セルインメイの週:日本株を読め!【5.25~29】

セルインメイの週:日本株を読め!【5.25~29】

5月22日(金)日経平均株価¥20,388(前週予想¥19,300)日経平均CFD¥20,578

日米相場概況

新型コロナ暴落相場以来、米国ダウおよび日本市場は「半値戻し」を達成した。株式相場の格言では「半値戻しは全値戻し」というのがあるが、大抵の場合そうはならないことが多い。昔の取引と違って現在はスピードが断然違うので達成感で売られることが多いからだろう。

実際ダウも日経平均も75日線をクリアした水準まで戻した。しかし日米ともに先週は急激に上値が重くなったように見える。5日線を軸にした堅調な上昇相場であると安心している投資家も多いと思うが、世界の状況ははっきりと変化しつつある中で、これ以上経済再開の期待感で上昇を続けることはまずあり得ないだろう。

米国市場

米国株はNASDAQがほぼ急落の全値を回復したわけだが、ダウもS&Pも半値戻しを僅かに上回った水準にとどまっている。NASDAQ好調の理由はGOOGLE、MICROSOFT、APPLE、FACEBOOK、AMAZONを中心としたネット系銘柄の好業績に依存するからだ。

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そして新型コロナに関しては収束の目途が立たない状況下で、半ば強引に経済活動を再開することへの不安や、企業業績、雇用等への懸念もあるなかで、期待感で戻すのは半値が精いっぱいだろう。そこに、先週から市場のもう一つの懸念となりつつあるのが、米中対立の激化だ。

いち早く新型コロナを収束させた(と言っている)中国は、経済活動を本格的に再開してすでに1カ月以上経過したが、新型コロナ感染が増加していないと見るや、欧米の状況を尻目に強引に(米国抜きの)経済覇権をIT分野で握ることを宣言した。新型コロナ流行下でも軍事行動を止めなかった中国(人民解放軍)だが、今度は現在開催中の全人代で一国二制度を維持するとした香港に対し「国家安全法」を制定、適用すると宣言した。これによって香港の議会を通すことなく政治介入ができるようになり、実質的に香港の民主化や自治独立は完全に失われた。

そして台湾も同様の手法で中国の政治介入を可能にし、台湾のハイテク技術を吸収する腹であることは明白となりつつある。特に、世界最大のCPU製造メーカーであるTSMCが、米国の圧力でファーウェイに対するCPU供給を停止すると発表してからは、中国の態度は一段と硬化した。

さらに米国が香港人権法案に続きウイグル人権法案を議会で可決し、中国企業の米国上場廃止に対して具体的に動き始め、国防権限法によって中国への米国技術の完全なる輸出禁止やECRA(輸出管理改革法)によるファイブアイズ(オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、イギリス、米国)プラス3(日本、フランス、韓国)での包括的な規制を行う構えを見せて、中国のハイテク技術企業を完全に封じ込めようとしている。

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つまり、米中の本格的かつ長期の対立は、米中貿易戦争が単なる始まりであったということを意味し、秋の大統領選挙でトランプ再選となれば、徹底的に中国潰しをやるだろうし、そうなると米中対立は新型コロナ以上のショックとなる可能性がある。

この週末、米国投資家は来週(25日休場、26日以降)以降の相場に対し、方針を練っているはずで、そうした方向性が株式市場に現れるはずだ。いわゆる「セルインメイ」となる。

日本市場

日本では相変わらず新型コロナの感染者数云々ということが、相場の中心トピックスであって、緊急事態宣言の解除や安部政権の各種対策に対する評価等々がニュースの中心になっている。いよいよ決算も一段落し企業業績への懸念は大いに残るものの、予想EPSが出ない以上、投資家の姿勢が定まらない状況が続いている。

そして米国市場のボラティリティとの連動制が薄れて、一見日本市場独自の動きになっているような感覚に陥っている。しかし、言うまでもなく米中対立は、日本企業の輸出成績以上に極めて重要な意味を持つ。つまり米中対立が深まれば、同盟国である日本は当然のことながらECRAの対象国になるからだ。

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そして現時点でも、香港に対する中国全人代での決定が、あまりに軽んじて報道されていてほとんど株式相場に影響は出ていない。しかし、香港は対中投資、貿易はもちろん、中国企業にとっても資金調達の拠点であって、米国での中国企業上場廃止をカバーするために確保しなければならない金融センターだ。その香港を一国二制度維持の返還協定を破って「国家安全法」を制定したてまったということは、単純に民主化云々という問題では済まない。

そうした外部要因を織り込まない日本市場というのはあり得ないわけで、現状の日本の親中状況が米中対立によって一変しているということを相場は織り込まざるを得ないのだ。

つまり来週は本格的に日本市場も「セルインメイ」になると見る。

米国ダウ日足チャート・テクニカル

米国ダウの戻りは現状では75日線と25日線のGCを前にして、完全に75日線に抑え込まれているという状況だ。この原因は明らかに新型コロナではなく、米中対立の激化懸念だと思う。そして、このポイントはチャートテクニカルでは決して弱いわけではなく、ほとんどの投資家は水準ブレイクを見ているのではないか、と思われる。

しかし来週以降、嫌でも米中対立激化懸念が台頭してくる情勢で、そうなると新型コロナに加えてのダブルネガティブとなるわけで、個人的には戻りいっぱいと感じる。恐らく、来週半ばが短期トレンドの転換点になる可能性が高いと思っている。

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日経平均日足チャート・テクニカル

日経平均は今週75日線をクリアすると、週末まで75日線上を維持し、さらに月曜(25日)の寄り付きではGUスタートがほぼ確定という情勢だ。戻り高値となっているのは21日(木)の¥20,734だが恐らく来週は、GUスタートしても届かないだろうと見ている。

そして、25日(月)が米国市場休場のために日本市場独自の動きとなり、仮に高値ブレイクしてもほぼ戻り高値形成だと見る。そして恐らくこの水準が転換点となって、セルインメイに突入すると個人的には見ている。

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5月29日(金)日経平均予想

今、この時点で米中対立懸念が台頭し始めたとなれば、6月末の決算を考慮すれば「今が利食い時」であると考えられる。今季の前半は新型コロナ暴落で多くのヘッジファンドが退場し、深く傷ついている。また公的資金等も、大きな損失を抱えていて、このタイミングでは下値で買った玉は利食いするしかないし、同時にショートを仕掛けるタイミングであることは容易に想像できる。

これ以降、6月の相場の不透明感を考えると、このままキープしてもいいことはないはずで、週末、欧米ともにマイナス圏から浮上した位置にきているのを絶好の売りタイミングと捉えてもおかしくはない。

したがって株式市場は世界的に、2番底を見る短期トレンドに転換すると考える。よって5月29日(金)の日経平均株価を、

日経平均株価 ¥19,300 ドル円 ¥106.0

を予想する。

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