株・空売りを制する者は短期投資を制する理由
- 2019.04.27
- 投資手法

短期投資の基本は「買い」で欲張らずに獲って「空売り」のタイミングを見極めて乗ること。所謂「ロング/ショート」戦略が短期投資の収支をプラスにするのです。
個人投資家の投資性向は、値動きのいい中・小型株の買いです。確かに材料が出たり業績を上方修正した時の小型株の動きは魅力的ですし、タイミングさえ合えば1日で10%、15%といった大きな利益を手にすることも可能です。ですが、長いレンジで投資を考えるとどこかで必ず大きな損失が出てしまいます。それは個人投資家の誰もが経験していることですね。
基本的に「買いオンリーの信用銘柄」は、需給の変化に対して株価が急激に反応してしまいます。
そうした株式投資は極めて投機的であって、急騰する材料に対し、継続的な資金流入が期待できるか見極める必要があります。
やや逆説的ですが、株式投資を買い目線で見るだけでなく売り目線で見ることができれば、投機に頼ることなくコンスタントに利益を手にする体質を手に入れることが可能です。
空売りができれば短期投資が分かる
中小型株の多くは買いオンリーの信用銘柄です。このような銘柄は需給の変化に対し、急激な反応を示しますから、普段は流動性に乏しく好材料・好業績が出た時に急騰したり、逆の場合急落したりします。しかし、その結果として需給が偏ってしまい急騰後には売り圧力が急激に増加し、急落した場合ショートカバー(空売りの買い戻し)が期待できないため、既存ホルダーの売り圧力が残るわけですね。その需給の変化を見極めるのは買い目線オンリーでは非常に難しいことです。
短期投資で着実に利益を積み上げるためには、一見魅力的である「極端な需給の変化に対する投資(投機的投資)」よりも、空売りが可能な信用貸借銘柄を手掛けるべきだと思います。
需給の変化がわかる
日中の相場では、流動性の高い主力銘柄などでは板上に並ぶ買いと売りの指値注文である程度の需給は分かります。しかし中・小型株の短期投資の場合、指し値注文数が薄く株価は新規注文によって変動してゆきます。
短期投資を買い目線だけで見ている場合、投資家の興味は、いつ買うか、いくらで買うか、に偏ってしまい、需給の全体的な変化が分からなくなってしまいます。特に小型株の場合には株価の変動率が高く、買いポイントを的確に見極めるのは、非常に難しいことです。
しかし、株価の値動きを「買い目線」と「売り目線」の両方から見ることができれば、日中の需給の変化がある程度予測できるようになります。また短期トレンドのターニングポイントを見極める上で、「売り目線」は欠かすことができません。
材料の見極め方がわかる
株価が急騰するような好材料や好業績、そして急落するようなそれを見極めるうえで、ロング(買い)/ショート(空売り)戦略は非常に重要です。
一見好材料のように見えても、株価が反応しない場合や内容が業績に寄与しないと判断された場合、そして材料が出た時の銘柄の需給などから、材料出尽くしと判断されて逆に下落してしまう場合も多々あります。
すべては投資家の目線であって、特に大口投資家がどう判断するかを見極めるためには、常に「売り目線」で見れるスタンスが重要なのです。
銘柄を買いと売りの両目線でみることは、材料を事前に見極める重要な手がかりになるわけですね。
テクニカルがわかる
株価の位置、動きを日足チャートや移動平均線でみることは、言いかえれば現状の株価の需給をみることです。株式の一日の出来高は、多くても発行株数の数パーセントで、プレーヤーはある意味限定的なのです。そうした売買を繰り返す短期投資によって形成される株価は、需給全体を表すものではありませんが、少なくとも短期投資家の需給を反映したものなのですね。
したがってチャート等のテクニカル指標は、(全体としては)微妙な需給の変化によって形成されています。つまり、短期的なスタンスでは、買いと売りの交錯以外に空売りと買い戻しという要素が絡みます。
そうしたことを前提に短期的な需給をテクニカルで判断することが、短期投資では非常に重要であって、空売りは個人投資家が短期投資で勝ち抜くために必須のテクニックであると思います。
空売りができてこそ収支がプラス
短期的に大きな利益を狙うような投機的な株式投資ではなくて、長期的に利益を積み上げて行くコンスタントな株式投資を目指すのであれば、買いだけでなく空売りは個人投資家にとって必須の戦略です。
相場を買いだけで勝ち抜くことは非常に難しいことです。
100万円の資金は株価が50%上昇すると150万円になります。しかしそこから株価が50%下落すると75万円になってしまう・・。そうした株価の動きのなかで常に利益だけを志向することは、確率的に矛盾があります。
もちろん、上昇したら売り上がりをして利益を確定する、手仕舞いして再投資の機会を伺う、と言った手法はありますが、現実問題としては非常に難しいテクニックであることは、個人投資家の誰もが経験していること。短期投資を買い目線だけで行うことは私の経験でも困難でした。
短期投資の機会損失をカバー
短期投資において、底値で買って高値で売る、という原則論は現実には通用しないのです。なぜなら、底値と高値の見極めはプロでもできない至難の業であるからです。裏を返せば、「底値を見極めず、高値を見ず、という投資スタンス」であれば、勝つことへの敷居は俄然低くなるのではないでしょうか?
買いの利食いも欲張らずに確実に獲る。そして次には下落局面に空売りで乗る、という投資方法であれば、買いのリスクを減らすだけでなく下落時の投資機会損失をカバーできます。確かに一度取引による利幅は少なくなりますが、リスクは格段に減少して、ロングレンジの投資効果を積み上げることができます。
プロは空売りで獲っている
証券のディーリングやファンド、ヘッジファンドのトレーダーは基本的に短期投資ではロング(買い)/ショート(空売り)戦略を取ります。1日~3日程度のスイングでも日中のデイトレードでも変わらない手法で、日中の値動きを見ていれば分かります。
そうした短期目線では、プロは利益の7割を空売りで獲っています。その理由は買いオンリーの個人投資家の存在があるからだと言われていますが、そうした状況はプロにとっては好ましいのかもしれませんが、買いの個人投資家は勝てるはずがないのです。
私の師匠は業界で40年間勤めたプロ中のプロだったわけですが、その方も証券のディーリングの大半は空売りで獲っていると断言していました(実際に師匠自身がそうしていた)。
そうした状況下で、個人投資家が短期投資において買いだけで勝つ抜くことは不可能であると思います。
個人投資家が勝つには短期資金の流れに乗れる必要がある
株式投資は「勝ったり負けたりの繰り返しで理論的には手数料分負ける」という意見がありますが、確率的にはその通りです。ただし、この理論に従えば投資資金を固定しない限り、資金が増えて投資額を増やしてしまえば、負けるわけです。
多くの個人投資家が負けている、という現実は投資志向が買いに偏ることが大きな要因です。2勝8敗でも2勝で大きく取れれば勝ち、と言うのは「単なる苦し紛れのこじ付け」に過ぎません。極めて理性的に資金を固定できても、勝つには6勝4敗でなければならないはずです。
業界にはびこるそうした間違った理屈に惑わされては、利益を積み上げることはできません。コンスタントに利益を積み上げるということは「一部の例外や幸運を追い求めること」ではないのです。
そのためには、ロング(買い)/ショート(空売り)で、短期資金の流れに乗る必要があります。空売りができなければ、6勝4敗は不可能です。逆を言えば空売りする技術を身につければ、プロのように勝てると言うことになりますね。
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