金融緩和・財政出動というモルヒネで痛みを忘れる株式市場

金融緩和・財政出動というモルヒネで痛みを忘れる株式市場

今夜の米国市場はトランプ政権と民主党との新型コロナ対策予算(220~230兆円規模)合意を受けて、予想通りの大幅高($1,111高、15時15分現在)となっていて、昨日の$2,112高と合わせ、2日間で$3,000以上の急激な戻り相場となっている。

これは日経平均が3連騰で¥2,992戻しとなったこととほぼ同調する形で、今夜の状況が日経平均と米国ダウの均衡した状況といえる。現在のドル円は¥111.10近辺であって、米国はFRBのゼロ金利、無制限資産購入、トランプ政権の対策予算(220兆円)を織り込み、日本は日銀のETF買い(6兆円から12兆円に増額)を織り込んだ形になっていて、この辺りが、現時点で新型コロナ蔓延による景気減速を株式市場が織り込もうとしている株価と言えなくはない。

安部政権は日本の景気減速を過小評価

現段階で日本の財政出動だけが、決まらずに残っている形になっている。安部政権は新型コロナの影響に加え、東京五輪延期という厳しい状況にもかかわらず、もっとも効果的であるはずの消費税減税をいち早く拒否し、給付金やポイント増額等の付け焼刃的な政策で凌ごうという浅はかな対策を行おうとしている。おそらく補正予算規模は多くても30兆円で真水は半分程度だろう。そして真水は赤字国債を発行するわけだが、結果的に日銀引き取りになるはずで、財政的には全く痛みはない。

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しかし、現時点で与党自民党内には、実に瑣末な経済対策案しか出ておらず、おそらく2020年の日本経済は予想以上に減速し、結局は欧米以上の減速となる可能性が濃厚だ。なぜなら、新型コロナによる感染の状況だけでなく、厚顔無恥にも自国のGDPを大幅に偽る中国、そして現時点ですでに崩壊状態にある韓国との貿易依存度の高さ、そして中国にウエイトをかけすぎた日本企業の業績後退が鮮明になりつつあるからだ。

すでに、中国経済は壊れていて、日本企業が中国で企業活動をする意味さえ見出せなくなっている。たとえば自動車産業で、中国の2月の自動車販売は約80%減であるが、3月の今になってもほぼ生産はゼロに近い状況。米国は現在新型コロナ爆発期であることを考えると、1ー3月期、4-6月期は絶望的な数字になる。そしてたとえある程度の販売が復活しても、利益は動かすことはできない。

要するに中国現地子会社や、中国事業を大きく推進する日本企業の決算は、実質的には中国事業を差し引いて考えねばならないという評価になって当然なのだ。こうした日本のGDPに寄与しない日本企業活動を、今回の新型コロナ・ウイルス騒動は気付かせてくれるはずだ。

加えて、消費増税と実質可処分所得の減少によって、国内消費は実体が見えてくる。インバウンドを当て込んだ政策は結果的に大きく挫折し、これまでの累積利益以上の回収できない投資が償却できないで残ることになる。もはや官民格差は広がるばかりで、とても30兆円の補正でクリアできるレベルではないのだ。

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米国でさえ景気減速を止められない

FRBの金融緩和政策、つまり実質ゼロ金利、そして総額235兆円もの国債、債券の買い入れによるドル資金供給は、さらに住宅ローン担保債券や、商業不動産ローン担保債券にまで拡大し、債券市場の崩落を現時点では食い止めることに成功している。

そしてトランプ政権は、220兆円の超大型対策予算で現金給付によって大幅なばら撒き対策を実施することになる。なにせ問題が新型コロナという伝染病であるために経済活動にいくら予算をつけても効果が期待できなわけで、とどのつまりはばら撒くしか方法がない。

となると、失業や収入を失った国民が、それを回復しない限り220兆円でさえもわずかな期間の一時凌ぎに過ぎない。個人、企業ともにローンの返済は一時的な猶予が設けられているが、それらは決して免除されるわけでも代位弁済されるわけでもない。

特に米国は主要都市部と地方の格差は膨大で、NYやロサンゼルス、サンフランシスコの経済活動が止まることの影響は想像以上に厳しい。米国主要銀行は、4-6月期のGDPをマイナス25%~30%と予測しているが、恐ろしいことにその先の予想は不可能とコメントしている。そして今回のトランプ政権の対策予算はおそらくこの間のローン返済で消える。

つまり約220兆円の対策予算とは、米国国民のファイナンスを支えるにすぎず、消費を回復する効果は極めて限定的なのだ。

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日米ともに株高の意味がない

日米中銀の金融緩和策はつまり、株式市場と債券市場の崩壊防止効果はあった。特に日銀はETFの爆買いによって日経平均株価を¥19,500以上に維持する必要がある。中銀が株式市場に介入し特定の株式を買うことで市場を維持する政策は、自由主義市場では最大の禁じ手であるから、購入資産の劣化は中銀の信用不安に直接的な影響が出てしまうためである。

そして、FRBは天文学的に膨れ上がった債券市場、デリバティブ市場を死守できなければ、今回ばかりは史上最大の金融暴落となることを十分に理解しているはずだ。

その結果、株価は上昇するが、それはドル、円の通貨価値の暴落に過ぎない。結局、現段階で欧州ECBはマイナス金利、日銀とFRBはゼロ金利政策である。これは、世界のあらゆるビジネスで利益が出ないということを明瞭にする行為だ。

利上げできなければ世界経済は崩壊!?

金利は資本主義、自由主義経済の基本である。なぜなら金利こそが経済成長の源泉になるからだ。そして5%の金利は10%の経済成長であることに証となる。ところが、現時点の世界経済はほぼすべてゼロ金利(またな一部マイナス金利)となった。それは現時点でビジネスをしても利益は望めないと中銀が太鼓判を押す行為に等しい。

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つまり、世界中のあらゆる株式配当、債券金利は、実質的に維持できないと中央銀行が断言してしまったということなのだ。

そんな中で金融緩和をしても、劣化した債券の崩落防止にはなっても、決して経済に対しプラスに作用することはない。現時点での世界の金融資産の総額があまりに大きすぎて、制御不能に陥っているからである。

したがって一時的に株価は回復し、投資家は溜飲を下げるのかもしれないが、この程度の戻りは一時凌ぎにしか過ぎないということを、時間とともに痛感するに違いない。

世界中がゼロ金利の今、株式投資をしてリターン得る意味そのものが存在していないのだから。

新型コロナ蔓延状況がピークアウトし、状況が好転と確認できるまでは、株式投資は単純なマネーゲームに過ぎない。有名投資家は「暴落した時が天与の買い場」と言っている。米国でもっとも成功したバフェットは今回の暴落でも全開で買いに回っているだろう。

しかし、それが成功するか否か、分からないのが株式投資なのだ。彼の年齢ならばおそらく大成功だったという結果は見れないで死ぬ。大失敗でも十分にそのことを受け入れられる老人なのだ。若いころ、株式投資を志し、資本主義の発達とともに何十年間も投資を続け、莫大な財産を築く。そういう投資が成立した時代の真ん中で株式投資をした人なのだ。

が、それでも、歴史をいくら学んでも、未来が予測できるわけではない。現実は常に過去の予測と全く異なるものだということを、株式投資をしていれば痛感するだろう。いや、人生そのものが、予測不可能であることも分かっているはずだ。

ただし、中銀が利上げできない状況が続くとすれば、すでに資本主義は崩壊している。そして中銀の金融緩和は末期癌患者へのモルヒネのようなものかもしれない。

時代は徐々に暗くなり始めていると思うね。

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