ドル需要次第の週:日本株を読め!【3.23~3.27】
- 2020.03.21
- トレード予想
3月19日(木)日経平均株価¥16,552(前週予想¥16,000)日経平均CFD¥17,0192
日米相場概況
自慢するわけではないが、前回の【日本株を読め!】で、月曜の米国ダウ▲$3000を見事に的中させたわけだが、あのタイミングは巨大ヘッジファンドによるロスカットが出たということに尽きる。そこで、ロスカットしたファンドは、何とか生き残れるのではないか?と思うわけだが、レイ・ダリオ率いるブリッジ・ウォーターなど複数の巨大ヘッジファンドは前週初めにはすでにショートポジションを閉じて、買いに回っているという記事も出ていた。つまり、彼らでさえ今回の新型コロナ暴落の状況を甘く見ていたと言うことになる。
そこに寝耳に水と言うべき、サウジーロシアの原油戦争が勃発したわけで、焦ったのはヘッジファンドだけではなく、FRBも大いに緊張しただろう。そして遂にゼロ金利、米国債75兆円、短期債券160兆円という途方もない金融政策に打って出た。それでも、世界中のドル買い需要は留まる事を知らず、一週間を通して金融資産をドルに換金し続けた。
こうなってくると、株式チャートのテクニカルや経済・企業のファンダメンタルズ云々というよりも、マーケット全体のセンチメントが悪化するだけで、株価が決まるという恐ろしい状況に陥ったわけで、それは来週も継続して起るだろう。だからこそ、リバウンド機運の高まりつつあった金曜の米国市場は、高値$20,531から安値$19,101までの▲$1,430というフリーフォールを演じたわけだ。所謂、戻り売りと言うやつかもしれない。
ドル円は¥101台の突っ込みから111台までの約¥10駆け上がった。海外勢、特に海外市場で窮した大口投資家は、日銀のETF買いに対して日本株を売りぶつけた。それでも日銀は株式市場の買い支えと称して、黙々と買いを入れてくる。その結果、ドル買い需要が鎮静化してくればドル円は強烈な巻き戻しが起るだろう。そして、そうなると海外勢はより安心して株式を売り叩ける。黙っていても日銀が、(為替レートのお陰で)高値で引き取ってくれるわけだから。
従って、ドル円(円安)による日経先物(CFD)の上昇は、非常に危険だと言わざるを得ない。
米国ダウ日足チャート・テクニカル
FRBの史上空前とも言える金融緩和策にも関わらず、株式市場の下落が止まらない米国ダウ。新型コロナの米国での蔓延は、神経質なほどに米国民を苛立たせ、当局の対応は相当にエスカレートしている。いまや、米国は経済活動が完全にストップ状態に陥っていて、外出禁止や国境閉鎖等々まるで戦時の戒厳令下のようだ。
その上、原油の暴落が導火線になってHYG(ジャンク債)は暴落を続け、それに伴っていつ何どき、デリバティブに飛び火するか分からないと言う、言ってみれば新型コロナによる実体経済の悪化が、金融に飛び火する寸前といった状況になっている。
言うまでもなくFRBは債券市場の防衛に必死となっているが、効果的に行動できるかはまったくの未知数という判断をマーケットは下している。リーマンショックとの比較で言えば、暴落自体に差があるわけではないが、背景、つまり膨大に膨れ上がった制御不能の金融資産を維持できるのか?という懸念である。
仮に金融緩和やQEで防衛しようとするなら、FRBの政策は一ケタ足らないのかもしれない。ダウの下落はまだ先が見えたとは言えないだろう。
米国ダウ10年月足チャート
米国ダウの10年チャートだが、もしも今回の暴落が10年に一度のものであるなら、まだ下げ足りないと考えても無理はない。トランプ大統領が就任してからの上昇は完全に打ち消した格好になった。しかし、金融緩和相場と考えるならオバマ時代もそのままQE相場だった。どこまで下げるのかは予想できないと思うが、ここで底打ちと言えない部分もあり過ぎる。
個人的には米国ダウ$18,000割れはないと思うが・・・。
日経平均日足チャート・テクニカル
新型コロナは、中国の演出によってピークを越えた、ということになって、感染が早かった日本にもそろそろピークを超えるという油断が出始めている。統計的にはピークを越えるのかもしれないが、経済的には寄り深い爪痕を残すだろうし、それはピーク(ボトム)を迎えるのは遥かに先の話であることは言うまでもない。
最も懸念すべきは、今回の新型コロナで米中関係が決定的に決裂しているという事実である。片や感染など無視して経済活動を主導する中国に対し、感染防止がどこまで続くのか分からない米国であるから、以前の関係に戻ることはあり得ないのだ。つまり、この状況であっても日本は常に、中国か、米国かの選択に迫られているのだ。
