実質実効為替レートが物語る日本を後進国化した歴代最長の安倍政権
- 2019.11.30
- 国内情勢
安倍政権は外国人観光客をどんどん増やして、内需を下支えしようとしている。すでにインバウンドなくしては、日本国内の観光ビジネスは成り立たなくなっているし、大都市圏の都市機能や交通インフラも急激に外国人観光客を意識した改革が行われつつある。そしてそのピークは言うまでもなく2020年の東京五輪なのだが・・・。
外国人観光客急増の理由
安倍政権の数少ない大成功をおさめた政策に「来日外国人の増加」と言うのがある。インバウンド消費を激増させて少子・高齢化で減少する国内消費を補おうというわけだ。これが日本にとって良いことか悪いことかは別にして、東日本大震災以降、急激に高まった日本への関心を逆手に獲った見事な成功例となったことは事実である。
現在ではすでに東日本大震災の2011年と比較すると約5倍以上、翌年の2012年と比較しても約3倍という驚異的な増加率となっているわけで、その理由は日本への関心の高まりや官民が連携したインバウンド呼び込み政策の成功、そしてアジア諸国の経済成長と言うことだが、それだけではこうした数字にはならないだろう。
そこには、安倍政権の歴史的な過ちがある。歴代最長の首相となった安倍首相は後世、「日本人を最も不幸にした首相」と揶揄されるようになるかもしれない。
安倍政権は日本を叩き売っているだけ
非常に分かり辛いのが、ドル円レートと円の実質実効為替レートである。実質実効為替レートというのは、円のインフレを加味した海外通貨と比較した購買力を表す。つまり、円は上記のグラフで言えば、約40年間に渡って1ドル=80円の購買力しかありません、という意味だ。
これは交換レートで考えると、僅か¥80で1ドルと交換できるとなって非常に有利なように勘違いしてしまうが、これは交換レートではなくて通貨の実力比較値である。なので、「円は1ドルに対して僅か80円の価値しかない」と見るのが正しい。
一方ドル円レートは現実の交換レートであるわけで、現在は1ドルと109円で交換できる。米国人観光客の感覚では、1ドルが80円でフェアトレードのところに、109円で交換できてしまうわけだから、約30%のお買い得感がある。
彼らにしてみると、日本ははっきり言ってほとんど後進国で、物価が安くて、それでいて治安もいいし、おもてなしは異次元、となれば・・・少なくともその事実が浸透してくれば、旅行先は日本なのだ!
もちろん、ドルだけでなくユーロでも他のアジア諸国の通貨であっても、この感覚は同様で、そこに中国・韓国をはじめとするアジア諸国経済が急激に発展してきた、となれば来日外国人が増えるのはむしろ当たり前、ということ。
上記のグラフで言えば実質実効為替レートとドル円レートの差が「お買い得感」なのだ。つまり安倍政権は、2000年あたりから生じ始めた「お買い得感」を「国内消費のテコ入れ」と称して宣伝しはじめたと言うことになる。安倍政権は外国人観光客に日本を叩き売りしているのだ。
安倍政権の無策の現れ
2013年4月から日銀は異次元金融緩和と称して量的緩和に踏み切った。以来日銀は金融市場に対し、約400兆円もの、まさに未曾有の量的緩和を実施したわけだが、それだけ量的緩和を行っても、実質実効為替レート(円の購買力)は低下する一方となっている。
その理由こそが、安倍政権最大の失策であると指摘せざるを得ない。
安倍政権は、日銀の量的緩和と呼応して財政出動を行って国内投資を喚起する必要があった。2012年12月の首相就任以来7年間、日銀が市場供給した400兆円をすべて毎年60兆円ずつ政府支出を増やす必要はなく、恐らく10~20兆円程度の真水予算を毎年追加していれば、日本経済は完全に立ち直っている。
少子高齢化で働き手がいない、とか財政悪化が止められないとか、屁理屈はいくらでも出るだろう。しかし、絶対にそれをしなければならぬ理由があったのだ。
ところが、就任1年目の2013年度予算で僅かに財政出動と思われる予算を組んで以来、2014年度からの僅かな増額分はすべて後ろ向き予算であり、実質的には緊縮路線(プライマリーバランス路線)を変えることはなかった。
その結果、この歴代最長の総理は、千載一遇のチャンスを6年間も物にすることができなかったという、愚か者になり果ててしまった。
周囲を見回せば格差は拡大する一方で、景気回復感はほとんど感じられない。それどころか、10月に消費税増税を行って、さらに物価上昇を阻止し、実質実効為替レートは70円台に突入することは必至の情勢になった。
なので今後も外国人観光客は増加してゆくだろう。そして日本人は「オモテナシ」と称して外国人にペコペコと頭を下げる終戦後の屈辱的な状況に回帰してしまうかもしれない。
またしても世界バブルを焚きつけた日本
それだけではなく、今回の日銀量的緩和は今現在の「日米の理由なく株高の要因」になっている可能性が濃厚だ。
かつて日銀の速水ー福井時代に5年以上ゼロ金利政策を続けた。そこ結果、福井時代には日本経済は復活の兆しを見せたが、その要因は円キャリートレードによって米国景気が過熱したことにあるとされる。その政策は、明らかに現状の黒田時代と同じである。
日銀は2013年4月から異次元量的緩和に踏み切り、現在ではマイナス金利に突入しているが、その間の約400兆円にも及ぶ緩和資金は、安倍政権が内需再建のための財政出動を怠ったために海外に振り向けられた。
国内で資金需要が発生しなければ、金融機関は海外投資を加速するが、GPIFや他の年金基金、生保等機関投資家も総じて海外投資比率を高めた。
その結果、日米金利差も魅力的な要因だが、国内投資主体がこぞって外債投資を行うことで、米国市場には好景気以上の豊富な資金が投入されている。同時に円売りが円買いを駆逐して現在の円安が意識されている。
現状の米国株高は、日本の資金が演出していると言っても過言ではない。
日本を後進国にした総理という汚名
円安は安倍政権の無策の現れとも言える。しかし、その結果、輸出企業の業績を下支える効果があっても、日本の輸出競争力は地盤沈下する一方である。経営者は、リスクを取って投資する姿勢を失って、現状を維持しさえすれば売上、利益ともに増加する状況をただ謳歌するのみ。
その結果日本の国際競争力は、低下の一途をたどった。
国内投資が行われず、円安によってオートマチックに向上する業績のみを示し、株高となる一方で、内需は消費税増税と円安によって、衰退する一方である。
すでに産業技術のみならず社会システムにおいてでさえ、多くは中国に引き離され、中国批判に明けくれている間に技術的なアドバンテージは根こそぎ失ったと言える。国民の所得が約30年間変わらずの状況は、すなわち日本の後進国化を意味するのではないか?
老人票のみを当てにする政治家、老害が進む企業経営者など、これらすべてが日本を後進国化している。日本国民にできることは、せいぜい外国人観光客に媚びへつらうことくらいだ。
そうした状況を(意図的に?)作ってしまったのが、歴代最長在位を果たした安倍晋三であると、後世の歴史に記されるだろう。日本を米国の属国化した岸信介のDNAなのかもしれない。
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