【信用取引】個人投資家が絶対に空売りしてはいけない銘柄
- 2019.04.27
- 投資手法
短期投資家にとって、ロング(買い)/ショート(空売り)戦略は利益を積み上げるために必須の戦略である、というのが私のスタンスです。基本的に空売りは、信用貸借銘柄しかできず、信用銘柄は「買い」の一方通行で空売りすることはできません。
しかし、証券会社によっては、小型株などは貸株用の株式を用意して、信用貸借銘柄でなくても独自に保有株の範囲内で空売りを認めているところもありますから、個人でも空売りは可能です。
また、大手証券や海外勢は独自に株式を(大株主から)借りうけて空売りをしている例もあります。ですから、基本的に借株さえできれば、空売りは可能なのですが、個人投資家はやはり貸借指定銘柄での空売りとなりますね。
下落局面では非常に有効な空売りですが、個人投資家として「絶対に空売りしてはいけない需給」というのが存在します。物理的には可能でも、そう言った状況の銘柄の空売りは慎まねばなりません。
絶対に空売りしてはいけない銘柄
株式投資に絶対はないと思いますが、それでも「これは売ったらいけないでしょう」という空売りを仕掛けてはいけない、絶対に近い銘柄があります。私の経験でも、こうした銘柄では無茶な空売りをして思わぬ火傷を何度となく負ってきました。
空売りでは無謀なリスクは取れません。
1. 移動平均線より上での持ち合い銘柄
基本的に空売りの仕掛け処の観点から、上昇トレンドでの移動平均線より上方での持ち合いは、急騰後の持ち合い以外は絶対に空売りは避けなければなりません。
そもそも、株価が移動平均線をブレイクして揉み合っているという状況は、すなわち利食い売りをこなしている状況と見るべきで、株価の位置が少々高いとか、割高だと言う理由で空売りを仕掛けても、まず成功しません。
その位置、というのはこれから急騰させようと大口が虎視眈々と準備をしているポイントです。その持ち合い状況で材料でも出ようものなら、下手をすればストップ高まで担がれる可能性まで考えなくてはなりませんからね。
移動平均線(75・25・5日の三線)上方での持ち合いは空売り厳禁です。
2. 普段の流動性(出来高)が少ない銘柄
中小型銘柄で、通常時の出来高が非常に少ない銘柄が、材料の出現によって(急騰・急落)することがあります。急騰して持ち合いになったところでは、一見空売りのチャンスと見えますが、大口投資家が買いで入ってくるような場合も十分の考えられる場面です。
こうした銘柄は好材料では、時には倍化するといった意外高に見舞われることも多いです。なので、その局面で空売りポジションを建てることは非常にハイリスクなのです。
大口は取り組み状況から、相場の可能性を常に探っていますし、日頃流動性が少ないということは積極的に売買するホルダーが少ないと言うことです。ある程度株数を集めた場合には、思い切りカチあげてくる可能性があるからです。
日頃流動性の少ない銘柄の空売りは厳禁です。
3. 小型株
時価総額が100億円未満の小型株や流動性の乏しい中型株などはたとえ信用貸借銘柄であっても、空売りは餌食と心得なくてはなりません。現在、証券会社では独自に貸株サービスを行っていて、信用銘柄であっても空売りが可能になっています。しかし、値動きだけを見れば「売れば儲かる」と言う感じがしますが、いざとなると非常にリスクが高いことを思い知ることになるでしょう。
小型株は数パーセントのボラティリティは一度の成り行き注文で可能です。まして、逆指し値によるロスカットも板が薄いために思わぬ値幅が出てしまうことも。こうした銘柄の値動きは逆指し値によるものが非常に多いです。
一瞬で数パーセント持っていかれるような小型株の空売りは厳禁です。
できれば空売りを避けたい銘柄
上手くタイミングが合えば取れる可能性もあるけれど、基本的には最初から勝ち目の薄い銘柄で空売りを仕掛けても上手くいかないと思われる銘柄があります。空売りするタイミングでは、すでに株価の需給が崩れてしまっている銘柄は手掛けないほうが無難ですが、とりわけ次のような場合には、リスクが高いため、手出し無用ですね。
1. 海外投資家が空売りを仕掛けている銘柄
好業績で意外なほど割安水準まで売り込まれている銘柄を時々見つけることがあります。そうした銘柄を「買い目線」で見つけると、つい買いたくなるものですが、ジリジリとした下げが続いて日に日に含み損が拡大してゆくことも。
「まだ売られるのか?」と買い方にしてみれば嫌気がさすような展開で一向に買われる気配がなく、遂にはロスカットに追い込まれるようなことは、個人投資家であれば一度は経験していると思います。
ならば、そうした銘柄は「空売り」を仕掛ければいい。一見そうした投資行動が有効と思われますが、これは非常に危険なのです。
実際、そうした銘柄の空売り状況を確認すると、海外投資銀行やヘッジファンドが複数空売りをしていることがありますが、そうした空売りは東証の信用残高では表示されません。
売り手がすでに空売り水準から十分に利益が出ているような時、個人として空売りで参戦すれば、そうした売り主の手終いで強烈に踏み上げられる危険性が高いからです。
こうした銘柄の株価は、ファンダメンタルズやセンチメント、テクニカルで動くのではなく、大口の投資行動次第ということですから、個人で空売りするのは非常に危険であると言うことです。
2. 貸借倍率1以下の売り長銘柄
一般的に信用の取り組みとは、日々公表の日証金の「貸借取引残高」と週次で公表の東京証券取引所がまとめる「銘柄別信用取引残高」があり、前者は制度信用の場合、後者は制度信用と一般信用の合算値になります。
各証券が提供するトレーディングツールでは、この二つの取り組みが表示できますが、これはあくまでも各証券会社の報告ベースであって、外資等が独自に借り株を調達した場合などは含まれません。
つまり、ここに表示される信用取り組みはあくまでも制度信用と一般信用の枠内の証券会社報告ベースであるわけです。ここで、貸借倍率が表示されていますが、仮に外資が制度外で大量の空売りを行っているとすれば、それを足して考える必要があります。
また、日証協の貸し株残高に対して空売りが少ない場合、将来の売り圧力となる可能性も十分にあります。
基本的には空売りする銘柄に関し、信用の取り組み情報を確認することが非常に大切で、日証金の取り組みで逆日歩(品貸料)が付く場合は個人投資家の買い戻し圧力がある、と判断できますので、空売りは避けるべきだと思います。
3. 悪材料の結果がはっきりしている銘柄
業績の下方修正や、具体的な業務上のトラブル対策や事故といった悪材料のように、ある程度結果がはっきりとしている場合、一時的にはセンチメントの悪化から株価は下落しますが、短期間で織り込んで本来の位置に戻ることが多いです。
「事件は売り、事故は買い」と言われる所以は、事件の場合その影響が推測できないから売り、事故はすぐに計算できるので買い、という理由ですが、こうした短期間でのセンチメントの悪化で空売りすることは、避けた方が無難です。
また、悪材料の時にロング(買い)の大口投資家が売らない場合も、株価は元の水準に戻り易く空売りは避けねばならないでしょう。
まとめ
短期投資では、ごく短期的なトレードと割り切って狙うこともあると思いますが、それでも空売りできない需給かどうかを確かめておくことが非常に重要です。特に、株価の位置や通常の取り組みだけでなく、銘柄の時価総額や浮動株数、外資の取り組みや材料の織り込み等を予想して銘柄を選択することが重要です。
少なくとも短期投資でロング(買い)/ショート(空売り)で利益を積み上げるためには、上記のような状況にある銘柄を手掛けるべきではありませんね。
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