のスカイラインGTR32が出たとき、名機と言われるRB25DETTエンジンなんか、バブルのダイレクト駆動とかバルブ軸を中空にしてナトリウムを封入して熱対策をしたとか、バルブスプリングを強化したとか、いろいろ言ってたけれど、カムプロフィールを長くして吸排気効率を上げる、みたいな技術ならターボを付ける意味がないじゃん!ってね。それに高回転ではサージング(スプリングの反力が回転に追従できなくなる)も出ちゃう。特に経年劣化しちゃうとダメになっちゃう部分。

ならば、ロッカーアーム方式なら全部解決、みたいなのがホンダの考え方。F1エンジンでもロッカーアーム方式だったけど、これが後のVTECHに繋がるんだよね。後はSOHCでカムシャフト1本というのも合理的。市販セダン用エンジンで細かい吸排気効率は関係ないのよ!

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天井知らずの噴き上がりに感動

でもそんなエンジンだけど、その回転フィールはもはや天下一品って感じ。多分この車を購入する人の大半は6000rpmなんて回したりしないだろうけど、とにかく7000rpmまでは滑らかにストレスなく、一気に噴き上がる極上フィール!

こうなってくると、どうしてマニュアルがないんだ!って毎日思ってた。そうしてふと思い出したのがトヨタ4AGエンジンのフィーリングなのよ。もちろん4AGよりも上質なんだけどね。

音も振動も最上級

高級車なんて今では死語に近いけど、何が高級ってカネかけて内装すればいいというのもじゃないし、要は第一に駆動系からくる振動の問題なんだと思うんだけど、この車はエンジンからして最良なのだから悪いはずもないのよ。

その意味では気持ち悪い変な音がしない良質なモーター駆動に近い感じがするけどね。振動と言う点ではEVは絶対的な有利さがあるからね。でも、走行中にタイヤノイズと風切り音ばかり聞かされるのはまっぴら御免なんだよね。直線番長なところも大嫌い。俺は未来まで生きないからなぁ・・・。

その点、アコードインスパイアは断然気持ちいい!こんなに気持ちいいなら運動性能を上げやすいスポーツカーに搭載しても十分というかより一層面白かったかも。

FFでトルクがそんなにないことが有利!?

FF車の最大の欠点はトラクションが掛かり辛いこと、なんて言うけれど、そんなことは実用領域ではほとんど関係ない。それよりも怖いのは前輪のトルクステアだよな。まぁ、とりあえずいろいろなFFに乗った経験から、アクセルオンでステアリングを切ると思わぬオーバーステアに見舞われちゃって「ヤバイ!」って感じることがしばしばあった。

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ある日、雪が降ったときに、どうしてもFF車の特性が知りたくて、近所の役所の駐車場に出向いていろいろやってみたんだけど、トルクステアがでてタイヤがグリップしちゃうと振り回されて後輪が滑り出し、簡単に車体が一回転することが分かった。これがドライのときのトルクステアの力のかかり方なんだって思ったよ。

この車のエンジンの高回転域が気持ちよいわけだけど、回しちゃうとトルクステアもキツイ。そんな時思い切りカウンターを当てると今度は振り戻しがキツイ。これがFR車だと意外に挙動が分かるから何とか出来るんだけど、FFは怖かったな。

でも普段使いでトルクステアを体感することは滅多にないかも。そういう意味ではNAエンジンは低回転のトルクが薄いからいいんだね。安全志向だし。

DOHCもVTECHもいらないじゃん!

このエンジンの最上の噴き上がり感、回転フィールなんかを考えると、DOHCもVTECHも必要ないんじゃないかって感じちゃう。構造は出来るだけ単純な方が耐久性には断然有利だし、コストも安い。スポーツカーのエンジンなら別なんだろうけど、高回転になると振動も出やすくなるし、粗さも目立ってくる。

ゆったりと快適に乗りたいセダンには8000rpmなんて必要ないしね。このGA25Aのように7000rpmまで淀みが全くなく回るエンジンなら最高でしょ。本当に大好きになってしまったエンジンです。

(後編に続く)