そして今までのように米中日和見を続けるならば、日本経済は自滅へと追い込まれるだろう。
その意味も含めてテクニカルでは、一旦の踊り場とリバウンドが円安を背景にして起る可能性は高い半面、その後円安解消によって三番底を模索するのは決定的だ。東京五輪も延期がほぼ決定している中、中途半端な財政政策ではそれこそ、内需、外需共倒れになりかねない。
しかしその対策が4月中旬にずれ込むというのは如何にも筋が悪すぎる。
日経平均10年月足チャート
アベノミクスが失敗したと言われる中、日経平均はまだアベノミクス全否定には下げ足りない部分がある。少なくとも¥14,000で止まれば御の字で、現状の¥17,000ラインというのは、明らかに日銀の防衛ラインとみられるが、厳しいだろう。
しかし日本の場合、3月が年度末となり配当取りの動きも出てくるし、空前の全世界的なドル買いという幸運で円安に進行したこともあり、この円安水準が維持されるのであれば、¥16,000台は買い場となる。
しかし・・・
冷静に考えると、そんなに都合のいいことばかり起るはずもなく、また新型コロナに関し米国や欧州が落ち着かない状況で、日本市場だけが独歩高するというのは、妄想に過ぎない。
三番底を伺う体制になるのは避けられないかもしれない。
CME日経先物日足チャート
日経平均は先物がMACDで短期移動平均が長期を抜いて、一応は反発の姿勢を取ってる。背景は言うまでもなくドル円で、円安が続けば素直に上昇を継続すると言う暗示。
ただ先物チャートは海外勢の思惑が反映されやすく、たとえば円安一服で反転した場合、売り物に出てくることも十分にあり得る、というか間違いないだろう。そうなればオシレータは騙しと言うことになる。
この辺りがテクニカル指標の難しさでもあるわけで、状況を見ながら、その形が信用できるものなのか、見極めねばならない。確かに、CFDも強い。
ドル円日足チャート・テクニカル
乱高下して、退場者続出と言われているFX。¥112台から一直線に¥101台になって、そしてまた一直線に¥111台に復帰するというV字の日足。こういうチャートを一体だれが予想できると言うんだ?
これは新型コロナだけでなく、原油価格暴落や米国債券の変調などが、積み重なって偶然に形成されたものなので、もとより予想などできるはずもないのだが・・・。従って予想できたから儲かるという単純なものではなく、ある程度予想が当たって、収支がマイナスしなかった、程度で上等だと思う。
気持ち的には、今後はドル買いが落ち着けば円高方向に傾くのは当然として、ではドル買いが落ち着くのか?という部分がまったく予想できない。なので、円安で日経平均を引っ張り上げて、そこから落とすみたいなことを外資は考えるのかもしれない。
来週のポイント
米国セリングクライマックス
金曜の▲$913は非常に強烈な下げだった。つまり、▲$3000は多くの大型ファンドが意図して売っての結果だったと思うが、金曜の$913は違うだろう。恐らくダメージをさらに増加させてしまって、リミットラインを越えてしまった可能性が大いにある。もしもそうであるなら、月曜の寄り付き前から、ダウCFDは大きく下げるかもしれないし、日経平均も寄り天の公算が高くなる。
本当のセリングクライマックスとは、金融事故が多発してくる状況になる。今回は、まだそういうことが報道されていない以上、来週以降にそうした動きが出たら「目先底打ち」は有効かもしれない。
サウジ・ロシア原油戦争
もとより、サウジのオイルマネーが強硬に引き上げられるか否かは株式市場にとっての重大問題なのだが、戻りかけた原油価格は2番底を探る動きに変化した。つまり、このままの状況で行けば、再度$21台、そして$20がボーダーとなる可能性も大いにある。その時に、米国のジャンク債がデフォルトし始めると、他のジャンク債にも波及しかねない。
ドル買いの行方
新型コロナの影響で、センチメントが冷え込んでいるのはもちろんだが、国家単位での政策はどうしても現状から遅れがちになる。と言うことはつまり、既にある意味ピークアウトしてからも、余計に経済を締めつける動きになる可能性もある。そうなると、各国の中銀や商業銀行のドル買いは、なかなか止まらないということもある。
なのでそれを見た株式市場は、大いに嫌気するかもしれない(逆にドル円Hが円安続行と成りえるが・・・)
3月27日(金)日経平均予想
以上のような状況を踏まえると、日経平均は底値付近にあるとは思うものの、様々な事故や懸念に頭を押さえられて、瞬間的には深押しする可能性もある週と見る。従って
日経平均株価 ¥15,500 ドル円 ¥106.0
を予想する。
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